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変化を嫌う現場の“抵抗勢力”、3つの攻略法

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2016/12/18
変化を嫌う現場の“抵抗勢力”、3つの攻略法: ソフトウェア購入の目的や意義が導入担当に正確に伝わっていないとこうなってしまいます © ITmedia エンタープライズ 提供 ソフトウェア購入の目的や意義が導入担当に正確に伝わっていないとこうなってしまいます

 「ビジネスのデジタル化」「デジタルトランスフォーメーション」「デジタルディスラプション」――。読者の皆さんもUberやAirbnbの例とともにこれらの言葉を一度は聞いたことがあると思います。ここ数年で急速に広まり、「今年の10大ニュース」や「来年の10大予測」といったトピックでも必ず出てくるトレンドでしょう。

 このように「これまでの古い方法を捨てて現状を変えたい」「他社に先んじて新しいことに取り組んで競争に勝ちたい」という企業に対して、ソフトウェアの力でお手伝いすることが私の仕事です。

 決して安くはないソフトウェアとサービスを、変革のために購入(投資)いただくわけですが、いざ導入の現場に入ると、まるで“180度違う”文化に触れることもしばしばあります。今回ご紹介するのは、導入を決めたソフトウェアが、対極の考えで全く生かされずに導入に失敗するケースです。皆さんはこんな会話を見て、どう思われますか?

●失敗事例6:変化を嫌う「現場の抵抗」

購入企業の導入担当者A:……いや、この業務は報告書を紙で提出して、取引先に確認印をもらうプロセスになっているので、そのソフトウェアで電子化することはできません。

ベンダーのプロジェクト担当者B:いえ、このソフトウェアを購入いただいたのは、そういった人手による紙での受け渡しをなくすことで利便性を高め、業務効率化とコスト削減を図るのが目的なのです。見てください、こうやって取引先の確認もスマホ、タブレットでできるようになるんですよ。

A:便利なのは分かるのですが、今までのやり方を変えることになるので、お客さまへの説明も必要ですし、手間もかかってとても面倒です。それに取引先だって年配の方が多いから、今まで通り、紙とはんこの方がいいと言って反対されるに決まっています。ここは何とか紙の運用を残すことで進めたいのですが。決裁者の本部長には、やり方は現場で決めていいと言われているので、決定権は私にあります。

B:もともと想定していた効果が得られなくなりますが、それでもその方法を残しますか。

A:ええ。取引先への説明が必要となるとやむを得ないでしょう。それに、承認をスマホやタブレットで見られるようにするには、ネットワーク部門やセキュリティ部門の管轄になりますし、あそこに話をするのは面倒なので避けたいのです。そこは私の責任範囲ではないので、どうしてもやるのであれば御社でそこを説得してきてくださいよ。

B:(うーん、困ったな)……ひとまずおっしゃることは分かりました、次回の定例会で議題として挙げることにしましょう。

 当然ながら、こうした雰囲気でプロジェクトが進めば、まず失敗してしまうのですが、このやりとりの中のどこが問題なのでしょうか。

●導入プロジェクトを阻害する「問題点」

 まず、冒頭で顧客担当者側のAは、「現状のやり方があるから変えられない」というスタンスで話をしています。その理由は、自分(自部署)にとって不利益をもたらすため――この例だと、取引先に説明するのが面倒と感じているためです。

 「事なかれ主義」などと言われることもありますが、関係者と対立するような構造をできるだけ避けたいと思う気持ちは理解できます。しかし、プロセスを電子化したからといって、取引そのものがなくなる可能性は低く、その不利益は一過性である可能性が高いです。そのために、将来継続的に得られるであろう利益を失うことになりかねません。

 次に、「本部長にはやり方は現場で決めていいと言われている」点も問題です。これもよくある話で、決裁は上長がするが、現場の詳しい事情を知らないため、現場がフロントに立つというパターンです。

 権限を上から下に委譲するのは、取り組みの俊敏性や柔軟性を高めるために推奨すべきことではありますが、それはあくまで「プロジェクトの目的や意義」に沿った上での話です。企業がその取り組みを行う動機を「ビジネスドライバー」と呼びますが、それがプロジェクト担当者に正しく伝わっていない場合、当初の目的とは真逆の決定をしてしまう可能性があるのです。

 最後に「そこは私の責任範囲ではないので」というくだりも、パッケージソフトウェアの導入では大きなカベになります。日本に限った話ではありませんが、組織がサイロ化され、それぞれ縄張りを主張するように「俺のシマに手を出すな」という雰囲気がある場合、自分の手の届く範囲で物事を解決したくなるものです。

 ただ、私たちが扱うソフトウェアの仕事は、お客さまにとって、少なくとも数千万円、場合によって億単位の投資になることもしばしばで、一部門の決裁ではなく、社長または取締役会といった経営層で意思決定されるケースが多いです。

 その場合、部門を超えた会社としての投資となるため、担当者も会社全体の利益のために動くのが“筋”ではありますが、十分に権限が与えられていないため、どうしても局所的な対処を優先してしまいます。そして結局「何も変わらなかった」となってしまうのです。しかし、その根底には“変えようとしない”意志がはたらいているため、当然の結果ともいえるでしょう。

 このような失敗に陥らないためには、どうすればいいのでしょうか。

●プロジェクトを成功に導く3つのポイント

 まず、エンタープライズ向けの先進的なパッケージソフトウェアを導入することの意義を見直しましょう。何か新しい仕組みを導入することではなく、従来のやり方を変えて新しい価値を生み出すことこそが、変革につながると意識することが大切です。

 もちろんひどいツールを使っているから、マシなものに置き換えようという場合もありますが、経営に関わるような課題は、仕事のプロセス、ビジネスモデルといった、より人間、もしくは組織構造によるものが多いと感じます。それを変えようとすれば“面倒”なのは当然。事なかれ主義ではプロジェクトは進みません。

 次に、プロジェクトで“実施すること”ではなく“達成したいこと”を決裁者(スポンサー)と正しく認識合わせをしましょう。大規模なプロジェクトであればあるほど、劇的に現状を変えて達成したいことがあるはずで、現場レベルで「一部がちょっと効率化できればいいや」とはなりません。

 最後に、導入を担当するプロジェクト責任者に十分な権限を与え、経営層がそれをバックアップすることを推奨します。また「ステアリングコミッティー」といわれる、計画のトップや利害関係者の代表が一堂に会する場を定期的に設け、プロジェクトの方向性や成果を共有することも重要です。

 顧客や取引先といった、経営に直結する部分は経営層も敏感ですが、一方でバックエンドの社内システムという間接的な影響を与える要因については、そこまで重要視されずに見過ごされるケースもあるので(そこが根本的な問題だったりもするのですが)、成果に直結する指標を明示して、変わったことが定量的に評価できる枠組みが必要でしょう。

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