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内閣改造に冷めた市場反応、「岸田シフト」に関心も

Reuters のロゴ Reuters 2017/08/03

[東京 3日 ロイター] - 安倍晋三首相は3日、内閣改造・自民党役員人事を行ったが、金融市場は冷めた反応をみせた。手堅い布陣だが新味に乏しいとの声が多く、日本株は小幅安。支持率回復の決め手にはならないとみられており、解散リスクも依然くすぶる。一方、市場が関心を寄せているのが岸田文雄・新政調会長が率いる岸田派の勢力拡大だ。禅譲をにらんだ人事との思惑から同氏の発言に対する注目度が増している。

<市場は支持率回復に期待薄>

第3次安倍第3次改造内閣に対する3日の東京市場の反応は芳しいものではなかった。ドル/円(JPY=)は110円台でのこう着が続いたが、日経平均(.N225)は小幅安ながら一時2万円を割り込んだ。

海外勢の日本株売りが強まったというわけではなく、国内勢の利益確定売りが中心のようだ。しかし、東証1部売買代金は2兆円前半。「少なくとも内閣改造を好感した海外勢の日本株買いはみられていない」(国内大手証券の株式トレーダー)という。

市場での反応が鈍い理由の1つは、新味に乏しいことだ。前閣僚の舌禍事件などを踏まえてか、主要ポストに閣僚や党要職の経験者をあてる安定重視の陣容となったが、逆に「新味に欠ける」(岡三オンライン証券・投資戦略部部長の武部力也氏)と受け止められてしまった。

さらに安倍内閣の支持率低下の一因は、森友学園や加計学園などの問題だが、むしろ内閣改造は「こうした問題から目をそらすために実施したのではないか」(国内シンクタンクのエコノミスト)と疑う声も出ている。

市場が注目する改造後の内閣支持率も「急に高まるとは思えない」(SMBCフレンド証券チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏)というのが、市場のほぼ共通認識。支持率低下にともなう政治の不安定化というリスク要因が払しょくされなければ、海外勢による積極的な日本株買いは期待しにくい。

<くすぶる解散リスク>

内閣改造に冷めた市場反応、「岸田シフト」に関心も © REUTERS 内閣改造に冷めた市場反応、「岸田シフト」に関心も

実際、内閣改造後も、解散のリスクはくすぶり続けるとみられている。自民党だけでなく、民進党も支持率を低下させているほか、小池百合子都知事の「都民ファーストの会」も国政進出はまだであり、反安倍票の「受け皿」がそろっていないためだ。

支持率低下に歯止めがかからなければ、「受け皿」が整っていないうちに解散を行い、風向きを変えるという戦略を取る可能性がある。議席数を多少減らしても与党で過半数を確保できれば、「勝利宣言」をすることも可能だ。

一方、内閣改造で支持率が上昇すれば、選挙に勝てる可能性が高まったとして、解散に打って出る可能性も高まる。2018年9月に自民党総裁任期、同年12月には衆院議員の任期満了を迎える。時期的に追い込まれることは選挙戦略上、避けたい。

十分な「受け皿」がないからこそ、解散に踏み切るはずで、総選挙で自民党が勝つ確率は低くない。しかし、イギリスのメイ首相が今年6月の同国総選挙で経験したように、事前の支持率は高くても選挙に負けるリスクもあり、難しい判断を迫られる。

このため、解散に対する市場の反応は円高・株安になるとの見方が多い。「海外勢は不透明感を嫌う。アベノミクスにはほぼ期待していないので、13年のような海外勢の大きな日本株買い越しはないだろう」とクレディ・スイス証券の株式本部長、牧野淳氏はみている。

<岸田派の勢力拡大>

今回の改造人事で、市場が注目したのは、新内閣の「岸田シフト」だ。改造前の同派の閣僚ポストは岸田氏と山本幸三地方創生担当相の2人だったが、今回は林芳正氏、小野寺五典氏、上川陽子氏、松山政司氏の4人が入閣。新内閣で最大の「派閥」となった。

自民党の名門派閥「宏池会」(岸田派)会長である岸田氏は、外相から党三役の政調会長に就任。これまで経験のなかった党要職に就くことで、「ポスト安倍」の有力候補として、市場からも大きな注目を集めることになりそうだ。

ただ、自民党内の権力移譲であれば、アベノミクス政策を大きく変えるのは難しいとみられている。同氏は財政再建派と目されているが、足元の経済状況を踏まえると緊縮財政策は取りにくい。金融緩和を止めれば、少なくとも短期的には円高・株安だ。

党人事発表後の会見で、岸田氏は「アベノミクス政策を進めながら、成長と分配の好循環を完成させなければならない」と述べた。

ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト、矢嶋康次氏は「アベノミクス政策は行き詰まり感が強まっているものの、金融緩和などで巨大化し、大きく変えるのが難しくなってしまった」と指摘。政策の対案を出しにくくしてしまったことは、日本にとって将来の禍根になりかねないと懸念を示している。

(伊賀大記 編集:石田仁志)

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