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反転攻勢へ!「Ryzen 7」の爆速性能を確かめる

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2017/03/10
反転攻勢へ!「Ryzen 7」の爆速性能を確かめる: 画像:ITmedia © ITmedia PC USER 提供 画像:ITmedia

 アーキテクチャの大幅な刷新というのはリスクが伴うものだ。過去を振り返ればIntelのNetBurst対AMD Athlon 64や、Intel Core対AMD Bulldozerのように、トレンドを捉えたほうがリードしてきた。そしておおよそ1回見誤っても、次には挽回するものである。そういう意味で、Ryzenに対する期待は高い。

 今回投入されたRyzenは、「Ryzen 7 1800X」「同1700X」「同1700」の3モデル。Ryzenシリーズとしては、7/5/3が予定されている。某自動車メーカーのラインアップや、Intel Coreシリーズのラインアップとナンバーを合わせた格好で、Ryzen 7は“対Core i7”と考えると分かりやすい。つまり、Core i5に対抗するのはRyzen 5、Core i3に対抗するのはRyzen 3ということになる。

 ただし、Ryzen 7は、Intelで言うところのメインストリームプラットフォームのKaby Lakeと、エンスージアスト向けプラットフォームのBloadwell-Eをカバーする。GPUを統合していないので、グラフィックスカードが必要となる点でややターゲットは異なるが、おおよそこの範囲に位置付けられる。

 Ryzenの鍵は、シングルスレッド性能を改善しつつ、一気にコア数を増やし8コア/SMTによる16スレッド同時実行対応というマルチスレッド性能で優位に立とうしたところだ。

 また、興味深いのがプラットフォームだ。RyzenではSocket AM4が採用される。AM4は、すでにAPUのBristol Ridgeで用いられている。これまではFXシリーズのCPUがAMx系を、AシリーズのAPUがSocket FMx系を用いてきたが、これが1つのAM4にまとめられた。

 プラットフォームの核となるチップセットは、5つほど発表されている。最上位にX370、メインストリームにB350、エントリーにA320と続き、スモールフォームファクター(SFF)向けにX300とA300が用意されている。

 なお、OCに対応するのはXとB。その上でXはマルチGPU時におけるPCI Express x16スロットのレーン分割に対応する。ほか、Serial ATA 3.0やNVMe(PCI Express接続)対応スロットのサポート数、トータルのPCI Expressレーン数、USB 3.1 Gen2のチップセットネイティブサポートなどで差別化されている。USB 3.1 Gen2は外部チップでも追加できるものとはいえ、チップセット対応を望む場合はX370/B350/A320のみとなるので注意したい。

 メモリに関しては、現時点ではその動作条件がかなり複雑なのでまとめておきたい。まず最大ではDDR4-2666(PC4-21300)対応となるが、これが利用できるのはメモリが2枚までの状態でシングルランクのデュアルチャネル時とされている。かなり条件が厳しいと言える。メモリ2枚でデュアルランクの場合はDDR4-2400、4枚使いたい場合はシングルランクでDDR4-2133、デュアルランクでDDR4-1866。ただ、多くの場合はマザーボード設計に依存する。

 AMDのCPU/APUではTDP値も気になるところだ。TDPの算出方法は各社異なるので単純に比較できないところだが、今回は1800Xと1700Xが95W、1700が65Wという値を提示している。これは、AMDが従来のメインストリーム向け製品で提示していたTDP帯と変わらない。アーキテクチャの刷新によって省電力機能も強化されているため、ここが効いてパフォーマンスを向上させつつ消費電力や発熱を抑えられている期待できるだろう。

●Ryzen 7 1800X/1700X/1700の3製品を入手

 今回、AMDから評価キットとして到着した木箱の中にはRyzen 7 1800XとGIGABYTE製X370チップセット搭載マザーボード「GA-AX370-GAMING 5(rev. 1.0)」、CorsairのDDR4-3000メモリ「VENGEANCE LPX CMK16GX4M2B3000C15」が含まれており、そしてこれとは別にNoctuaのCPUクーラー「NH-U12S SE-AM4」、Ryzen 7 1700Xと同1700も届いた。こちらを使って検証を進めたいが、まずは鍵となるパーツについてそれぞれ見ていこう。

 まずはRyzen 7。1800X、1700X、1700の3製品があるが、刻印以外はほとんど変わらないので1800Xで紹介していく。まず表面には、型番があり、インパクトのある「RYZEN」ロゴもプリントされている。PGAパッケージなので、裏面は従来のコンシューマー向けAMDプロセッサと同様、ピンが立った剣山状の構造だ。なお、1700についてはリテールクーラー「Wraith SPIRE」が付属するとされているが、今回は付属していなかった。

 続いてマザーボードのGA-AX370-GAMING 5(rev.1.0)。X370チップセットを採用している点は型番からも分かる通り。ゲーミング向け機能としてはメモリスロットやボードの側面、さらにボード上各所にLEDを備えているあたりにある。メモリに関しては、OCメモリの場合でDDR4-3200をうたっている。

 これまでのAMDチップセット搭載マザーボードは、同じチップセットが長く使用され、一部はリフレッシュモデルなどで世代に合わせたアップデートが入ったものの、最新インタフェースが登場してもしばらく使えない状態が多かった。しかし久しぶりの新チップセットということで、現状のインタフェースは網羅されることとなった。GA-AX370-GAMING 5は、SSD関連ではM.2やU.2を備え、SATA Expressも搭載し、USB関連ではUSB 3.1 Gen2 Type-Cにも対応している。

 そのほかの点では、2系統のLANが面白い。1つはKiller E2500チップ、もう一つはIntel製チップを搭載している。つまりAMDとIntelが同居している。

 さて、AM4ソケットはレバー式でピンホールの配列以外は従来同様に見える。一方でリテンションホールには変更があった。今回の検証キットは同梱されていたNH-U12S SE-AM4用のリテンションベースが装着された状態で届いたため、どのような標準リテンションベースが付いているのかお見せできないが、ネジ固定式のCPUクーラーの場合はAM4対応であることが必須となり、標準リテンションベースを用いてツメ固定式のCPUクーラーを用いる場合は、従来までのAM3+やFM2+対応のものが流用できるとのことだ。

●Ryzen 7&Socket AM4環境のクセをチェック

 ベンチマークの前に、まずメモリの動作を検証してみた。なお、検証キットに含まれるCorsairのVENGEANCE LPX CMK16GX4M2B3000C15は問題なくDDR4-2666のデュアルチャネルで動作している。これは筆者の手元にあるメモリで検証した内容だ。

 G.SkillのRipjaws 4 F4-2666C16Q-16QRBは比較的新しいOCメモリであり、Ryzen 7公式のメモリ動作を超え、4枚でのDDR4-2666動作が確認できた。一方、Skylake登場時(2015年8月)から入手できたCrucialのBallistix BLS8G4D240FSA、同MTA16ATF1G64AZ-2G1A1は、POSTが通らなかった。また、OCメモリではPanramのNinja-V Q4U2400PSN-4Gも同様だった。ただし、Skylake登場時に近いセンチュリーマイクロのCK8GX2-D4U2400/MICは問題なくDDR4-2400動作が可能だった。

 マザーボード自体がおそらく製品前サンプルとみられることから、製品版とは挙動が異なる可能性もあるが、今回の検証結果からは、Skylake発売当時のDDR4メモリの流用は要注意と言える。比較的新しいOCメモリや、センチュリーマイクロのように設計が確かな製品なら安心といったところだろう。ただ、多くの方は新規にメモリも購入するだろうし、今後マザーボードの最適化が進み、BIOSの更新でもう少し動作がラクになる可能性はある。今、組みたいという方の参考になれば幸いだ。

 次にRyzen 7のクロックの挙動(電源管理:バランス時)について見てみたい。CPU-Zの値を見ても明らかなように、倍率がRyzen 7 1800Xで37倍と、定格よりも100MHz高い。これは1700Xや1700も同様で、よく見ていると不意に倍率数値が36倍へと落ちることもあり、そもそも拾っている情報自体が随時書き換えられている印象だ。

 そこで3DMark時の動作クロックのログをとってみた。まず、Ryzen 7 1800Xおよび1700Xは、アイドル時で2.2GHz前後、負荷がかかると1800Xは3.7GHz、1700Xは3.5GHzまで上昇し、さらにそこから1800Xは4.1GHz、1700Xは3.7GHzまで上昇するのが確認できた。

 Ryzen 7 1800Xは、定格が3.6GHz、ブースト時が4GHzとされているので、まずここが異なる。Ryzen 7は上位2つのCPUとはまた異なり、アイドル時は1.6GHz程度で、負荷がかかって3.2GHz、そしてところどころ3.75GHzまで上昇することが確認できた。

 おそらくこの難解なクロック変動は「XFR」が絡んでいるのだろう。XFRは温度のヘッドルームをセンサーから読み取りOCする機能とされる。ただ、これを見る限りIntelのTurbo Boostとはずいぶん異なる挙動になるようだ。

 最後にCPU温度の推移を3DMark時のデータで確認してみた。そもそも3DMarkにおけるCPU負荷はそれほど高いわけではないので、参考程度にしてほしい。ここで分かるのは、明らかにRyzen 7 1700のCPU温度が低い点だ。この点、Ryzen 7 1700はかなり扱いやすいCPUになるだろう。静音PCや小型PC狙いの方にもちょうどよい。

 また、Ryzen 7 1800Xや1700Xは60度を超えるシーンが見られるものの、そこまで爆熱CPUとも言えない。いちおうCINEBENCH R15時には80度を超えることもあった。なお、1700Xが1800Xよりも高い温度になる傾向があったので気になった。これは、後ほど紹介するベンチマークにおいて、1800Xのスコアが1700Xにしばしば逆転されていたこととも関係がありそうだ。

●Core i7-7700Kと対決! CPU関連ではRyzenが爆速、ゲームはほぼ互角

 それではRyzen 7のパフォーマンスをベンチマークで明らかにしていきたい。ただし、今回用意できた比較対象CPUがIntel Core i7-7700K、グラフィックスカードがRadeon RX 480なので、ここではエンスージアストの一つ下のハイエンドPC環境を想定してテストを進めていこうと思う。

 AMD Ryzen側の環境は、評価キットをベースに、必要なパーツを適宜追加した格好、Intel Core i7-7700K環境はそれに準ずる構成とした。

 まずはCINEBENCH R15。これはAMDがプレゼンテーションでも多用したように、「CPU」テストではとくにマルチスレッド性能が素直に現れる。

 実際、Multi CPUのスコアは目を見張るものがある。Core i7-7700Kを指標とすると、対抗馬であるRyzen 7 1700も450ポイント近く高いスコアを示しており、同じプラットフォームで選べるという点では、Ryzen 7 1800Xはさらに200ポイントほど上積みできている。一方で、Single CPUのスコアはCore i7-7700Kよりも低いのだが、動作クロックで割ってみると妥当なところであることが分かる。

 CPUマルチスレッド性能を見るもう一つのベンチマークとしてx265 HD Benchmarkを見てみよう。これも8コア/16スレッドというスペックがモノを言い、Ryzen 7勢が高いスコアを出している。ソフトウェアエンコーディングのような用途には、最適と言えるだろう。

 続いてPCMark 8でアプリケーション性能を見てみよう。全体的に見れば、Ryzen 7とCore i7-7700Kのスコア差は小さめだ。クロックの低いRyzen 7 1700がやや低い値である点と、HomeテストでRyzen 7勢がやや振るわないところが気になる傾向だろうか。なお、Ryzen 7 1700Xがより高クロックであるはずの1800Xよりも高いスコアになる傾向があり、これは結局原因を特定できなかった。

 グラフィックパフォーマンスを3DMarkで見てみよう。Fire StrikeのOverallはほとんど変わらない。Graphicsスコアも大きな差はなく、ただしCPUが絡むPhysicsスコアはRyzen 7勢が高い。全体的に見ると、Ryzen 7勢のスコアはややバタついている。ある程度はベンチマーク誤差と思われるが、Ryzen 7 1800Xがほかのテストも含め対1700Xで差が出せなかったことと、そうした不調が少なかった1700XもCombinedでスコアを落としているように、安定感が感じられない。

 Time SpyのOverallではRyzen 7勢がCore i7-7700Kを上回った。Graphicsスコアもほぼ同等かそれ以上で、CPUスコアは圧倒するといった印象だ。先のFire Strikeと比べ、さらにCPU負荷の高いテストとなるためだろう。

●ゲーム系ベンチの結果は……

 それでは、以降Ryzen 7を検討する方の主な目的となるだろうゲーム性能を見ていこう。まずはRise of the Tomb Raider。設定はDirectX 12、画質は設定可能な箇所をすべて最大に引き上げている。検証環境のGPUがRadeon RX 480なので、1920×1080ピクセル以上は負荷が高すぎ、実際にプレイするならFHDあるいは画質を落としたい。

 さて、フレームレートはCore i7-7700Kよりもわずかに低めに出る傾向が見られたが、Ryzen 7 1700Xは健闘しており、おそらく今回不調の1800Xも実際にはこれに近いスコアを出すものと思われる。この負荷でFHDなら2fps程度の差であるので、実際のプレイで気になるほどではなさそうだ。Rise Of The Tomb Raiderのもう一つのグラフは最小フレームレートをグラフ化したもの。最小フレームレートについては、明らかにRyzen 7勢が高めに出る傾向が見られた。

 次からはメインストリームゲーマーに合わせ、1920×1080ピクセルでの結果を見ていこう。The Divisionも、それぞれの差は2.5fps以下なのでほぼ誤差の範囲だ。ここもCore i7-7700Kに対してほぼ同等と言えるだろう。

 Watch Dogs 2の平均フレームレートと最小フレームレート。これもそれぞれ差は2fps程度なので誤差の範囲と言えるだろう。

 最後に消費電力。マザーボードがAMDとIntelとで異なるので平等ではないが、Ryzenのほうが高い値である傾向だった。ライバル関係にあるRyzen 7 1700とCore i7-7700Kは、TDPで見ると65W対91W。その上で10WほどRyzen 7 1700のほうが高かったわけだが、マザーボードの違いを考慮すれば、Intel環境でPC用の電源を選ぶ際、Ryzen 7ではプラス30W程度多く見積もれば間違いないだろう。これまでのように100W単位で多く見積もる必要はない。その点でFXシリーズからは着実に進歩している。

●AMDとIntelががっぷり四つを組むことでPC市場が変化に向けて動き出す

 これまでのAMDの主力CPUであるFXシリーズではLGA115x系Core i7に対抗するのが辛かったのだが、Ryzen 7では十分に対抗でき、その上でマルチスレッド性能ではそれを上回ることができる。

 今回、LGA2011-v3環境とは比較していないが、Intelユーザーでもエンスージアスト向け環境に移行するのは決断が必要で、そう簡単にはいかなかった。しかし、Socket AM4なら、Ryzen 7 1800Xのところまで同一プラットフォームでパフォーマンスを引き上げられる。どちらも外部GPUが必要という点ではLGA2011-v3と同じだが、Socket AM4のほうが多少気楽だろう。この下にRyzen 5やRyzen 3が控えているからだ。Socket AM4でLGA115x系のCore i3〜Core i7、そしてその上まで対応できることは大きな武器だ。

 また、マザーボードはまだ供給量が需要に足りていないようだ。加えて、現時点で登場しているのはハイエンド寄りであり、ATXばかりである。今回、CPUクーラーは評価キット付属のものを利用したが、その冷却性能で見る限り、Ryzen 7 1700は特にCPU温度の上昇が抑えられているようで、ならば小型&高性能PCで組んでみたいという欲求が高まる。microATXやMini-ITXのマザーボードが出てからが本番ではないだろうか。おそらく、COMPUTEXのある6月が一つの契機になるだろう。そのころまでにはマザーボードの供給も、ラインアップも、充実してくるものと思われる。そして、メモリの相性なども、そのころまでにはマザーボード側のBIOS更新などで改善しているのではないだろうか。

 最後に、発表から発売までRyzen 7を見てきた印象として、自作PC市場に活気をもたらす極めて重要な製品であるように感じた。まず、Ryzen 7がCore i7を明確に上回ったわけではないが、がっぷり四つに組み合った格好と言える。ほぼ互角だ。

 最高性能という点では、10コア/20スレッドのCore i7-6950Xがあり、一方でコストパフォーマンスの点ではRyzen 7 1800XがライバルのCore i7-6900X(6950Xの一つ下)に対して大きすぎるアドバンテージを築いた。LGA1151のCore i7-7700Kに対してはRyzen 7 1700が引けを取らない。つまり、パフォーマンスに対するユーザーの選択肢は広がった。

 その上でRyzen 7 1700のマルチスレッド性能は、Coffee Lakeで予定されるLGA115x系CPUでの6コア化につながる。メインストリームにおけるマルチコアがさらに進むとなれば、コンシューマー向けアプリケーションでの最適化も一層加速されるだろう。やや停滞していた自作PCも、これから大きく動き出す。その意味でRyzen 7は期待の新星と言える。

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