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契約純増数と端末販売数が対照的なドコモとKDDI――その理由は?

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2016/11/04
契約純増数と端末販売数が対照的なドコモとKDDI――その理由は?: iPhone 7の販売も、6sを上回る好調ぶりだ © ITmedia Mobile 提供 iPhone 7の販売も、6sを上回る好調ぶりだ

 ドコモとKDDIの上期決算が出そろった。ドコモは売上高が2兆2883億円で、営業利益が5856億円。前年同期比でそれぞれ3.3%、26.6%の増加となり、通期の業績予想も上方修正した。対するKDDIは、売上高が2兆3016億円で、営業利益が5326億円。前年同期比はそれぞれ約7%、18%増となり、ドコモと同様、増収増益を果たした。

 いずれも業績として好調といえるが、ドコモとKDDIでは契約者数や端末販売数は対照的で、MVNOの影響や、4月に総務省に施行されたガイドラインの影響が見え隠れする。2社の置かれた状況を、上期の決算から読み解いていきたい。

●データ通信サービスの伸びなどが貢献して増収増益に

 ドコモの好決算の要因の1つは、新料金プランのデータパックにある。吉澤和弘社長は、「カケホーダイ&パケあえるの拡大で、ARPU(1回線あたりから得られる収益の平均)の回復が継続している」と解説。ドコモ光のユーザー数も着実増え、ひかり電話などのオプションサービスへの加入も増加しており、417億円の増益に貢献。償却方法の変更や、「ずっとくりこし」の影響がなくなったことなどの特殊要因はあるものの、それを除いても増益を果たしている。

 オペレーションデータも、好調な決算を裏付けている。新料金プランであるカケホーダイ&パケあえるは、上期で3342万契約に達し、ドコモ光も前年同期比の72万契約から253万契約へと急伸している。その結果として、ドコモ光を含めたARPUは4420円になり、「カケホーダイ(新料金プラン)導入前の水準に、回復している」(吉澤氏)という。

 ドコモがカケホーダイ&パケあえるを導入したのは2014年6月で、同年第2四半期のARPUは4110円まで落ち込んだが、その1年前のARPUは4440円だった。ARPUが落ち込んだ原因は、ドコモの予想を上回る早さで新料金プランへの移行が進んでしまったため。通話料のARPUが下がっただけでなく、最も安価なデータSパック(2GB)を選ぶユーザーが多かったことで、業績不振を招いてしてしまった。その後、5GBのデータMパックを推進することで徐々にARPUが回復。2016年第2四半期で、ようやく4420円に戻ったという経緯がある。

 今後は、9月に導入したウルトラデータパックの影響も、プラスに働く可能性がありそうだ。吉澤氏によると、今は「5GBのプランに入っていて、1GBを1回、2回追加している方にとっては、同じかそれ以下の金額で(20GB分のデータを)使える。そういったところから入られる方の割合がちょっと大きい」と話し、業績に対してマイナスに働きそうだが、その割合も徐々に変わっていくと見ている。「ガマンしながらそこまで使っていない方が入られるようになると、ドコモのARPUが上がることになる」(同)。

 こうした結果を受け、ドコモは通期の業績予想を上方修正した。もともとは9100億円だった営業利益予想を9400億円に、6400億円を6550億円に上乗せしている。一方で、こうした高収益を還元し、「ケータイの料金については満足の向上にこれまでも務めてきた」(吉澤氏)。決算説明会では、新たに子育て世代への応援を銘打った、「ドコモ 子育て応援プログラム」や、既存回線に500円追加するだけとなるキッズケータイ向け料金プランも追加施策として発表した。

 対するKDDIも業績は好調で、「今期の目標に向けて順調な進捗」(田中孝司社長)となった。KDDIは「モバイル通信収入と通信以外のトータルを最大化するオペレーションをしている」(同)といい、ARPA(1アカウントあたりの平均収入)は6340円に拡大。通信ARPAは5840円なのに対し、上位レイヤーや決済サービスからの収益を含む付加価値ARPAは500円と、増加を続けている。

 1アカウントの指標を重視しているため、ユーザーが利用するデバイス数も重要になるが、こちらは1.425となり「まあまあ順調」(田中氏)。ARPAの伸びについては、「進捗が高いこともあって、それほど心配していない」(同)という。拡大しているのは「非通信分野」(同)。決済プラットフォームやau WALLETといった基盤を構築した上で、生保、損保、住宅ローン、物販などのサービスを展開。その経済圏は「上期が終わった段階で(流通総額が)5560億円ぐらいまで来ている」(同)という。

●MVNOへの流出が続き、端末販売数もガイドラインで減少

 ただし、この数字をもってしても、順風満帆といえないのが今のKDDIの悩みだ。ARPAについては継続的に伸びているが、「そこに掛け算する(ことで収益が求められる)契約者数については、MVNOへの流出が起こっていて、現実的にはマイナス傾向」(田中氏)だ。KDDIの純増数は、第2四半期でちょうど10万。第1四半期の22万1000よりも、さらに成長が鈍化している。純増数には、UQ mobileやmineoなど、auのネットワークを使うMVNOの増分が含まれていることを考えると、田中氏が言うようにマイナス傾向が鮮明になってきたと見ていいだろう。

 田中氏は「何とか顧客満足度を高め、auに残っていただきたいと思っている」と言うが、対策がどこまで功を奏するかは未知数だ。さらに、端末販売数も「当初の想定通りになっていない」(同)として、前年同期比でもマイナス傾向になっている。実数を見てみると分かるが、KDDIの端末販売台数は第2四半期で208万台。前年度は230万台だったことから、差し引きで22万台の減少。第1四半期も同様で、193万台と前年同期比で12万台減っている。

 背景には、総務省のガイドラインがある。4月施行されたガイドラインで、実質0円(以下)での端末販売が禁止され、ユーザーの買い控えが起こってしまった。これを打開するためには、「魅力的な端末やサービスを増やすしかない」(田中氏)というが、決定打になるような端末が出せていないのが現状だ。秋冬モデルに関しては、「Xperia XZ」や「isai Beat」を発表しており、追加モデルも用意しているものの、「こぢんまりとした発表会になる」(同)見通し。目玉として用意していた「Galaxy Note7」が海外で発火したことを受け、ドコモに続き、KDDIも販売を見送ったようだ。

 契約者数が伸び悩み、端末も売れないとなると、収益への影響がボディーブローのように出てくる。既存ユーザーがいる上に、ARPAも上がっているため、すぐに減収減益という事態にはならないが、予断を許さない状況だ。MVNOの台頭や端末販売数の減少に対して、早急な対策が求められるようになりそうだ。

 一方で、傘下のUQコミュニケーションズによるMVNOのUQ mobileが急速にユーザーを増やしており、秋冬モデルとして端末のラインアップも強化。リアルなタッチポイントも増やし、テレビCMの放映も開始した。MVNOはドコモのネットワークを使う会社がほとんどで、KDDIが何も手を打たないとユーザーが流出するだけになってしまう。最低限、自社のネットワークを使ったサブブランド的なMVNOに移ってもらうことで、ARPAは下げつつも、契約者数は維持するというのがKDDIの方針となる。

 MVNOの影響に関しては、ドコモにも出ている。吉澤氏も「ガイドライン施行後に、Y!mobileやMVNOに対するポートアウトの影響がある」と認める。ただしドコモの場合、自社のネットワークを利用するMVNOが多いため、純増数にはむしろプラスの影響が出ている。数字で見ると、第2四半期の純増数が133万、第1四半期も65万と高水準でユーザーが増えていることが分かる。

 ユーザーがMVNOに移っても、MVNOがドコモに支払う「接続料」という形で間接的に収入を得られるため、KDDIよりはその影響も少ない。結果として、サブブランドのMVNOを作ることは「考えていない」(吉澤氏)という。とはいえ、流出が続けば、収益性が下がるのはドコモも同じだ。そのため、「いろいろなお客さまがいるため、それに合ったものを出していく」(同)という対策を取る。端末に関しては「フラグシップがあり、ミドルがあり、ローがある。場合によっては、料金も考える」(同)として、バリエーションを広げていく方針だ。

 ドコモは、冬春モデルとして、一括648円のミッドレンジ端末「MONO」を発表。LTEを搭載したAndroidベースのフィーチャーフォンも3機種ラインアップしており、発表会では「MORE variety」をテーマに掲げていた。LTE対応フィーチャーフォン向けに、カケホーダイライトの料金も改定している。こうした製品やサービスを通じて、間接的にMVNOへの流出を減らしていくというのがドコモの戦略といえるだろう。

●ガイドラインの影響が相対的に少ないドコモ

 また、ドコモは総務省のガイドラインから受けた影響が、他の2社に比べ、相対的に小さくなっている。吉澤氏も「第1四半期は計画に対して少し販売数が落ちたと思っていたが、第2四半期になってからは、ほとんど計画通り。その意味で(ガイドラインの影響は)あまりない」と述べていた。数値を見ても分かる通り、ドコモの端末販売台数は、第2四半期で728万5000万台となり、前年同期の627万6000台をむしろ大きく上回っている。第1四半期も、販売台数は616万5000台で、前四半期の576万6000台より増加した。

 ガイドラインは過剰な値引きを禁止したものだが、そのターゲットは主にMNPだ。もともとドコモはMNPでは防戦を強いられており、2015年あたりからようやく反転の兆しが見えてきたところ。そのため、MNPが沈静化しても、他の2社より端末販売に大きな影響が出づらい。ユーザー数もすでに7000万を超えているため、機種変更需要だけでもかなりのボリュームが見込める。吉澤氏が「ものすごい影響を与えることはない」と語っていたのは、そのためだ。FeliCaや防水、防塵(じん)に対応したiPhone 7、7 Plusも販売に貢献し、「入荷が潤沢になり、今では6sを7が超えている」状況だという。

 とはいえ、契約者数を見ると、ドコモの7294万3000に対し、KDDIは3857万5000と、2倍までの差はついていない。一方で、端末販売台数に関しては、ドコモが627万6000に対し、KDDIが208万と、3倍近い開きがある。ガイドラインの影響だけでは、この差を説明するのは難しい。ドコモが培ってきたショップ網やスタッフなどの販売力も、ここにきて功を奏した可能性もある。価格だけに頼らない売り方ができているということだ。

 結果として、総務省のガイドラインは、ドコモが他社と競争する上での、追い風にもなっている。吉澤氏が「『(実質)1万円だからいいんだろ』というのは、本来の趣旨からするとちょっと違う。(略)土曜、日曜などの休みのときに購入を条件としない奨励金が出たり、上位のデータパックを契約すると奨励金が出たり、そういうことをやって端末を安くするのがまかり通るような抜け道はなくした方がいい」と運用の厳格化を求めているのは、そのためだ。ドコモとしては、「すぐに2万円、3万円、4万円にはならないと思うが、そういった動きはしていきたい」(同)といい、徐々に端末の価格は上げていく方針も示している。

 決算ではドコモとKDDIのどちらも増収増益だが、置かれている環境は対照的になりつつある。その意味では、MVNOの台頭や総務省のガイドラインが、キャリア3社の競争環境を大きく変えつつあるといえるのかもしれない。

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