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作詞家zoppが“アイドル育成集団”をプロデュースする理由「生活に根ざしたコンセプトを」

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/11/02 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家やコトバライター、小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成している。これまではヒット曲を生み出した名作詞家が紡いだ歌詞や、“比喩表現”、英詞と日本詞、歌詞の“物語性”、“ワードアドバイザー”などについて、同氏の作品や著名アーティストの代表曲をピックアップし、存分に語ってもらった。今回は、ワードアドバイスを手がけたMACO「恋人同士」や作詞を担当したSuperfly「天上天下唯我独尊」などに込めたテクニックについて訊きつつ、彼が新しく始動させたアイドル育成集団「RECOJO」について、じっくりと語ってもらった。 ・「ワードアドバイザーは裸の王様にならないようにする役割」 ーーまずは、直近で作詞・ワードアドバイザーとして関わった楽曲について訊かせてください。MACOのアルバム『love letter』に収録されている「恋人同士」でワードアドバイザーを務めたということですが、こちらはどのように関わったのでしょうか。 zopp:もちろん彼女はこれまでの楽曲でも作詞を手がけてきているので、現状も悪いところはないのですが、「もっと良くするためにアドバイスをもらえませんか?」とお話をいただいたので、“設定”の部分や作詞のノウハウについてお話させてもらいました。 ーー“設定”というのは? zopp:主人公と相手の設定をもう少しドラマチックにしたり、最近ではなく、過去に遡ったプライベートな話をカウンセリングみたいに聞きながら、ストーリーの幅を広げていきました。とくに彼女は恋愛の、しかもリアリティのある歌詞を書くので、忙しくなったり書く曲数が多くなってくると、設定の幅が狭くなってくることが往々にしてあると思うんです。なので、高校時代や上京前まで遡って改めて話してもらって、僕が「そのときどう思いましたか? どんな場所にいたんですか?」と質問することで、新たな視点から過去の思い出をアイデアとして書き出しました。そのあとは、出てきた話のなかから良いものをチョイスして、彼女の話に寄り添いながら、多くの人が共感できるというバランスに整えていきました。 ーーなるほど。zoppさんがアドバイスすることでパーソナルな部分を消し、普遍性を持たせるのかなと思ったのですが、そうではなくパーソナルな部分を掘り下げて広げると。 zopp:そうです。体験のリユースというか。これは誰しもそうだと思うのですが、起こった体験をそもそも忘れていたり、世間の評価に寄り添いすぎることが長く続けば続くほど、気づかぬうちに「自分はこういうイメージだから」という決めつけが起こってしまうんです。だから、僕は客観的な意見として「そこ寄り添わない方がいいと思います」とアドバイスしていく役割でもありますね。 ーー zoppさんが以前の連載で話してくれていた「シンガーソングライター的」と区別できる人の歌詞の書き方に当てはまる部分ですね(参考:http://realsound.jp/2015/02/post-2458.html)。 zopp:海外のアーティストやバンドに表立ったプロデューサーが付いているのは、世間のイメージに寄り添いすぎて、裸の王様にならないように導いてもらうためだと思うんです。だからといってプロデューサーの色にがっつり染まるわけではなく、あくまで微調整をしたり、内側からは出てこない新しいアイデアを伝える役割というか。あとは技術的な意味で、「ここは韻を踏んだ方がいい」とか「母音はもっと強くだした方がいい」といった部分も、もちろんアドバイスしています。 ーー ちなみに、zoppさんは作詞家として、MACOさんの歌詞の書き方をどう捉えているのでしょうか。 zopp:等身大であり、夢というよりかは現実に近い物語を書く方、という印象を受けました。僕らのような職業作詞家が書くものは、夢やおとぎ話に近いものがあるのですが、彼女の場合はドキュメンタリーという感じなので、同じ作詞をする人間としては大きな違いがあると思っています。 ーー 先ほど「体験をリユースする」という話になりましたが、zoppさん自身は作詞家としてアーティストに楽曲提供する際、リユースするエピソードはあるのでしょうか。 zopp:いくつもありますよ。全く同じストーリーでも主人公が変わったり、性格ひとつ変えることで細かい表現も変化しますから。例えば“大雨の中”というシチュエーションがあったとして、ワイルドな主人公なら弾丸の雨の中を走り抜けますけど、勇気がない人は雨が上がるのを待ったりしますよね。そうするとそれぞれの物語が分岐して、新しいストーリーが生まれるんです。もっともこれは僕のやり方でしかないのですが、作詞する際はキャラクターをしっかり作って、その性格や設定と相談しながら歌詞の細かい表現を決めていくことが多いので、今回のようなワードアドバイザーの仕事だと、そのキャラクターがアーティスト本人になるだけなので、基本的なスタンスは変わらずに取り組むことができます。 ーー ワードアドバイザーとしてアーティストに関わる場合は、zoppさんから見たその人の第一印象やパブリックイメージが“設定”として強くなるのでしょうか。それとも話していく上で見えてきた素顔を重視しますか? zopp:一応、お話する前にスタート地点と終着地点はある程度「こうなるだろうな」と決めておくんです。話していくなかで選択肢をいくつか提示して歌詞を決めるので、そのなかには素顔を散りばめているといえますね。僕は映画においても使われることが多い「人から追われる物語」をよく使用するのでそれに例えると、ヒロインを連れて誰かに追われるというベースがあって、これが街の中で完結するのか外に出るのか、時間帯はいつなのかというだけでも内容は大きく変わります。 ーー街の話が出たので、zoppさんが直近で作詞を手がけたSuperflyの「天上天下唯我独尊」についても訊かせてください。この曲は映画『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』のイメージソングであり、作品が新宿・歌舞伎町を舞台にしているということもあってか、歌詞は街の中で完結しているような印象を受けました。 zopp:個人的にも原作の『闇金ウシジマくん』は読んでいたので、越智志帆さんとウシジマくんを重ねながら、まずは「越智さんが音楽業界のなかでウシジマくんのようになったら」という設定をひとつ自分のなかに決めました。原作に寄り添いすぎないようにしながら、ウシジマくんの特徴である「雁字搦めな社会のなかで、小さな隙間を見つけてはすり抜けて生きる人間」というイメージと、「喧嘩は強いけどそれだけじゃどうにもならない」というストーリーの流れはしっかりと活かして作ったつもりです。 ーー 頭一発目で<もうこんな街じゃ 窮屈限界です 縁遠い満足感>と、舞台設定が入ってくるのは面白いと思いました。でも、改めてお話を聞きながら歌詞を見ると、確かにそのあとは街に対する言及はなく、いろんな状況に例えられる普遍的な言葉が並んでいるように感じます。 zopp:歌詞って、数分しかない短い時間のなかで、しっかりとストーリーを作ることが重要なので、場所はなるべく早い段階で決めてあげたいですし、自己紹介的な内容もあったほうが物語には入りやすいと考えています。なので、聴いている人が同じ目線になれるような、共有できるワードはなるべく使うよう心がけていますね。今回は「あまり日本語ライクに聞こえないものがいい」というリクエストがあったので、普段の歌詞では絶対使わないような熟語を多く使いました。 ーー韻を踏みながら熟語を多用した歌詞になっていますね。 zopp:そうですね。日本語ってどうしても、一音に一つずつ言葉を乗っけたくなるんですが、例えば「連戦連勝」という言葉も「れ、ん、せ、ん」と乗せがちですが、なるべく普段発音しない「ん」や「い」などを発声させないように作ると、日本語ライクに聴こえないんです。 ーー越智さんがシンガーとしてワールドワイドな声を持っているため、より洋楽ライクに聴こえる部分もありそうです。あと、この表現技法って、マキシマム ザ ホルモン的ともいえるのかもしれません。 zopp:近いかもしれないですね。桑田佳祐さんの作詞法もそうですよね。エルヴィス・コステロのような歌い方に、わざと窮屈に言葉を乗せることによって、それが英語に聞こえるみたいな。 ーーそれは技法として、なにか名前があったりするものなのでしょうか。 zopp:ないと思うので、あえてつけるなら「詰め語法」でしょうか(笑)。僕の持論では「収まりきらないけど、このメロディーはこの言葉でしか歌い切りたくない!」というときに、強引にメロディーの数を増やした結果、八分だったのが十六分になり、早口で歌わざるを得なくなったところから始まったのかなと。 ・「大きなことをやるなら、あくまで音楽という舞台の上で」 ーーここからは、先日発表したアイドル育成集団「RECOJO」について伺います。これは以前から始動している「レコーディング女子」の派生系と考えて良いのでしょうか。 zopp:ユニットというよりかは、そのユニットになりうる母体のようなものを作ろうと思っています。そこから来年にデビューするグループが出てくるようにしたいですね。今いる女性アイドルって、例えば秋元康さんやつんく♂さん、中田ヤスタカさんなど、作詞家・作曲家・アーティストの方がアイドルグループをプロデューサーすることが近年は多くなっていますし、僕自身も35歳で、もうそろそろ何かどデカいことをしなきゃダメだなと思って。ただ職人として作詞をするのではなく、アーティスト・プロデューサーとしての一面も出していきたいと考えるようになり、プロジェクトを立ち上げました。 ーー 小説を出版するなど、作詞以外のクリエイティブな一面はこれまでも発揮されてきたと思うのですが、なぜプロデューサーとしての立ち位置を選んだのでしょうか。 zopp:小説はもちろん大きなことですが、“音楽”というジャンルの中ではないんです。自分が大きなことをやるなら、あくまで音楽という舞台の上で何かをやりたかった、という気持ちが強いですね。 ーーご自身ではソロシンガーや男性ユニットにも多く歌詞を提供してきたと思うのですが、なぜ女性グループという枠組みに? zopp:圧倒的に男性アーティストへの作詞が多かったからこそ、一番経験の少ない女性グループに書いてみたかったんです。なので、どうなるのかという様子見の意味もありつつ、「レコーディング女子」を始めました。この企画もアナウンスはしなかったんですけど、いわゆるオープンなオーディションだったといえます。 ーーいろんな人に来て歌ってもらうことのほかに、人材発掘の意味合いもあったと。 zopp:いいなと思った人がいたら、随時フックアップしていこうということですね。でも、オーディションといっちゃうと物々しい感じもしますし、素の部分が見えないと思ったので。RECOJOが立ち上がったあとは「レコーディング女子」にオーディションの意味合いありきで運営していくつもりです。 ーー現状、RECOJOの候補者は、「レコーディング女子」に参加したシンガーの方が多いのでしょうか? zopp:そうですね。ただ、専門学校に行ってる子もいますし、カラオケで歌うことが趣味という子もいますし、様々ですね。 ーー集まったメンバーで何をするのかはまだ明かされていないですが、どんなコンセプトを掲げて活動するつもりなのでしょうか。 zopp:RECOJOから誕生するアイドルについて話すと、まずはしっかりとコンセプトを絞ったグループを作ろうと思います。CDを1人10枚も100枚も買わせるのではなく、生活に根ざしたものと近いところで活動をし、企業からスポンサードしてもらうようなものを目指したいです。 ーーでは音源のリリースはしない、ということでしょうか。 zopp:いえ、配信リリースはします。ただ、CDは出さないかもしれません。音楽をないがしろにするのではなく、音源にはしっかりと力を入れたいです。それによって赤字が出たとしても、ほかで利益を上げていこうと。 ーーちなみに手渡された資料には、この段階では言えないと思うのですが、かなりみっちりとコンセプトが書かれています。これだとzoppさんも作詞家としてかなり制約が付くと思うのですが。 zopp:そんなこともないですよ。ひとつの設定から複数の視点が生まれるので、逆に制約があったほうが生まれるものも多いといえるかもしれません。 ーー先ほどzoppさんは例としてつんく♂さんや秋元さん、中田ヤスタカさんを挙げていましたが、彼らは職業作詞家・作曲家ではなく、アーティスティックな活動をメインにやってきた方ですよね。それを踏まえて、zoppさんはこれまでの職業作詞家と違う一面として、どのような部分を出していこうと思っているのでしょうか。 zopp:一番重要なのは、作品の内容ですよね。音楽のジャンルはいろんなことをやっていこうと思うんですけど、やっぱり作詞家である自分が手がけるということで、言葉に注目が集まるでしょうし、自分でもそこは中心になってくるだろうと考えています。でも、言葉をあえてボヤかすということもやってみたくて。あえて何を言っているかまったくわからないものを作って、歌詞もどこにも載せないから正解がわからないという。今って調べればすぐでてきますし、アイドルに会いたいと思ったら会えるじゃないですか。だからこそ、それらにアンチテーゼを唱えたいんですよね(笑)。 ーー作詞家であるzoppさんがそこに挑むのはすごいですね。 zopp:でも、逆に作詞家として聴こえやすさを知っているから、聴こえづらさもよくわかっているという見方もできますよね。先ほど話したSuperflyの楽曲のように、オールイングリッシュのように聴こえさせることも可能なので。 ーーお話を聞いていて、このプロジェクトで新たにzoppというクリエイター像を一新したいという意図を強く感じました。 zopp:まさにそうですね。今の自分がひとつのブランドになっているからこそ、お仕事も頂けているとは思うのですが、じゃあそれが来年になってもそのままでいられるのかというと非常に難しいところです。ありがたいことに有名なアーティストに歌詞を書かせてもらっていますが、彼らは僕がいたから売れたというわけではないと思うんです。だからこそ、イチからプロデュースすることで「zoppが作った」という形になり、新しい評価をしてもらえれば、未来は大きく変わると考えています。 (取材・文=中村拓海)

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