古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

同じ垂直統合でも戦略は対照的――「FREETEL」と「TONE」が目指すもの

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2016/12/02
同じ垂直統合でも戦略は対照的――「FREETEL」と「TONE」が目指すもの: 徐々に変わりつつあるが、MVNOでは、端末とSIMカードを別々に買うのが一般的な形だ © ITmedia Mobile 提供 徐々に変わりつつあるが、MVNOでは、端末とSIMカードを別々に買うのが一般的な形だ

 スマートフォンの台頭に伴い、キャリアが端末開発に関与する度合いは、以前より減っている。ネットワークやサービスなどの仕様を決め、メーカーに対応を求めることはあるが、グローバルモデルに関しては、デザインなどの大きな変更はなく、メーカーブランドの端末がそのまま発売されることも多い。

 MVNOでは、端末とネットワークが、より切り離されているのが一般的だ。端末を取り扱っているキャリアでも、用意しているのはメーカーブランドのスマートフォンで、カスタマイズもアプリがインストールされている程度にとどめられている。小規模なMVNOの場合、端末の取り扱いがないことも多く、ユーザーは家電量販店などで別途購入する形となる。

 こうした中、あえてハードウェアからネットワークまでを一手に手掛ける異色のMVNOも登場した。その1社が、プラスワン・マーケティングのFREETEL。同社はもともと、SIMロックフリー端末を手掛けていたベンチャー企業で、その後、MVNO事業も始めてネットワークまで提供するようになった。もう1社が、トーンモバイルのTONEで、こちらはほぼ1機種、1料金プランで、分かりやすさを訴求している。

 ある意味、垂直統合的にサービスを提供するFREETELとTONEだが、戦略は対照的だ。FREETELは「フルラインアップ戦略」を掲げ、ローエンドからハイエンドまで、多数の端末を発売している。これに対し、TONEは、1モデルを「1年半ぐらいと考え、動かしてきている」(代表取締役社長、石田宏樹氏)。ハードウェアのバリエーションに重きを置くのがFREETEL、ハードウェアは器と考え、その上でのソフトウェア開発を強みにしているのがTONEといえるのかもしれない。

 両社がスタートする新たなサービスから、戦略の違いを読み解いていきたい。

●「スマートコミコミ」で他社端末の提供も開始するFREETEL

 FREETELは、10月にスタートしていた「かえホーダイ」の内容を刷新し、「スマートコミコミ」として提供を開始した。ベースとなっていたかえホーダイは、スマートフォンのアップグレードプログラムと料金プランがセットになったサービスで、最短半年で機種変更できるのが特徴だった。料金には端末代、通信料、無料通話、端末補償、データ復旧サービスが含まれており、同社の「Priori 3」で、データ容量の最も少ない「XSプラン」を選んだ場合の月額料金は1790円からと設定されていた。

 これに対し、スマートコミコミは、データ容量ごとに異なっていた無料通話を5分間の音声定額に変更したうえで、故障時にも端末を機種変更できるように改善したプランとなる。最短半年で機種変更できるというかえホーダイの特徴はそのままだが、料金プランには、使ったデータ量に応じて段階的に課金される「使った分だけ安心プラン」も選べるようになった。わずか1カ月強でパッケージの中身を変え、それに合わせて名称も変更したというわけだ。スマートコミコミは、使った分だけ安心プランを組み合わせられるようになったことで最低料金がさらに下がり、Priori 3を選んだ場合は1590円からになった。

 それ以上に大きな変化が、セットで選べる端末にある。もともとのかえホーダイではFREETELの端末のみが対象だったが、スマートコミコミでは「他社の端末も選べるようにした」(増田薫社長)。具体的にどの機種が提供されるかは正式に発表されていないが、会見では、ASUSやHuaweiの端末が紹介されており、SIMロックフリースマートフォンの主力メーカーが名を連ねたことになる。増田氏によると、かえホーダイは「FREETELの端末とSIMがセットになっていることに気づいた。そのままでいくと、縛りをつけてしまうことになり、うちのポリシーに反していることに気づいた」という。

 FREETELのビジネスモデルは「垂直統合型で、ハードと通信、アプリを1社でやっている。そこは今も変わっていないし、今後も変わらない」(増田氏)。一方でユーザーに対しては、「縛って提供したことは1回もない。楽天のSIMでも他社のSIMでも構わない」といい、あくまで端末と回線の組み合わせの決定権はユーザーに委ねている。スマートコミコミで他社端末の提供に踏み切ったのは、セットプランでもその方針を貫くためだ。

 ただ、キャリアとしてのFREETELにとって、他社製端末の提供は初になる。以前から、端末とSIMカードを自由に組み合わせることはできたが、ユーザーからは、幅広いメーカーのラインアップを持つ、他のMVNOに近づいたようにも見えるはずだ。他社端末の比率が増えると、端末と通信を密接に連携させるのも難しくなってくるはずだ。例えば、現状では「FREETEL UI 2.0」の一環として、標準の電話アプリから「FREETELでんわ」で発信できるようになる予定だが、端末が他社製となると、ここまでのカスタマイズは難しくなる。

 もっとも、FREETELの端末はもともと、サービスと密接に連携した作りにはなっていなかった。端末の一部は他のMVNOでも販売されているため、FREETELならではのサービスを入れ込みづらい側面はある。他のMVNOと同様、FREETELの端末も選択肢の1つでしかないため、差別化の材料にもしづらい。垂直的にビジネスを手掛けているが、端末とネットワーク、サービスが個別に提供されており、垂直“統合”まではされていないという見方もできそうだ。他社端末の販売を行うことで、組み合わせが増し、よりオープンな形になったともいえそうだ。

●1機種を磨き込むTONEは音声定額や子ども向けサービスを拡充

 端末を自社で開発しつつ、MVNOとしてはオープンな方向を目指すFREETELに対し、TONEは垂直統合を強く志向するMVNOだ。「端末自体を自社で作っている。それも1機種。10機種ではなく、1機種で10倍のコストをかけて作る」(石田氏)というのが、TONEの方針。ソフトウェアまで徹底的にカスタマイズしており、端末と回線はセットで提供する。他社のSIMロックフリースマートフォンの販売も「軸がぶれる」(同)という理由で行っていない。そのTONEが重視しているのが、「端末のスペックよりも顧客価値」(同)だ。

 現行の主力モデルは、2015年に発売された「TONE m15」。7月に合計28項目に及ぶ大型アップデートをかけ、その結果として「端末への満足度もアップしている」(石田氏)。ハードウェアの種類を増やすのではなく、ソフトウェアでバリエーションを出すというのがTONEの方針。子どもに持たせることを想定した機能制限や、シニア向けのシンプルなユーザーインタフェース(UI)などは、全てTONE m15の中に入れ込んでいる。発想としては、iPhone1機種で幅広い層をカバーするAppleに近い。

 多モデル展開する方向性については、「端末数を増やすと夜も眠れない資金繰りになってしまう(笑)。エグゼモード(石田氏がかつて手掛けたハードウェアベンチャー)でそれは懲りた」と否定的だ。大手キャリアと比べるとリソースが限られるMVNOが端末を増やそうとすると、SIMロックフリースマートフォンメーカーから調達せざるをえなくなる。そうなると、端末はどうしても横並びになりがちで、差別化が難しくなる。1機種に集中しているのは、大手キャリアに比べるとリソースの乏しいMVNOならではの戦略といえるだろう。

 端末から回線、サービスまで、全てを1社で手掛けることで、バラバラだと提供が難しい機能も実現している。12月のアップデートでスタートした「あんしんインターネット」はその1つだ。あんしんインターネットは、フィルタリングサービスと一体になったブラウザで、開発には1年半をかけ、「ファームウェアまで作り込んでいる」(石田氏)という。単なるアプリとして作ると、「子どもに解除されてしまうおそがある」からだ。

 あんしんインターネットは、閲覧制限機能をネットワーク側から親が設定できるだけでなく、子どもがどうしても見たいサイトがある場合は、“おねだり”することもできる。子どもから、制限解除のリクエストを受けた親が個別に判断して、そのサイトを見せるかどうかを決められるため、「ご家庭の形に合わせて運用できる」(石田氏)というわけだ。

 TONE m15に搭載されたIP電話アプリにも、端末とネットワークを垂直統合的に提供するメリットが生かされている。「IP電話の(品質を保つうえで)一番の問題がWi-Fiだった。Wi-Fiにはさまざまな環境があり、変なものをつかんでしまうと着信もできない」(石田氏)という欠点を解消するために、このアプリは、Wi-Fi接続時でも、強制的にLTEで通信を行う仕様になっている。もちろん、LTEも無線区間の混雑などはあるため、100%というわけにはいかないが、Wi-FiよりはTONE側で品質を管理しやすくなる。

 このIP電話アプリにもアップデートがかかり、月額700円(キャンペーン時は500円)で、最大10分までの通話が無料になる音声定額を開始した。「お子様とシニア層、ファミリー層が多い」(石田氏)という同社のユーザーは電話を使う頻度も高く、定額プランのニーズが高かったためだ。こうしたユーザー層が安心して使えるよう、定額が終わる30秒前の9分30秒で通知音を鳴らす機能も搭載した。

 同じ垂直統合のビジネスモデルを目指すFREETELとTONEだが、その方向性は真逆だ。オープンを志向し、他社端末の提供にも踏み切ったFREETELに対し、TONEは1機種1料金を貫き、地道にユーザーを増やす方針を変えていない。当然、どちらにも一長一短がある。FREETELの場合、端末のバリエーションが多く、幅広いユーザーを狙うことができる。ハードウェアの進化にキャッチアップしやすいのも、メリットといえるだろう。逆に、TONEほど、ネットワークレイヤーやアプリレイヤーと端末が密接に連携したサービスは、提供できていない。

 対するTONEの場合、端末、回線、アプリをバラバラで提供している以上のサービスを実現できる一方で、ハードウェアのバリエーションが限られてしまい、新機種の提供スパンも長くなるため、どうしても店頭の変化が出しづらい。代わり映えがしないと思われてしまうと、ユーザーが店頭から遠のいてしまう恐れもあり、実際、MVNOの主要ユーザーである30代、40代の男性層が手薄になっている。現時点では、どちらのビジネスモデルが正解かは見えていないが、単に料金を安くする“格安スマホ”にとどまらない異色のMVNOとして、今後の動向にも注目しておきたい。

ITmedia Mobileの関連記事

image beaconimage beaconimage beacon