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医療・介護の未来予想図 2025年の医療ITは?

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2014/04/22 08:00 ITMedia
厚生労働省の医療・介護分野におけるICT活用の将来イメージ 厚生労働省の医療・介護分野におけるICT活用の将来イメージ

 2014年(平成26年)度診療報酬制度では、団塊世代が75歳上となる2025年に向けた医療提供体制の再構築、地域包括ケアシステムの構築を見据えた改定が目玉の1つとなっている。

 地域包括ケアシステムは、患者(高齢者)が暮らす日常生活地域圏内で医療・介護、生活支援サービスを提供することが求められる。そのため、医療機関や介護施設などサービスの提供者、行政機関などの関係者間のネットワーク化が鍵を握る。また、サービスの効率化や生産性の向上を支える基盤として、ICT(情報通信技術)を活用したシステムの重要性がより増すことになる。

 厚生労働省は2014年3月31日、同省のWebサイトに資料「健康・医療・介護分野におけるICT化の推進について」を公開した。これは、2013年6月14日に閣議決定された「規制改革実施計画」で医療情報の利活用のための工程表などの策定が決定されていることを踏まえて作成した資料。医療分野におけるICT化の将来像(2025年)とその実現に向けた厚生労働省の具体的方策を記載している。本稿では、その概要を紹介する。

●医療・介護分野の将来イメージを提示、厚生労働省

 厚生労働省が同資料で掲げた将来像のイメージに映るのは、医療・介護サービスの質の向上と持続可能な社会保障制度の確保を目指したICT活用だ。

 具体的な方策は、以下の2つに大別される。

1. 医療情報連携ネットワークの普及促進による医療の質の向上と効率化の実現

2. 医療分野のさまざまな側面におけるデータ分析と利活用の高度化の推進

●医療情報連携ネットワークは、実証段階から次へ

 これまで全国各地で実証事業や補助事業として医療情報連携ネットワークの構築、医療情報の標準規格「SS-MIX」の策定・普及などによる連携の基盤整備が進められてきた。「健康・医療・介護分野におけるICT化の推進について」資料では、医療情報連携ネットワークの普及・促進をより図るため、実証フェーズから普及・定着に軸足を移していくべきだと記載している。

 また、医療情報連携ネットワークシステムの課題として以下の4つを挙げている。

1. 費用面を含むネットワークの持続可能性の確保、効果的な稼働の継続

2. ネットワーク間での情報の相互利用性の確保

3. より多数の医療機関の参加と情報の双方向性の確保

4. 本人による健康・医療情報の利活用

 上記の課題を解決する取り組みとして、厚生労働省は以下の5つの施策を推進する予定だ。

○1. 目指すべきネットワークモデル(標準モデル)の確立、普及

 上記の課題の解決を図るため、医療情報連携ネットワークが備えるべき標準的な要素を定義し、全国で共通活用でき、持続可能な情報連携基盤の標準モデルの確立を目指す。

 具体的には、全国各地のネットワークの構築状況、ネットワークの目的や共有している情報項目、参加機関数、同意取得の方法、現在の稼働状況、効果などを2014年度に調査・分析する。また、全国に普及可能なネットワークモデルとしての「標準モデル」確立を検討する。さらに2014年通常国会に提出されている「医療介護総合確保推進法案」では、都道府県による地域医療構想の策定、都道府県に基金を設置する新たな財政支援制度が盛り込まれている。こうした政策的枠組みと整合性を図りながら、標準モデルの普及促進を図るという。

○2. 在宅医療・介護を含めた標準規格の策定、普及

 多数の医療機関間の連携やネットワーク経由の連携など、地域医療連携をより広域で実現可能にする情報交換のための標準規格の策定・普及を推進する。

 具体的には、国際標準規格を踏まえた患者の同一性確認、当該患者の医療情報を交換するための標準規格などを確立する。また、広く普及しているレセプトコンピュータに登録された診療情報を共有可能とするためのインタフェース規格案の策定に取り組むという。さらに在宅医療や介護分野での情報共有に向けた標準規格の策定を目指す。

 その他、現在行われている電子処方せんの実証事業の結果を踏まえつつ、患者の利便性の向上や調剤業務の効率化、安全確保などに関するガイドラインを策定し、2015年度までに導入を図るべく検討を進める。

○3. クラウド活用による費用低廉化モデルの構築

 クラウド技術を活用などによる、設備投資に掛かる費用の抑制策の検討やルール策定などについて実証事業を実施する。

○4. 個人による疾病・健康管理の推進

 患者や地域住民が生涯における医療・健康情報を継続的に自ら管理し、活用する仕組みを推進する。具体的には糖尿病や高血圧などの生活習慣病に関する電子手帳の確立、その普及に向けた実証事業を行う。また、電子版「お薬手帳」の普及・拡大に引き続き取り組む。さらに、疾病やワクチンに関する情報、接種スケジュール、接種歴などの情報をPCやスマートフォンなどに送信する情報提供サービスの構築を目指す。

○5. 遠隔医療の推進

 遠隔医療システムの導入に対する補助事業を継続し、医療機関のシステム構築を支援する。また、2014年度から医療・介護事業者を対象とする遠隔医療研修を実施し、医療・介護従事者のリテラシーの向上を図る。地域の特性に応じた遠隔医療の提供を推進するため、各地域の事例分析を行い関係者に情報を提供する。

●国家レベルのデータ分析活用基盤で国民に還元

 同資料には、今後の医療・介護制作ではエビデンスに基づく効果的な施策立案や医療技術の向上、医学研究の推進に取り組むことが不可欠と記載。情報活用ルールの整備や標準化、基盤の構築とともに、高度な分析手法を確立し、エビデンスに基づいた政策や効果的な保健事業、新たな研究などを促進。医療・介護分野における情報活用を効率化することで国民にその恩恵を還元できる社会の実現を目指すという。

 厚生労働省は、医療分野における情報活用や分析の高度化が国民の利益として還元されるためには、主に3つのフェーズがあると想定。

1. 国や地方公共団体による医療・介護政策への反映

2. 保険者などによる個人の健康増進に関する取り組みへの活用

3. 治療技術などの医療の質向上や研究開発促進への活用

 厚生労働省は今後、以下の9つの取り組みを進める予定だ。

○1. レセプト情報や健診情報をさらに有効活用する

 既に政策や研究のために活用されているレセプト情報や健診情報などのデータベースについて、都道府県による情報活用をさらに促進するために国が技術的助言を行う。これらの情報を地域医療構想(ビジョン)などの医療政策に生かしていくという。また、研究を目的とする第三者への情報提供については、セキュリティ環境を整備したオンサイトセンターを整備。公益性を有する研究者に対する提供を行うことを前提として、その提供範囲の拡大を検討し、2014年度内にその結論を出す。

○2. 介護・医療関連情報の「見える化」の推進

 地域包括ケアシステムの構築に向けて、医療・介護関連情報を広く共有するための「見える化システム」の構築を進める。既に2014年2月に介護情報を対象とするプロトタイプシステムが運用を開始しており、地方自治体が要介護度別のサービス利用状況の分析などで利用してきた。2014年度以降は医療情報を対象にしたり、地域住民も利用可能にするなどシステムの範囲拡大を進めていく。

○3. データヘルスの推進

 医療保険者がレセプトや健診情報などの情報を活用し、加入者に対して効果的かつ

効率的な保健事業を実施できるように整備を進める。被保険者保険では、「健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針」(告示)を改正。全ての健保組合、協会けんぽに対して、2014年度中にレセプト・健診情報を活用する「データヘルス計画」を策定・公表し、2015年度からの事業実施を要請する。

 また、国民健康保険においては「保健事業の実施等に関する指針」(告示)を改正。市町村国保等が、2014年度から保健事業の実施計画について所要の見直しなどを行い、順次、情報分析に基づく保健事業の実施を推進する。市町村国保では有識者で構成される支援体制を確立し、財政支援する。

○4. 医薬品の安全対策のための医療情報データベース

 2011年度から5年計画で実施してきた「医薬品医療機器総合機構の情報分析システムを構築する基盤整備事業」では、隠れた副作用の発見や副作用の定量的な把握のため、10の拠点病院でデータベースを構築してきた。2013年度からは拠点病院の情報蓄積とともに、病院に保管されるカルテ情報などを基に、医療情報データベースから抽出された情報の正確性を検証している。2014年度からは医療情報データベースの情報を活用した、迅速かつ的確な医薬品などの安全対策を実施することを目的として、疫学的手法を用いた活用方法の高度化を図る。

○5. 関係学会の情報基盤の整備を支援

 2011年から厚生労働科学研究費によって、日本外科学会を中心に手術症例に関する登録事業「NCD(National Clinical Database)」の立ち上げを支援し、これまで年間100万例を超える情報の収集や分析が行われてきた。今後は医療の質を向上させるため、日々の診療行為や治療効果、アウトカムデータ(診療行為の効果)を一元的に蓄積、分析、活用するための情報基盤を整備する関係学会の取り組みを支援する。

○6. 難病対策推進のための患者データベースを構築

 全国規模の患者データベースを構築し、病態解明や治療法の開発、その実用化を目指す研究を支援する。また、長期的には経年的に蓄積された難病患者の情報を活用することで、研究者による病態解明や創薬開発につなげることを目指す。

○7. がん登録データベースの成果を国民に還元

 2013年12月に成立した「がん登録の推進等に関する法律」に基づき、全国がん登録を通じた広範な情報収集によって、罹患や診療、転帰などの状況の正確な把握に努める。またこれらの情報をがんに関する調査研究に活用し、その成果を国民に還元することを目指す。

○8. 予防接種記録の電子化を検討

 予防接種法施行令に基づき、各市町村が作成、保管している予防接種台帳(予防接種に関する記録)の電子化を厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会などで検討する。また、予防接種記録情報を疫学調査やワクチンの研究開発などの予防接種施策に活用できるような仕組みの構築を目指す。

○9. 臨床研究・治験の効率的な実施に向けた技術開発

 臨床研究・治験の効率化や迅速化、データの質の確保のために必要な技術を開発する。具体的には、電子カルテなどから必要な情報を電子的に参照・抽出する技術を開発し、その導入や標準化に向けた施策に取り組む。

●ICTは政策推進のための大きな可能性を持つ「ツール」

 厚生労働省は、同資料のまとめとして「ICTの活用は健康寿命の延伸、医療・介護サービスの質の向上と効率化、医療技術の発展や効果的な政策推進などを実現する上で大きな可能性を持つ『ツール』の1つである」と記載している。2025年には医療費が50兆円を超えると推計される中、医療・介護をはじめとする社会保障制度の持続可能性の確保に向けた施策に取り組むという。

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