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公明党結党50年 首相に振り回され、「便利政党」にされる懸念

DO_NOT_USE_産経新聞 のロゴ DO_NOT_USE_産経新聞 2014/05/01 09:09 産経新聞
公明党の50年 © 産経新聞 公明党の50年

 国のあり方を変える安全保障政策をめぐる攻防で、公明党が党組織や支持母体の「創価学会」を根本から揺るがしかねないような決断を迫られたのは、今回が初めてではない。

 平成4年成立の国連平和維持活動(PKO)協力法。戦後初めてとなる自衛隊の海外派遣には抵抗感が強く、当時、野党の公明党も反対論が大勢だった。

 そのなかで書記長の市川雄一が議論を主導し、賛成でまとめ上げたのだ。

 説得は簡単ではなかった。「公明党の党是は反戦平和主義じゃないんですか」と突き上げる若手もいた。「PKOは、停戦合意で回復した平和を守ることが目的だ」。市川は反対派の質問全てに答える形で、一つ一つ論破していった。党所属国会議員全員を集めた会合は毎回3時間、計7回開かれた。

 同様に市川は、党の支持母体「創価学会」に対しても働きかけた。都内のJR信濃町駅近くにある学会本部の一室で党を取り巻く政治状況を説明し、理解を求める市川。副会長の青木亨ら学会幹部との丁々発止の渡り合いは連日のように続いた。そんなある日、市川は学会首脳と会談した。市川の熱弁を聞き終えた首脳はこう告げた。

 「分かった。党の決断した通り、やってください」

 党が議論を主導し、支持母体がそれに応えた瞬間だった。市川の説いた論理は「日本だけが平和ならいい」という一国平和主義からの転換。もう一つはPKO協力法に反対すれば自衛隊違憲論の社会、共産両党と同じ側に立つことになり、党が埋没するとの危機感だった。

 PKO協力法成立から11年後の平成15年、今度はイラクへの自衛隊派遣の是非が問われた。自公連立政権の一翼を担う党として代表の神崎武法は、米国のイラク攻撃を支持するとした政府方針を「やむを得ない」と容認、イラク復興支援特別措置法にも与党として成立に協力した。ただ、現実に自衛隊を現地に派遣するとなると話は別だ。

 その年の12月、神崎は派遣予定地のイラク・サマワの電撃視察を極秘に決断した。派遣に反発する支持者を納得させるためだった。視察情報を察知した外務省は中止を迫り、協力を拒んだが、神崎は当時を振り返って「私が行って撃たれたら派遣をやめる。撃たれずに帰国したら派遣に賛成する。そう腹をくくっていた」と周囲に語った。

 ところが、神崎ら視察団はクウェートで足止めされた。イラクに入れずに帰国すれば代表も党も恥をかく-。留守を預かる幹事長、冬柴鉄三は外務省や防衛庁の幹部を突き上げた。「官邸がイラク入りを妨害している」とわかると、冬柴はその足で官邸に駆け込み、官房長官の福田康夫に詰め寄った。「代表が命がけで行っているのに、妨害するんなら連立離脱を宣言しますよ」

 福田はしぶしぶ折れ、政府として全面協力することを約束した。サマワ視察に同行した参院議員、遠山清彦(現在は衆院議員)は「この視察で、支持者の過半数が『代表が大丈夫というなら信じよう』と容認に傾いた」と証言する。

 党と学会が「平和の党」の党是と、現実の安保政策のはざまで揺れるとき、時の党幹部が“強み”を生かして働きかけたことがわかる。

 市川は「論理」、神崎は体を張っての「行動」-といった具合だ。これに加えて学会での幹部経験や人脈も大きい。例えば、市川は政界入りする前に学会中枢で「参謀室長」などの要職を務めた。このため、学会内の雰囲気をつかむのも容易で、学会幹部に対しても一定の影響力があったという。

 翻って現代表の山口那津男はどうか。山口は弁護士出身。国会でも一、二を争うほどの論客として知られる。

 結党の理念の「平和の党」を掲げ、集団的自衛権の行使容認を憲法解釈の変更で進めようとする首相の安倍晋三を強い調子でいさめる場面は目立つ。この山口の姿勢は、学会婦人部から高く評価されているのは確かだが、一方で連立を担う与党のトップとして、現実的な方向性を示し、議論を主導するといった動きは見えてこない。

 党関係者は「神崎さんは東大学生部長、太田昭宏前代表は全国男子部長や青年部長の経験はあるが、山口代表は、地区の主任部長の経験ぐらいしかない。だから学会に対してそれほど強く出ることができないのかもしれない」と指摘する。

 党幹部の古参秘書も、山口について「自分一人で考えをめぐらせて、試行錯誤しているような印象だ。器用だから乗り切れているが…」と語り、こう続けた。「このままでは安保政策で首相に振り回された揚げ句、補完勢力の“便利政党”として片付けられるのではないか」(敬称略、肩書は当時)

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