古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

印刷せず、ポストに行かずに請求書発送――名古屋発・クラウド請求書「Misoca」の挑戦

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2014/06/13 ITMedia
印刷せず、ポストに行かずに���求書発送――名古屋発・クラウド請求書「Misoca」の挑戦: 豊吉さんと、共同創業者の松本哲さん © ITMedia 提供 豊吉さんと、共同創業者の松本哲さん

 経理担当者がいない個人事業主や零細企業にとって、請求書の送付は面倒な作業だ。請求書のテンプレートを用意し、請求額や送付先を入力して印刷し、はんこを押し、切手を貼り、ポストに投函――と、時間も手間もかかり、本業に使える時間やエネルギーが圧迫される。

 クラウド請求書「Misoca」は、そんな手間を究極まで減らしたサービスだ。Webブラウザから請求書を作成し、そのまま印刷・郵送できる。使い慣れれば、請求書の作成から郵送まで数分程度で完結。初期費用、月額費用はゼロ。送料は1通あたり180円(税込)だ。

 「無駄なことが嫌いなんです」。Misocaを運営する名古屋市のベンチャー企業・スタンドファームの豊吉隆一郎(とよし・りゅういちろう)社長は、こう言い切る。請求書を作ったり送付する作業は、豊吉さんにとって「無駄」の1つ。できるだけ手間なく終わらせたいと、Misocaを開発した。

 最初の“顧客”は自分1人だったが、フリーランスを中心に人気が広がり、現在では1万3000もの個人・法人が利用、月間10億円分以上の請求書が作られているという。

●請求書を簡単作成、郵送もボタン一発

 Misocaは、請求書を簡便に作るためのさまざまな機能を、シンプルなユーザーインタフェースの中に備えている。

 Web上のテンプレートに、請求額や振込先、住所、印影など必要事項を入力して請求書を作成。過去に入力したデータをそのままコピーして使うことも可能だ。請求書はPDFで出力したり、メール送信も可能。見積書や納品書、領収書も作成できる。

 宛先を指定し、「郵送する」ボタンを押すだけで郵送が完了。提携先企業が、印刷や宛名書き、封入、投函まで行ってくれる。印刷したり切手や封筒を用意したり投函する手間なく、最短で翌営業日に発送される。費用は、あらかじめ登録しておいたクレジットカードで決済される。

 「請求作業が楽になった」「嫌いだった請求書送付が、楽しくなった」――ユーザーからのそんな声を励みに、開発を続けている。

●Webでの仕事も請求は「紙」という“無駄”

 「仕事では紙を使わないのに、請求書は紙でくださいって言われて……」――2011年に起業する前は、フリーランスとしてWeb制作を請け負っていた豊吉社長。請求書を作る際は、Excelの請求書テンプレートを探し、項目を入力し、コンビニのネットプリントで印刷し、投函していたが、入力ミスで再プリントをしたり、投函し忘れることもあり、わずらわしく感じていた。

 請求書の作成から郵送までオンラインで完結するMisocaのサービスを考えついたのは、、起業当初から運営していた、オンラインのイベント管理サービスがきっかけだった。イベントのチケットを郵送する仕組みを検討していたところ、同社のシステムと連携し、印刷・郵送してくれる会社を見つけ、「請求書も送れるのでは」と考えた。

 早速、請求書をオンラインで郵送できるシステムを開発。豊吉さん1人で1カ月ほど使い、2011年11月に公開した。12月に東京で行われた開発者イベントで紹介したところ、1日100人ほどのペースでユーザーが増えていったという。ユーザーの声を聞きながら機能改善を続けており、今でもトップページに「ご意見」ボタンを設置し、届いた声はすべて豊吉さんが目を通している。

 Misocaからの収入は、1通180円の郵送料のみ。赤字が先行しており、受託開発からの収入で開発資金をまかなっていたが、競合サービスが次々に現れる中、Misocaの開発に集中したいと昨年9月、ベンチャーファンドから3000万円の出資を受けた。この資金で開発費用をまかないつつ、今夏スタート予定の決済サービスで収益化を加速させる計画だ。

●入金作業の「無駄」も解決 フリーランス同士でカード決済

 「みんなATMに行って入金作業しているのはおかしいし、無駄だと思う」――企業が取引先に支払いを行う場合、ほとんどが銀行振込だ。オンラインバンキングの普及率は低く、特にフリーランス同士の振り込みは、ATMから手作業で行われているケースが多いという

 夏に開始する決済サービスは、Misocaで作成した請求書をメール送信すれば、受け取ったユーザーがクレジットカードで請求額を振り込める仕組みだ。手数料は3%程度になる見通し。5年後に1兆円の決済が目標だ。

●ベンチャー起業、東京と名古屋は「次元が3つぐらい違う」

 豊吉社長は岐阜県出身。2004年に岐阜工業高等専門学校を卒業し、名古屋でフリーランスとして働いた後、11年に起業した。出身地に近い名古屋で、「地元のエンジニア仲間とともに世界をあっと言わせたい」と起業したが、東京と名古屋では、ITベンチャーをとりまく環境に大きな格差を感じたという。

 「東京と名古屋で、次元が3つぐらい違う」と、共同創業者で取締役の松本哲(まつもと・さとし)さんは言う。特に異なるのは情報量と空気感だ。「東京でのスピード感とか熱が、名古屋にはまったく伝わってこない」(松本さん)上、情報量は「何倍――というより、1か0かぐらいの差があると感じている」(豊吉さん)。

 名古屋にはITベンチャーの数そのものが少なく、提携先やメディアも東京中心。ベンチャーキャピタル(VC)もほとんどない。VCから出資を受け、赤字を先行させながらサービスを急拡大させる――東京のベンチャーでは当たり前の流れが名古屋では想像できず、出資を受けるのも苦労したという。

 名古屋で続けるメリットもある。ライバルが少なく目立てることや、他社の動向を気にせずに開発に専念できること。「他社がゲームで何億円稼いだ、などの情報にふりまわされない」と豊吉さんは話す。

 8人いるスタッフは全員、エンジニアだ。名古屋にはトヨタ自動車関連会社が多く、優秀な組み込みエンジニアがたくさんいるという。岐阜や東京に住み、Googleハングアウトを使いながらリモートで働いているエンジニアも2人いるそうだ。

●「世界を変えている気がして面白い」

 「ITで世の中の無駄を減らしたい」――そんな理念で経営する同社。最初に開発したチケット管理サービスは、大手の競合が次々に現れて苦戦したが、Misocaには強い手応えを感じている。

 「Misocaのおかげで請求作業が楽になったと言われ、世界を変えている気がして面白い。オフィスでかちゃかちゃとキーボードを叩いているだけで、世の中のフリーランスの方々の生活の一部を変えられたのは、プログラマー冥利に尽きます」(豊吉さん)

ITmedia NEWSの関連記事

image beaconimage beaconimage beacon