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国産PaaSが世界に羽ばたくための2つの要件

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/03/06
国産PaaSが世界に羽ばたくための2つの要件: 会見に臨むサイボウズの青野慶久社長 © ITmedia エンタープライズ 提供 会見に臨むサイボウズの青野慶久社長

 「GartnerのaPaaS市場における『マジック・クアドラント(MQ)』2016年版で、サイボウズは日本企業として唯一、世界のベスト16に入った。上位には名だたるグローバル企業がひしめいているが、追い付けるようにがんばっていきたい」

 サイボウズの青野慶久社長は、同社が先頃開いた事業戦略説明会でこう力を込めて語った。マジック・クアドラントはGartnerが個別の製品・サービス市場において競合するベンダーの勢力図を表したもので、業務アプリケーション開発基盤のクラウドサービスを指すaPaaS市場では、Salesforce.comとMicrosoftを2016年におけるリーダーと評価している。

 aPaaS市場のマジック・クアドラントは一般公開されていないので図示することはできないが、2016年版では16社が取り上げられ、その勢力争いでは上記の2社をIBM、SAP、Oracleなどが追いかけている構図となっている。サイボウズがその16社の一角に名を連ねたのは、同社の「kintone」がグローバル市場で存在感を示しつつあることの証しといえる。

 筆者はkintoneが登場して5年間、国産PaaSによるグローバル市場への挑戦に注目してきた。青野氏のその挑戦に向けた強い思いについては、本コラムでも2013年7月22日掲載の「国産PaaSの挑戦」および2014年2月24日掲載の「国産PaaSが挑むグローバル展開の勝負どころ」で紹介してきたが、今回の会見ではその進ちょく状況について次のような説明があった。

 まずはkintoneの話の前提として、サイボウズは既にクラウド事業がメインになってきていることを特筆しておきたい。青野氏によると、2016年3月期のクラウド事業の売上高は前期比49.2%増の40億5000万円で、全売上高80億3900万円(前期比14.6%増)のうち5割を超えた。さらに、2017年3月期にはこのクラウド比率が6割を超える見通しだ。経常利益も2016年3月期で5億8700万円(前期は3億3800万円の赤字)、2017年3月期予想でも3億3900万円としており、クラウド事業をストックビジネスとしてコントロールできつつあるようだ。同社は見事に体質転換を図ったといえる。

●チームワーク・プラットフォームに不可欠なものとは

 全売上高の半分以上を占めるようになったクラウド事業において、サイボウズが最も注力しているのがkintoneである。

 青野氏によると、kintoneの契約社数は2017年2月末時点で5500社を超え、特に2016年で1500社以上増えたという。これに伴い、kintoneの売上高も2016年12月期は前期比80%増となり、パートナー数も2016年12月時点で276社に拡大した。

 この勢いをさらに加速するため、同社ではまず国内展開としてkintoneを使った成功事例を、ユーザーイベントなどを通じて全国的に横展開していく構えだ。また、kintoneによるアプリケーション開発者向けの認定資格制度も2017年11月より本格的にスタートさせる計画だ。

 さて、本題のグローバル市場への展開については、現時点での導入企業数として、中国ではkintoneと大企業向けグループウェア「Garoon」を合わせて700社、東南アジア地域ではkintoneを中心に150社、米国ではkintoneを前面に出して100社の実績を上げている。また、2016年9月にはオーストラリアでも現地のパートナー企業とkintoneの販売会社を合弁で設立した。

 サイボウズはkintoneのグローバル展開について、2014年から米国と中国で事業拠点を設け、マーケティングおよび販売活動を行ってきたが、ここにきて着実に実績が上がってきているようだ。それが冒頭で紹介したGartnerの評価にもつながっている。

 では今後、国産PaaSであるkintoneは世界へさらに大きく羽ばたいていけるのか。筆者はその要件として、「クラウドサービスとしての仕組み」と「チームワーク・プラットフォームとしてのポテンシャル」の2点を挙げたい。

 まず、クラウドサービスとしての仕組みについては、今後のkintoneのさらなるグローバル展開に向けて、投資効率や他の有力なサービスとの連携を考えると、cybozu.comの代わりにAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft AzureなどのメガIaaSを採用した方が得策ではないか、とみられることだ。会見の質疑応答でこの点について聞いてみたところ、青野氏は次のように答えた。

 「今のところメガIaaSに乗り換える予定はない。その理由は、現状のままの方がコストメリットを得られると分析しているからだ。お客さまからの要望も特にない。ただ、状況が変化する中で、乗り換えた方がメリットが大きくなれば、考える必要がある。そうした事態も想定して社内ではメガIaaSも使用して検討材料としている」

 青野氏にとってこの要件は、遠からず判断を迫られる時が来るのではないだろうか。

 もう1つのチームワーク・プラットフォームとしてのポテンシャルとは、つまりは普及に向けた読みである。同氏はかねてkintoneを「単なるPaaSではなくチームワーク向上のためのプラットフォーム」と強調している。「チームワーク向上」は同社の企業理念でもあり、その特性が他のPaaSと異なる価値を提供できる最大の差別化ポイントとなる。

 ただ、こうしたPaaSの普及にはパートナーやユーザーとのエコシステム形成が欠かせない。その上でしっかりとビジネスモデルをつくり上げることができるかどうかが勝負どころとなる。サイボウズは今、国内でそうしたエコシステムづくりに注力しているが、グローバルで確固たる存在感を発揮するためには、有力なグローバル企業と手を組むなど、ダイナミックなアクションが必要になるかもしれない。

 これら2つの要件はあくまでも筆者の見解だが、サイボウズにはこうした点も乗り越えて、kintoneを世界に大きく羽ばたかせてもらいたい。

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