古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

企業を超えたデータ連携、どう進めればいい? SBIホールディングスに学ぶ

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/05/31
企業を超えたデータ連携、どう進めればいい? SBIホールディングスに学ぶ: グループ企業160社以上を持つSBIホールディングスはさまざまな事業を展開している © ITmedia エンタープライズ 提供 グループ企業160社以上を持つSBIホールディングスはさまざまな事業を展開している

 1つの企業だけではなく、異業種の企業と組んでデータ活用を進める――。最近ではそんなチャレンジを行う企業が増えてきている。一見関係がなさそうなところにこそ、新たなビジネスの気付きが見つかることもある。金融サービス大手のSBIホールディングスは、古くからグループ全体でデータ活用を推し進めてきた企業の1つだ。

 同社はSBI証券や住信SBIネット銀行、SBI損保といった「金融サービス事業」のほか、国内外のIT、バイオ、エネルギー、金融関連のベンチャー企業などへの投資等を行うアセットマネジメント事業、医薬品、健康食品、化粧品に関連するバイオ関連事業など、多方面に事業を展開している。

 そのグループ各社にデータ分析の部署を設け、さらにSBIホールディングスに各社のデータ活用を連携させるための部署を設置しているという。連結子会社が160社以上もあるグループ企業のデータ活用をどのようにまとめているのだろうか。

●主要なグループ企業30社のデータ活用の“ハブ”に

 グループ企業全体のビッグデータ活用を進める役割として、SBIホールディングスには社長室直下にビッグデータ担当の部署を置いている。この部署が誕生したのは今から5年前の2012年。現在は11人が在籍しており、グループ企業のデータ活用を支援している。

 「メンバーは新卒で入社して間もない若手から、他部門から転籍したエキスパート、他社から中途入社で参加したエキスパートまでさまざまです。データ活用における個別最適と全体最適の両方を同時に進めるのが、この部署のミッションと言えます」(SBIホールディングス 社長室 ビッグデータ担当 マネージャー 古谷文洋氏)

 この部署が目指すのは、各グループ企業が最適なビジネス行動を取れるようにする(個別最適)と同時に、SBIグループとしても最適なビジネス行動を取れるようにする(全体最適)こと。そして、全体最適を通じて、新たな仮説やコラボレーションを起こしていくことだ。

 このような横断組織ができた背景には、“個々の事業において改善には限界がある”という気付きがある。ビジネスモデルが変わらない中で、各社の個別最適を目指すデータ分析は成熟しつつあり、その停滞を打破する可能性を探るために、ビッグデータを駆使した全体最適を進めることになったのだ。

 現在は、各社のデータ分析チームと、SBIホールディングスのビッグデータ担当が毎月会議を行い、データ活用の進捗確認や先進技術を使った活用について議論している。各社のデータ分析チームでは採用と育成が困難な、ビッグデータやAI、ディープラーニングなどを扱う人材については、SBIホールディングスで採用し、育成しているという。

●データに基づいた新たな顧客リストを模索

 各グループ会社のデータ分析を支援するとはいえ、グループ企業それぞれの業務や課題を理解するのは至難の業だ。そのため、まずは全社的なデータ活用基盤の統一や、どの会社でも共通してメリットが出る取り組みを優先しているという。

 「まず実施したのは、グループ企業全体で扱うデータとツールを統一することでした。当社が参加している日本データマネジメントコンソーシアム(JDMC)の勉強会などで学んだのですが、各社がデータについて話す際の“言葉”を統一することが狙いです。ツールはGoogle AnalyticsやGoogle Tag Managerを使っています。さらに、全社共通のデータ基盤としてプライベートDMPも導入しました」(同社 社長室 ビッグデータ担当 次長 佐藤市雄氏)

 データの統一化、IDの連携、顧客データの統合などを行い、プライベートDMPを導入してからは、グループ企業を超えたクロスセリングに注力したという。

 SBIは金融事業だけでも、SBI証券(オンライン総合証券)、住信SBIネット銀行(インターネット専業銀行)、SBI損害保険(インターネットを主軸とした損害保険)、SBIマネープラザ(金融商品を販売する店舗展開)、SBIカード(クレジットカード関連事業等)とさまざまな事業を展開している。各企業間でデータを横断的に収集して分析することで、顧客一人ひとりに合わせた、メールマガジンや広告を通じて、グループ内での相互送客などの施策を行えるようになったそうだ。

 「当社グループの会員数は2100万人を超えていますが、潜在顧客も入れると、3000万人程度いると考えています。つまり、これは残り1000万人を会員にするための施策であり、当社のビジネス拡大につながると考えています。

 実際の効果は具体的には言えませんが、私たちは会員やメーリングリストといった従来型の顧客リストではなく、行動履歴も含めたデータを使った新たなパラダイムで評価する顧客リストの作成を目指しているのです。今は各ユーザーのサービスニーズについて評価を行い、ニーズに即応できるアプローチができるようにしています」(佐藤氏)

 30以上もの企業のデータを扱うことから、データ量は膨大なものになる。月間1000万アクセスで1億回の広告表示、といった案件を1人がいくつも担当するような状況だ。そのため、こうした分析や施策については、自動化を前提に設計していると佐藤氏は話す。

 「2012年当初から、機械学習と自動化には取り組んでいました。グループ内のWebサイトでどのような形で出稿するか、といった問題については自社内でアルゴリズムを開発しています。最近では、そのアルゴリズムについても、全てを自社開発するのが難しくなってきました。コアなアルゴリズム以外については、改善やデータ更新を人工知能で実施したり、外部に委託したりしています」(佐藤氏)

●企業がデータ活用を進めるために必要な3つのポイント

 古くからデータ活用を行ってきたSBIホールディングスだが、最近の技術革新は目を見張るものがあるという。佐藤氏はクラウドの発展がその大きな要因だと話す。

 分析のために用意できるコンピューティングリソースに限界がなくなり、数日間かかっていた処理が数分で終わるということも珍しくなくなった。アルゴリズム自体に大きな変化はないものの、トライ&エラーを素早く繰り返せることで、分析の精度は大きく高まったという。データ分析にかかるコストも下がり、多くの企業が気軽に手を出せる環境になりつつある。

 佐藤氏は、そのような状況下で企業がデータ分析を成功させるために必須な要件を3つ挙げる。まずは「とにかくデータを蓄積する」ことだ。「ストレージの値段も下がってきているため、DWHでもHadoopでも何でもいいので蓄積することから始めるといいと思います。なるべく集める先は1カ所にして、皆が同じデータを見られるようにするのがポイントです」(佐藤氏)

 2つ目は「データ管理の人材を育成する」こと。特に若手の育成がカギになるという。「データは無機質なものかもしれませんが、データと向き合っていろいろといじっているうちに何か気付くことがあります。できるだけ社内外のデータに触れさせ、データから仮説やサービスを生み出せるようにすることが大切です」(佐藤氏)

 最後のポイントは「オープンイノベーションを最優先にする」こと。社内でも社外でも、人と協働することが重要だ。「さまざまな立場の人や組織やデータと協働することで、イノベーションが生まれると思います。それを目指すとか、あったらいいという程度のスタンスではなく、最優先事項にすること。新しいサービスや仮説を生み出すためには必要なことだと思います」(佐藤氏)

 なりすましによる不正送金の防止や、データドリブンな与信モデルの構築、AIを活用したデジタルマーケティングなど、先進的なIT活用の裏には、それを促進させるためのシステムが必要だ。あなたの会社には、データ活用の“ハブ”となるような人物や組織はあるだろうか?

ITmedia エンタープライズの関連記事

image beaconimage beaconimage beacon