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伝説のエフェクター「Uni-Vibe」復刻版の回路は一晩で書かれた

ザテレビジョン のロゴ ザテレビジョン 2014/05/31 (C)KADOKAWA CORPORATION
伝説のエフェクター「Uni-Vibe」復刻版の回路は一晩で書かれた © KADOKAWA CORPORATION 提供 伝説のエフェクター「Uni-Vibe」復刻版の回路は一晩で書かれた

左が株式会社コルグ開発部の森川悠佑さん、右が監査役の三枝文夫さん 左が株式会社コルグ開発部の森川悠佑さん、右が監査役の三枝文夫さん  ジミヘンが「アメリカ国歌」演奏に使った伝説のエフェクター「Uni-Vibe」が、日本人設計者自らの手で復刻された。その名を「Nuvibe(ニューバイブ)」という。設計者はMS-20を始めとするシンセサイザーの開発で有名な、現コルグ監査役の三枝文夫さんだ。  オリジナルのUni-Vibeが発売されたのは1960年代末。当時、独立したエンジニアとして仕事をしていた三枝さんの回路設計をもとに、日本の新映電気が製造し、アメリカのUnicord CorporationがUnivoxブランドで販売していた。  Uni-Vibeは現在では「フェイズ・シフター」と呼ばれるエフェクターの始祖のような存在で、位相を揺らして周期的な音色の変化を得るもの。ただし、Uni-Vibeの生むその音色は、その後に登場する同種のエフェクターでは決して得られない独特の浮遊感があった。  ジミヘンが使ったことでUni-Vibeの名は後に広く知られるようになるが、生産された台数は少なく、現在の中古価格は20万円前後とヴィンテージエフェクターとしても非常に高価だ。もちろんメーカーも消滅して現在は存在しない。  そこで様々なメーカーからクローンが発売され、またコピーされた回路図を元に自作も試みられているが、どれも「音が違う」というので、オリジナルのUni-Vibeはいまだに珍重されている。  その1つの理由は、回路の中心にCdS(硫化カドミウムセル)が使われていたことが挙げられる。このCdSはRoHS指令の規制対象であるカドミウムが使われているため、現在は使うことができない。 Nuvibe Nuvibe  そのUni-Vibeの音を、CdSを使わず、79個のトランジスターで再現したのが「Nuvibe」である。開発はオリジナル設計者の三枝文夫さんのもと、入社したての若いエンジニアである森川悠佑さんが担当した。なぜオリジナルと同じUni-Vibeが今まで作れなかったのか。そしてなぜこのタイミングで開発し、発売にいたったのか。いまだ謎の多いこのエフェクターの誕生と再生について、お二人にうかがった。 ※1 コルグの復刻版が「Nuvibe」を名乗るのは、Uni-Vibeの商標をMXRなどのブランドを所有するDunlop Manufacturing, Inc.が所有するため。 ※2 ジミ・ヘンドリクスが所有したUni-Vibeは、マイクロソフトの共同創業者ポール・アレン氏が設立したロック博物館「Experience Music Project Museum」に展示されている。 (次ページでは、「モスクワ放送からUni-Vibeの発想は生まれた」) モスクワ放送からUni-Vibeの発想は生まれた ―― あのUni-Vibeの設計者が三枝さんだったという話を知ったときには驚きました。 Image from Amazon.co.jp ディレクターズカット ウッドストック 愛と平和と音楽の3日間 [DVD] 三枝 私もずっと忘れてましたから。ジミヘンが使ったという話も(ウッドストックの開催後)10年くらい経ってから知ったんですよ。もちろん作ったのは覚えてましたけどね。ウッドストックの映画を観て、ああこれはそうだなと思いましたし。  ―― 当時もワウやファズはあったと思うんですが、フェイズ・シフターは製品としてまだなかったんじゃないですか? 三枝 私もよく覚えていません。そもそも、あの頃はエフェクターという言葉が、まだなかったと思うんですよ。どっちかというと私は計測器マニアなんですよね。計測器を自分で作るのも面白かった。あとは、後になってシンセサイザーのもとになる発振器とか、そんなこともやっている中でのエフェクターでしたね。 ―― この位相を揺らすという発想はどこから来ているんですか? 三枝 単純なんですよ。モスクワ放送を聞いていてね、「フェーディング」ですね。位相のフェイジングじゃなくて「フェード」です。 ―― 「こちらはモスクワ放送です」っていうアレですね(タモリの真似をしながら)。 三枝 ええ、音楽がああいう風に変わるというのは面白くて。いろいろ実験しました。一番最初はコイルでやったかな。 ―― コイル? 三枝 昔は遅延装置やメモリーなんてなかったですから、信号を遅らせるためにコイルをたくさんつないだんです。信号の位相を少しずつずらしながら、ディレイを作る方法があるんですけど、そんなことでいろいろ遊んでいたんですね。それで、ああいった感じの音を作りたかった。 ―― ではアイディアは以前からお持ちだったと。 三枝 そうですね。 ※3 「ウッドストック・フェスティバル」1969年8月15日から3日間に渡って、ニューヨーク州サリバン郡ベセルホワイトレイクの農場で40万人とも言われる観客を集めて開催された。ジミ・ヘンドリクスはその最終日のトリとして登場し、歴史的名演となる「The Star-Spangled Banner」をUni-Vibeを使って演奏。主な出演者はマウンテン、グレイトフル・デッド、CCR、ジャニス・ジョプリン、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、ザ・フー、ジェファーソン・エアプレイン、テン・イヤーズ・アフター、ザ・バンド、CS&Nなど。その模様を記録した映画に「ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間」がある。 ※4 ソビエト連邦時代の国外向け放送。日本語放送も夜間に中波で放送され、日本全国で聞くことができた。 ※5 位相の違う波が合成され周期的に強弱を繰り返す現象。両手で口をふさいで開け閉めしながら、この現象をシミュレートする芸「タモリの北京放送」でも知られる (次ページでは、「この時代でもCdSに替わる素子がない」) この時代でもCdSに替わる素子がない ―― その当時は三枝さんおいくつくらいだったんですか? 三枝 28くらいかな。 ―― いま森川さんは? 森川 27です。 三枝 そうか、同じくらいの歳だったんだなぁ、って話をしたことありますよね。 ―― 森川さんはUni-Vibeをご存知でしたか? 森川 ほとんど知らなかったですね。私が入社する前から、復刻しようという話はあったらしいんですが、ご存知のように、中で使われている素子が環境問題で使えなくなってしまい、あまり話は進んでいかなったようなんですね。 三枝 かなり前からストップしていたんです。CdSの件でね。確かに再現できればいいなとは思っていましたけど、もう考えるの止めようみたいな。 ―― CdSってそんなに大事なんですか? 三枝 心臓部だよね。それに変わる素子がなかなかないんですよ。いまこの時代でも。 森川 今ならフォトトランジスターがその代わりになるんですけど、電圧が変わっちゃうんです。CdSは抵抗値が変わるんですよ。 ―― 素人なのでバカなことを言いますが、抵抗値が変わればいいという話なら、ポットを回せばいいんじゃないかと思うんですが。 森川 でもポットを1秒間に10回まわそう思うと結構大変ですよね。 ―― ミキサーのムービングフェーダーみたいにモーターで動かすとか。 三枝 もちろん機械的に回してもいいんですよ。でもすぐに壊れるでしょうね。 (次ページでは、「CdSを置き換える回路は一晩で」) CdSを置き換える回路は一晩で ―― 森川さんは、なぜNuvibeを担当することになったんですか? 森川 三枝がUni-Vibeを作ったという話は聞いていて、回路的にとても面白いものなので、その原理を解説していただきましょうという、社内の勉強会みたいなものがあって。その中で話が盛り上がってきて、じゃあ作りましょうとなったときに、配属されたてで何も担当製品がなかったものですから……。 ―― あの、なんか無理やりやらされた感が。 森川 最初はもっと「簡単なお仕事」みたいな感じで言われていてですね……。 三枝 あはははは。いやいや。 森川 この中に豆電球とCdSが入っているんですけど、抵抗値が波のように変わるんです。「それがどうなっているのかを調べてよ」というのが、最初の仕事だったんです。エフェクターのLFOの波形って大事なんです。三角を入れたり四角(矩形波)を入れたり、ノコギリを入れたり。そのどれとも違う独特の波形をしているらしくて、どう動いているかを調べた人が社内でもいなかったんです。 ―― 森川さんは大学でそういう研究をされていたんですか? 森川 専攻は材料工学で、どっちかというとCdSがどういう風にできているか、CdSを作りたいという側の人間なんです。最初はそっちで粘っていたんですけど。 ―― ああ、なるほど! 三枝 僕らのような電気屋は、素子を作るという発想はないですよね。回路で何とかしようとしますよね。彼は、素子で何とかしようという。CdSがないんだったら別の方法で、素子そのものを作って、それで置き換えればいいんじゃないかと。 森川 実際にメーカーと話をしたりもしたんですけど、向こうもやったこともないものをいきなり作れと言われても、難しいみたいで。あまり話がうまく行かない間に、三枝がその(トランジスタで置き換える)回路を一晩くらいで書いてきたんですよ。 三枝 えへへ。 ―― あれっ? じゃあ一晩でできたんじゃないですか。 三枝 いやいやいや、最終的には彼がだいぶ手直しをしてね、苦労しましたよね? 森川 問題が多くて基板は何回も作り直しましたね。3、4回は作り直しました。 ―― 三枝さんは、一晩で書けるならなぜ今までまでやらなかったんですか。 三枝 それは彼が材料を一から作って、ものすごい投資をしてやりたいというから、その反動で、まあ、つい。いや、それは嘘ですけど。 (後編へ) 著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)  1963年生れ。フリーライター。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ ■関連サイト KORG

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