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姫乃たま、DARTHREIDERにラップのイロハ教わる「気持ちいいリズムを見つけるのが最初の作業」

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/10/20 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 「音楽のプロフェッショナルに聞く」第2回目は、大流行中のラップについて学んでいきます。  ほんの少し前まで独特な手の形とともに「ヨーチェケラッチョ!」と真似され、時には五七五の俳句とも混同されていたラップがいま、フリースタイルバトルの復興によって、世間からのイメージに変化を起こしています。  楽器を楽譜も持たず体ひとつで戦う姿は、小学生から社会人まで憧れの的ですが、一体ラップってどうやったらできるのでしょう。そもそもラップって何……? ヒップホップのこと?  今回は、そんな基本的なことにも優しく答えてくれて、踏み込んだことでも上手に説明してくれる超論理的なラッパー、DARTHREIDERさんを先生にお迎えしました。最近ではReiWordup名義で、ファンクバンドTHE BASSONSのボーカルとしても活躍中の彼によるファンキーな講義、始まります。(姫乃たま) (関連:“サイファー”なぜ全国的ムーブメントに? 現役ラッパーに訊く、発祥の経緯と面白さ) ■Intro――世の中のことをリズムに乗せて言うのがラップです! 姫乃たま(以下、姫乃):ダースさーん、私達のラジオ番組(InterFMで放送されていた『FUNKY HOT GATE』)も終わっちゃいましたが、いま初めて私の連載に打ち切りの連絡が……。予定より長く続いたとはいえ落ち込みます……。 DARTHREIDER:落ち込むことないよ。僕なんかこの間J-WAVEの番組で、いとうせいこうさんと対談したんだけど、テレビより字幕が出ないラジオのほうがラップの内容を聞き取る練習になるっていう話になって、せいこうさんがフリースタイルバトルのラジオ番組をダースがやりなよって言ってくれてさ、ディレクターさんとかもいいねいいねって盛り上がって番組内で企画が通ったのね。それで実際に出演オファーが届いたから承諾したんだけど、後日、「上層部がDARTHREIDERは年取りすぎてるって言ってる」って理由で断わられたんだよ。 姫乃:えっ、せいこうさんが番組内で推してくれた音声も放送されてるのに!? DARTHREIDER:そう。まあ、そういうこともあるから元気出しなよ。それでさ、今回のことをラップにしてネットにあげようと思ってて、まだラップは入ってないんだけどトラック作ったから聞く? 姫乃:聞きます、聞きます! わー、せいこうさんとのラジオ音声が入ってる! 格好良いですね。というか、すっごいラッパーみたいなことしてる!(失礼) DARTHREIDER:ファンクバンドやっててもラッパーはラッパーだからね! というわけで、世の中のことをリズムに乗せて言うのがラップです。今日の授業、終わり! 姫乃:わー、待って待って。 DARTHREIDER:わははは。時事ネタを音楽にして公開することに関しては、バンドだと手間も時間もかかっちゃうんだけど、ラップはインストのビートさえ用意すれば曲になるから、すごく手軽だし速報性があるんだよね。アメリカの若いラッパーなんかは、自分に起きた出来事をラップしてすぐネットにあげたりしてる。ラップは言葉が多いから、情報量も多くできるし、言葉もダイレクトに伝えることができる。フリースタイルっていうのは、その場の状況をラップするんだけど、これも歌でやろうとすると実は難しくて、そういうラップの特性が活かされてる文化なんだよね。 ■1Verse――ラッパー入門~DARTHREIDERの場合~ 姫乃:ダースさんは、どうしてラップをやろうと思ったんですか? あっ、そうか! さんぴんキャンプ直撃世代ですもんね。 DARTHREIDER:そうそう、1996年7月7日に日比谷野外音楽堂で開催されて、日本でラップとヒップホップを追求していたラッパーが大集結してさ。まだラップは日本語と英語どちらでやるのが正しいのか論争になっていたり、ニューヨークのラップ文化を継いだアンダーグラウンドの尖ってるラップはラジオ局から音楽じゃないから流せないって言われたり、一方でEAST END×YURIが「DA・YO・NE」で紅白に出場したりして、日本でのラップの印象とか立ち位置が定まってなかった時期なんだよね。主催者のECDさんが「J-RAPは僕が殺した!」って、自分達がやっている音楽に対する世間からの呼称に対抗する一幕もあって。 姫乃:やっぱりダースさんも、そこですごく影響されたわけですね。 DARTHREIDER:あ、僕行ってないの。 姫乃:えっ DARTHREIDER:朝起きたら雨だったから、会場も野外だったし、やってないと思って行かなかったの。次の日、みんなその話で持ちきりでさ……。 姫乃:ええ……。ラップ自体は音源で聞いてたんですか? DARTHREIDER:予備校に、医者の息子で全然医大に受かる気なくて三浪してたこうじ君っていうのがいて、その人が自習室でラジカセ担いで音楽流したり、ラップしてるの聞いてた。 姫乃:それでどうして自分もラップをやろうと思ったんですか? DARTHREIDER:もともと音楽は好きでよく聴いてたんだけど、ギターはできないし、ピアノも弾けないし、ボーカルってガラでもないし、自分でやることは諦めてて、僕は聞く側だって思ってた。でも、こうじ君見てたら、あれ、なんか楽譜もいらないしできそうと思って。 姫乃:ラップってどうやって始めるんですか? DARTHREIDER:ラップのCD借りてきて、どうやってやってんだろーって思いながら、家で歌詞カード見たり、自分でも歌詞書いたりしてた。当時は録音する機材がなかったから、ポケベルの留守番電話機能に自分のラップを吹き込んで、友達に聞かせるっていうのをやってた。19歳くらいかな。あ、ポケベルって何って話だよね。そこに電話をすると留守番電話が40秒とれるのよ。 姫乃:ポケベル……! 初めてライブに出演したのは、何がきっかけだったんですか? DARTHREIDER:東大受験したんだけど、合格発表の日の夜に高円寺のドルフィンってところでこうじ君のイベントがあって、もし受かってたら1曲歌いに来いよって言われてたから本当に行って、ラップしたらめっちゃくちゃ面白くて。そっからもう大学のレクリエーションとか全部飛ばして、毎日クラブに行く日々。 姫乃:せっかく東大入ったのに! DARTHREIDER:一回だけ東大生目当てのOLさん達と合コンやって、自己紹介で音楽やってますって言ったら、将来はどうするのって聞かれたから、音楽で生活していこうと思ってますって答えたら、「どうしてそんな茨の道を!?」って叫ばれて、即圏外になって誰も話し掛けてくれなくなった。僕の数少ない合コン体験……。 姫乃:うう、何回聞いても泣ける話……。デビューライブから次のライブってどうやって繋げていくんですか? DARTHREIDER:オープンマイク(お客さんの飛び入り参加)があるクラブを調べて、一人で行ってたなあ。東大にはラップ好きな仲間はいなかったから、クラブで声かけて知り合い作ったり、時々殴られたり。 姫乃:なぜラップではなく手が出るのか……。 DARTHREIDER:元はといえば、ギャング同士の抗争から暴力をなくすためにラップで戦うようになったのにね……。まあ、僕は基本的にやられ役だから関係ないんだけどさ。でもクラブで仲良くなった人を自宅に呼んでラップして、一緒に曲作って、MICADELICってグループを作ったりもできたし。絵を描く奴とか、スケボーやってる奴もいたなあ。 姫乃:非常に青春っぽくて素敵ですね。 DARTHREIDER:みんなお金ないから、クラブのチケット代払えなくて、「出演者になれば払わなくていいじゃん!」って、5分しか出番ないのに15人で押しかけて舞台でラップしたら、途中で止められました。池袋bedのじょも君、あの時は呼んでくれたのにごめん! 姫乃:なるほど、今日東大を中退した理由がわかった気がします。 DARTHREIDER:学生課で、「(卒業するのは)物理的に無理」って言われて、すいませんでしたって感じ。本郷のキャンパス遠かったんだよ……。言い方悪いけど、父親が死んじゃって怒る人もいないと思ってフェードアウトしちゃったんだよね。大学3年生の時にちょうどP-VINEからCDも出てたから、プロはプロだ……ま、いけるだろと思って。その後またすぐに新譜も出したし、エイベックスからも出せたし、ビクターに移籍して、給料もちょっともらえてたしね。 姫乃:ダースさんってもちろんラッパーとしての経歴もすごいんですけど、運営側として活動しているのも特徴的ですよね。 DARTHREIDER:<Da.Me.Records>ってインディーズレーベルを立ち上げたんだけど、アーティスト自身がレーベルを運営するのってあの頃なかったから、多分初めてだったと思う。ビクターでコンピレーションCDのディレクター仕事を少しだけやってたんだけど、あれこれ人が挟まってるからお金かかるだけで、これ自分でもできるなと思って、自分たちで作った音源の流通まで始めたのがきっかけ。無名だから安価にしたのが当たって、リリースする度にチャートインしてたんだけど、だんだん規模が大きくなってきた頃に脳梗塞で倒れちゃって、本格的に手が回らなくなっちゃった。またひとりで好きな音楽でもやるかと思ってたら、漢(鎖グループ代表)から一緒に会社やろうって誘われて、今って感じです。 ■Hook――ラップ入門 姫乃:ラップを始める前に、ラップとは何かを改めて整理したいですー。 DARTHREIDER:ラップは言葉をリズミカルに演奏する歌唱法です。リズミカルにするために言葉にアクセントをつけたいから、ラップでは韻を踏むんだね。正解はないから、自分にとって気持ちいいリズムを見つけるのがラップを始める最初の作業だと思います。ゆっくりがいい人も、早くやるほうがいい人もいる。言葉も自分が発して気持ちいいものを探す。最初に話したけど、ラップは情報量が多いからダイレクトに伝えたいことがたくさんあるなら便利だけど、言外に匂わせたいならベラベララップしないほうがいい。それは歌の技法として何を選ぶかの問題だから。それから、ラップはヒップホップ文化から生まれたけど、ラップ自体は歌の技法だからヒップホップに限らずどんなジャンルの音楽に乗せてもいいんです。 姫乃:リリックの内容はどうやって決めて、どうやって書き進めるんですか? DARTHREIDER:ラップってやんなきゃいけないものではないから自分の考え……あ、アイドルとかはやんなきゃいけないこともありそうだねー。たとえば恋愛っていうテーマを与えられたらそのテーマに沿った単語をまず書き出す。ZEEBRAの「Perfect Queen」って曲は、最後が<愛してるぜ 結婚しよう>なんだけど、これが最初に思いついたら、ここまでどうやって持っていくかっていう考え方もある。僕もそうなんだけど、単語を書き出しつつ、頭から書いていく人もいるよ。「出会いは喫茶店で~」って書いて、うーん、喫茶店だったらなんだろう。「この出会いは一過性ではなく~」とかストーリーを作ることができる。漫画とか映画の台詞はメモってるよ。 姫乃:作詞と同じ感じなんですね。 DARTHREIDER:昔、杉作J太郎さんがL.L.COOL J太郎っていう名前でラップをした時は、先に書いてきてもらった歌詞を、僕が韻を踏めるように組み替えた。一回普通に文章を書いてから、ラップ用に直すっていうのもできるね。 姫乃:リリックができてから、ラップができるようになるためには、どうしたら……。 DARTHREIDER:リズムと同じくらい、ボキャブラリーを増やすことも大事。ボキャブラリーがないと手詰まりになっちゃうから。「あ」で音を揃えようと思った時に、これとこれがあるなってざっと出てくるのがいい。広辞苑を片っ端から覚えますっていうのもいいと思う。ニューヨークのラッパーでも、辞書引きながらラップしてる人いるし。ボキャブラリーは生活の中でも培えるから、育ちが下町だったらそこの言葉でやるのもいいと思う。基本的には自分にとって一番気持ちいいリズムって、普段喋ってる時のリズムなんだよね。とりあえずそれがとっかかりかな。 姫乃:ダースさんは英語だと特に際限なく単語が出てきますよね? DARTHREIDER:英語は韻踏みやすいからねー。語尾で踏めるから、アクション、リアクション、センセーション……と無限に出てくる。韻を踏むことに適した言語。日本語とか韓国語っていうのは、また一工夫必要なんだけど、そこも楽しみのひとつだね。 姫乃:ラップの練習ってするんですか? DARTHREIDER:するするする。一番練習してた時期は、目に入ったもので韻を踏むっていうのをやってた。 姫乃;そういえば以前、ビートがない状態で練習するとできた気になっちゃうって話していた気が。 DARTHREIDER:音がないと好きなタイミングでやっちゃうから、音と合わせた方が、言葉が足りなかったり、多すぎたりするのに気づく。こんなところに間があるのか、とか。あと速い速度でやるとうまくなった気になる。まあ、できた気になるのは大事だよ(笑)。 姫乃:練習しているうちに、自分らしいラップのスタイルが見つかるものなんでしょうか。 DARTHREIDER:うーん、そうだね。でも芸事はなんでも真似が大事だから、まず上手なラップを真似するのは大事かも。息を吸うタイミングとか、強く発音する箇所がわかるから。格好良いなって思うのは、自分のセンスに合う何かがあるってことだから、真似したうえで、自分に置き換えるといいね。最初はそのままになっちゃうかもしれないけど、自分なりに翻訳していくうちに自分のものになっていく。この人はここで息してるけど、自分は無理だなって気づくしね。 姫乃:ダースさんっていつラップ作ってるんですか? DARTHREIDER:なんだろうねー。でもラップはすぐできちゃうからなあ。 姫乃:すぐできるかなあ。 DARTHREIDER:そこに山があるからじゃないけど、ラップで表現したいからね。向いてるからやるとか、向いてないからやらないとか、それより前にやりたいって気持ちがあると思う。 ■Outro――フリースタイルバトル入門 姫乃:しかしフリースタイル流行ってますねえ! 最近、居酒屋とかで隣の席のお兄ちゃん達がラップ始めたりしますもん。 DARTHREIDER:最近は10代の子も本当に上手いよ! 中学生もやるし、それ見て小学生もやるしね。「フリースタイルダンジョン」が始まってからは、会社員もラップするし、すごいよね。 姫乃:えー、それでフリースタイルというのはーー。 DARTHREIDER:即興演奏なんだけど、本当にその場で言葉を出す人もいるし、もともと自分が持っているフレーズを出す人もいる。その場で言葉を出すことをトップオブザヘッドって言うんだけど、自分が持っている得意な歌い回しをその場の音楽に合わせて演奏するのがフリースタイルラップ。みんなで輪っかになって、ラップを回していくっていう文化が2000年代にハチ公の前で始まって、誰でもラップできるようになったね。 姫乃:しかし、誰でもといっても、フリースタイルバトルってまったくできる気がしないですよ……。 DARTHREIDER:ほらでも、たまちゃんも今喋ってるじゃん。僕が言ったことに対して、その場で言うことを決めてるわけだから、あとはそれを外に出す時に音を合わせればできるよ。それはトレーニングが必要だけど、でも頭の回転って自分でも思ってるより速いと思う。言われたことにすぐ応えられるしね! 小学生でもラップができるのは意識の問題で、特別な人じゃないとできないことではないよ。足の速い人と遅い人がいるように、得意な人とそうじゃない人がいると思うから、すごいラップがしたいなら練習は必要だけど、ただラップをするだけならば誰でもできる。 姫乃:ふむー、そっか。自分らしい言葉を使ったほうがいいって言ってたし、ラップって思ったより生活の延長線上にあるんですね。 DARTHREIDER:いまは「三枚おろし」って言葉が流行ってるんだけど、普段から三枚おろししてる人ならいいんだけど(笑)。お前してないだろう! っていう奴が言うからリアルじゃなくなっちゃうんだよね。流行りの言葉を使ってるのは、まだ真似の段階。この言葉を自分に置き換えたら何だろうって考えたほうがいい。「お前のささくれ剥いてやる!」とかさ、わかんないけどさ(笑)。

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