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国内100GBプランが“サンキュッパ”――夢のセカイルーター「GWiFi」の現実に迫る

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/08/31 05:00
国内100GBプランが“サンキュッパ”――夢のセカイルーター「GWiFi」の現実に迫る: GWiFi 3000の実機 © ITmedia Mobile 提供 GWiFi 3000の実機

 以前、この連載でクラウドSIMを活用して世界中で使えるルーター(以下「セカイルーター」)をご紹介したことを覚えているでしょうか。

 国内で購入できるセカイルーターとして、7月21日からBroadLineのモバイルWi-Fiルーター「GWiFi G3000」(以下「G3000」)が販売されています。国内法人が一般個人もターゲットとするセカイルーターを発売するのはこれが初めてです。

 「世界約100カ国対応」をうたい、国内利用用のプランも用意しているGWiFi。実際の使い勝手はどうなのでしょうか。見ていこうと思います。

●G3000のスペックとサービスをチェック

 まずは、G3000の端末スペックをチェックします。

 端末スペックだけを見ると、「よくある平均的なモバイルWi-Fiルーター」です。しかし、G3000は物理的なSIMカードを差し替えずに、接続ネットワークを変更できる「クラウドSIM」を採用し、国内・海外向けのデータプランをそれぞれ必要に応じて購入して使えることが大きな特徴です。「端末」よりも「サービス」にこそ特色があるのです。

 そのサービスですが、冒頭に書いた通り世界約100カ国でデータ通信を使うことができます。海外でのデータ通信料金は国によって異なり、300MBプランが1日580〜980円、500MBプランが680〜1280円(共に税込)となっており、国内大手キャリアの提供する海外データローミング料金の一般的な上限金額である1日2980円(非課税)と比べると割安です。その上、使わない月は月額基本料金が発生しないため、おトクです。

 ただし、ここでいう「1日」は日本時間が基準です。そのため、日本時間の夜遅くに利用し始めると短時間でも2日分の利用料金が発生してしまい、結果的に料金が割高となることも考えられます。海外向けのデータプランを利用する際は、日本時間を意識して利用する必要があります。

 大手キャリアでも、au(KDDI・沖縄セルラー電話)の「世界データ定額」やNTTドコモの「海外1dayパケ」のように、比較的安価かつ時間計算が「利用開始時点から24時間」と分かりやすいローミングサービスが出てきました。渡航先や滞在する時間によってはGWiFiよりも大手キャリアのローミングサービスの方が安上がりというケースもあります。

 「利用開始から24時間」といったより分かりやすい料金になれば、GWiFiの海外データサービスの使い勝手は間違いなく向上するでしょう。

●「100GBが3980円」と爆安な国内プラン

 やや辛口にいえば、「世界約100か国に対応」「海外データ通信が1日580円から」という特徴だけでは、既にある他のセカイルーターと比べて「遜色」ありません。

 しかし、GWiFiには他のセカイルーターにない特色があります。日本国内でのデータ通信プランに「通信量100GB・30日間で3980円(税込)」というプランがあるのです。他の容量プランと比べると、その「おトク度」は段違いです。

 このプランを初めて見た時、筆者は「大手キャリアと比べて混雑時に速度の出にくいMVNO回線が使っているのでは?」と思い込んだのですが、GWiFiではNTTドコモまたはソフトバンクの通信回線をMVNOを経由せずに利用しているそうです。

 このため、MVNO回線で課題となる「平日昼」あるいは「平日夕方(帰宅ラッシュ時)」といったトラフィック増加のタイミングでの通信速度低下は今のところ発生しておらず、通信速度“は”快適です。

●速度は快適でも「品質」が不安

 GWiFiの通信速度は快適です。しかし通信「品質」に目を向けると、少なくない課題が見えてきます。

 まず、セカイルーター全般の大きな特徴でもある「ネットワークの自動切り替え」についてです。元来、GWiFiは「日本国内ではNTTドコモまたはソフトバンクの通信回線を切り替える」ことをウリとしていました。どちらかのネットワークの電波が弱くなったり、通信品質が悪化したりしても極端に品質を落とすことなくデータ通信が利用できる――と、されていました。

 しかし、実際にサービスを利用するとソフトバンクのネットワークにしか接続しません。ドコモのネットワークに切り替わることが全くないのです。

 この点について、筆者は「ソフトバンクのネットワークで問題ないと端末側が判断した結果である」と思っていましたが、実際にはGWiFiのシステム不具合が原因でドコモ回線への切り替えができないことが判明し、発売から約1週間が経過してからBroadLineのWebサイトで公表されました。

 8月30日現在も、つながるネットワークは「ドコモダケ」ならぬ「ソフトバンクダケ」状態となっていて、復旧のめどについても具体的な言及はされていません。ドコモとソフトバンクのネットワークを切り替えながら使えることに期待してG3000を買ったユーザーとしては、システム復旧を待つしかない状況です。

 また、BroadLineはこの障害告知と同時に、接続中の回線提供者(キャリア)によっては特定のアプリ・サービスや通信プロトコルを利用した時にデータ量規制が行われることがあることも明らかにしました≫。

 筆者が利用した限り、この制限によって致命的に使い勝手が悪いと感じることは今のところありません。しかし、G3000を購入した他のユーザからの報告によると、「YouTube」などの動画視聴サービスで通信速度が制限されることがあるようです。そのユーザーは国内で使っていることから、状況証拠的にソフトバンクに接続していると、動画視聴時に速度が制限されることがあるということになります。

 ただし、筆者の環境ではYouTubeや「Amazonビデオ」が全く視聴できなくなったり、著しく画質が悪くなったりといった現象は確認できていません。この点については、より詳しい制限の内容が明らかになることに期待したいと思います。

 さらにこの障害とは別に、8月18日午前10時頃から国内でのデータ通信が不安定になったり全く通信できなくなったりすることがある障害が発生していることが明らかになりました。この障害は当初ユーザー向けにメールで通知されましたが、後に公式サイトにも掲載されました。先の障害と同様に、8月30日現在も回復の見通しは掲載されていません。

 この障害に起因するのかどうかは分かりませんが、筆者もG3000でデータ通信が突然できなくなるトラブルが発生することがあります。その挙動はさまざまで、端末ディスプレイ上に「データ接続不可」という旨の表示が出ることもあれば、ディスプレイ上は何ら問題がなくてもデータ通信できないこともあります。

 筆者が試した限りにおいては、このトラブルは、新幹線など「高速な交通手段で移動中」という条件で発生しているようです。モバイル通信のエリアは問題ない(圏内である)のにG3000では接続が非常に不安定になる、ということがあったのです。

 接続トラブルが発生した場合、一般的な対処方法の1つとして「とりあえず端末を再起動」が思い浮かびますが、ここにも若干問題があります。G3000は電源を入れてからデータ通信ができる状態になるまで、2分程度かかるのです。データ通信が復旧するのかどうかが明確でないのに再起動することになると、案外ストレスがたまってしまうものです。

 G3000が周波数帯的に対応している「SoftBank 4G LTE(FDD-LTE)」エリアは、広がり的な意味で「WiMAX 2+」よりも高速移動に強いはずなのですが、G3000で使う限りはそうは行かないのが現状です。

 これらの問題については、今後の改善を強く願いたいところです。

●あるのに“使えない”SIMカードスロット

 サービスや品質面において、先述の問題を除けばGWiFiは十分に及第点を与えられる出来です。しかし、G3000の「あるもの」が筆者にとってショックでした。それは「SIMカードスロット」です。

 G3000はMicro SIMスロットを1つ備えています。GWiFiが全く使い物にならない、あるいは何らかの理由でサービスが終了してしまった場合に「SIMロックフリーのモバイルルーター」として使えると考え、筆者はG3000を購入しました。

 しかし、G3000のSIMスロットは実際には使えませんでした。筆者のもくろみは外れてしまったのです。

 G3000が「他社のSIMカードを挿して通信もできる」ことは、ITmedia MobileにおけるGWiFi発表時の記事でも触れられていました。

 この件について、記事執筆を担当した田中聡氏に確認したところ、発表会において「動作保証はしないものの、端末としてはSIMロックフリーとなっている」という旨の説明があったようです。

 G3000のSIMスロットについて、発売日時点のWebサイトには使えない旨が記載されていました。しかし、ショップではこの機種を「SIMロックフリールーター」として紹介しているケースがある上、筆者の記憶が確かなら、発売前の段階では「SIMスロットが動作しない」という情報は公開(明記)されていなかったように思います。

 SIMスロットが使えないという観点でもう1つ気になるのは、総務省の「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」との整合性です。

 現状ではG3000のSIMスロットが利用不可となっているため、ユーザーがデータ通信を利用する手段としては、BroadLineのデータプランを利用する以外の選択肢がありません。特定の通信事業者のSIMカードでのみ通信サービスを利用できる従来型の「SIMロック」とは異なりますが、利用者が通信事業者を自由に選べずGWiFiのクラウドSIMサービスのみ利用できる機種であるという意味で「クラウドSIMロック」ともいうべき縛りがかかっています。

 総務省の指針では「特定の通信事業者のSIMカードでのみ動作する」という意味でのSIMロックを禁じており、大手キャリアだけではなくMVNOにもこの基準が適用されます。大手キャリアや(数こそ少ないですが)MVNOのSIMロック付き端末は、この基準に従って一定条件のもとSIMロック解除が可能です。

 それに対し、G3000のように「物理SIMスロットを無効化した上で自社のクラウドSIMサービスのみ利用できる」という方式については、現状の総務省の指針に違反しないのかもしれません。しかし、当初はSIMロックフリールーターとしても利用できるという説明を販売元がしていた点や、昨今のSIMロック解除に関するルール整備と各社の対応を鑑みれば、ある意味で「ルールの穴をついた」措置ともいえます。

 そう考えると、SIMスロットが無効化されていることはいちユーザとして非常に残念です。

●まとめ:膨らむ期待と品質への不満

 過去の連載で紹介したように、筆者はこれまでに「GlocalMe」や「Skyroam」など様々なセカイルーターを使ってきました。国内法人が初めて手がける一般コンシューマー向けセカイルーターとして、G3000には発売前から大いに期待を寄せていました。一方で、同社としては初めて手がける端末とサービスであることや、当初予定の発売日が「品質改善」を理由に延期されたこともあり、品質やサービスの面である程度問題が発生することも「心づもり」していました。

 しかし、SIMスロットの利用可否に関する情報の誤りやシステムトラブルを含めて評価すると、現時点では「安心して使える」サービスとは言いきれない状況です。

 「秘めたる力は大きくも、今のところは真価が発揮できていない」のが、現時点でのGWiFi、そして対応端末のG3000です。今後のサービス品質改善に、多いに期待したいところです。

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