古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

子どもとシニアでナンバー1を目指すトーンモバイル 石田社長「iPhoneの市場も狙う」

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/08/21
子どもとシニアでナンバー1を目指すトーンモバイル 石田社長「iPhoneの市場も狙う」: トーンモバイルの石田宏樹社長 © ITmedia Mobile 提供 トーンモバイルの石田宏樹社長

 フリービットモバイルから体制が変わり、2015年に、CCCグループの一員となったトーンモバイル。同社の運営するTONEは、そこから徐々にターゲットを絞り始め、現在の主なユーザーは子どもとシニア世代となる。1機種、1プランという原則を貫き、シンプルさを売りにする。垂直統合的なビジネスモデルも同社の特徴で、ネットワークやサービスの提供にとどまらず、端末の開発まで手掛けている。

 そのトーンモバイルが新たに送り出すのが、雑誌「VERY」と共同で開発した「TONE m17」だ。このモデルは、製造を富士通が担当。耐衝撃性を備え、ハンドソープで洗えるなどの特徴を備える。一見すると、富士通のスマートフォン「arrows」に近いが、ハード、ソフトともにトーンモバイルの仕様が盛り込まれており、位置情報に基づき、端末にロックをかける「ジオロック」などに対応。親が安心して子どもに持たせられるスマートフォンに仕上がっている。

 サービス面でもVERYとの共同開発を進め、「親子の約束」を展開。これは、専用の用紙に書き出したアプリの制限事項などを端末側に反映させる仕組みで、スマートフォンやIT機器に疎い親が簡単に設定できることを目指したものだ。このように、子どもやシニアに特化したスマートフォンやサービスを展開するトーンモバイルだが、勝算はどこにあるのか。同社で代表取締役社長を務める石田宏樹氏に、話を聞いた。

●子どもにターゲットを絞った理由

―― まず、ターゲットを子どもに絞った理由を教えてください。フリービットモバイル時代は、もう少し広いユーザーを対象にしていたと思います。

石田氏 使っている技術はAIやオーバーレイの技術で、昔から変わっていません。その方向性を、安心・安全に寄せたというのが、一番の特徴です。フリービットも中期計画で、モバイル革命、生活革命、生産革命という順で考えていました。そこに、CCCと組み、TONEができることで、データを取れるようになった。TONEの場合は子どものデータが取れるということです。その部分を使えば、もっと安心・安全を打ち出していけます。いったんその部分(技術やデータ)を、初めてコンピュータに触れるお子さんと、まだ触れていないシニアに広げていくという戦略です。もともとフリービットも、インターネットを広げて、社会に貢献するというのが理念でしたから、そこは変わっていません。

―― スマートフォンをまだ持っていない層は、いわゆる格安スマホよりもビジネスとして成立させやすいという事情もあるのでしょうか。

石田氏 マーケティング要素としてはありますね。お子さんやシニアの方々に使っていただくスマホは手間がかかるもので、他の皆さんは最後に残しています。ここを最初から取りにいくのは、マーケティングの観点から言っても、理にかなっています。

―― 一方で、それだけでは広がりもありません。次も考えているということでしょうか。

石田氏 子どもでナンバー1を取り、シニアでナンバー1を取り、その次にiPhoneの2台目を取り、最後にiPhoneを狙っていくという戦略です。ただ、ブランドやマーケティング戦略だけでは、その市場は作れません。実力が伴い、満足度が高まった状態で、それをベースに次の新しい市場を作っていく。真ん中の市場はiPhoneということになりますが、今はiPhoneを使っている方、使っていない方のどちらを対象にするのか、両にらみで戦略を考えているところです。

 TONEになって(CCCの)増田と決めたときも、子どもを検討するグループとシニアを検討するグループが、パラレルで動いていました。今回は子ども向けのものが出てきたので、今度は次ということで、タイミングを見ながらやっています。

 中国のODMとやると一番難しいのが、端末とOSの作り込みです。端末も最新のCPU、最新のOSを使ったとしても、想定パフォーマンスの40%程度しか出ません。その辺のところは富士通さんに勉強させていただきながらやっている感じですが、同時に3機種ぐらい(の開発を)動かしています。

●キャリアとはかけているリソースが違う

―― ただ、子ども向けやシニア向けは大手キャリアの領域でもあります。こことの競合は、どうお考えでしょうか。

石田氏 比較軸があるのは逆にいいことで、かけているリソースが違います。あまり好きではありませんが、スペック勝負をしても勝てる。やはり、こういったサービスは、ハードウェアとソフトウェアを1人のアーキテクトが考えないとバランスが取れません。それぞれが持ち寄ったものを組みわせただけだと、ああ(大手キャリアのように)なってしまい、サービスになりません。

―― 子ども向けといっても、TONE m17自体は広い層が使える端末だと思います。この端末は、シニアにも広げていくのでしょうか。

石田氏 子ども向けというのはVERYさんとの発表でキャッチ―でしたが、9月には「TONE m17×シニア」という発表も予定しています。最終的に(製造が)富士通さんになったのも、ハイブリッド(でシニアと子どもの両方)を狙えるからです。

 子ども向けは(富士通なしでも)作れるかもしれませんが、シニアはワンセグなど、ニーズがまったく違うところにあります。電波の取り回しの問題があり、ワンセグ対応の機種は世界的に作っているところが少なく、チップも大量にはありません。狙ったところを作り込むのが難しいという事情もありました。

―― TONE m15のときも、Band 21(1500MHz帯)に対応するなど、電波にはチャレンジしている印象があります。

石田氏 3GからLTEになったときは、スクラップ&ビルドしているのでかなり苦労しました。電波とGPSについては、常に苦労しています。チップは対応していても、アンテナの取り回しで(利得が)取れないということはよくありますから。

―― そのお話だけを聞いていると、完全にメーカーの人のようです(笑)。

石田氏 もともと(フリービットには)メーカー機能があり、そこでODMの使い方や、QA(品質保証)のノウハウを身に着けました。10万台規模で激安の商品をやったりしていましたから(笑)。

―― そこまで垂直統合でサービスを提供できるMVNOは少ないと思います。

石田氏 これをやらないと、ここまでのコントロールができません。それに、日本のお客さまは3大キャリアのサービスやサポートに慣れていて、スマホまで含めたサポートを求められます。スマホメーカーは自らOSをアップデートしたり、ソフトウェアを変えたりするので、どこかで不具合が起こっても(MVNOを含むキャリアには)分かりません。全責任を持つのであれば、やはり自社で開発までしていかなければなりません。

●IP電話の遅延も改善

―― 端末の開発という意味だと、今回はベースモデルのarrowsと似ている部分があります。どの部分をカスタマイズしているのか、あらためて教えてください。カラーはホワイトだけですが、これも何か理由があるのでしょうか。

石田氏 今回、ダメージレス構造以外はほとんど同じですが、ソフトウェアは全く違います。基本シャシーは同じ構造ですが、裏面を強くするために、塗装面だけを見ても、普通のものより10倍ぐらい強度を高くしています。これはVERYさんのニーズですが、割れないためというよりも、子どもがいろいろなものとスマホを一緒に入れてしまって、傷がつかないようにするためです。

 スマホ(のハードそのもの)で差別化できなくなるのは分かっているので、白い色を選んでいるのはできるだけ存在感をなくすためです。TONEのロゴも薄くしています。もう1つの理由は、色ムラなどの不良が見分けやすい。この2つの特徴があるため、白を選んでいます。

―― ドライバーなど、ミドルウェア部分まで手を入れているとうかがいました。この点を詳しくお聞かせください。

石田氏 もともとAndroid OSがサポートしていてもハードウェアメーカーが使わない部分もありますし、TONEではミドルウェアやドライバーまで手を入れています。例えば、IP電話の遅延に関してですが、AndroidはOS標準だと端末内部の遅延がものすごく大きい。この点はiPhoneがずば抜けています。iPhoneは6msから8msぐらいですが、Androidだと下手をすると80msや90msの遅延が発生してしまいます。同じIP電話アプリを動かすのでも、iPhoneとAndroidではここまで違いがある。そこに手を入れて、われわれはほとんどiPhoneと同じぐらいになるようにしています。その結果かもしれませんが、090の番号(音声通話のオプション)を選ぶ人は3割ぐらいしかいません。

―― 子ども用だとMNPで移るわけではないので、090のような電話番号がいらないという事情もありそうですね。

石田氏 子どもだけでなく、シニアもその形でいいようです。今はLINEもあるので、MNPで移らなくてもいいという方は出てきています。

―― IP電話に関しては、IPアドレスも別に振られるとうかがいました。

石田氏 交換機の中で、別のIPアドレスに分けています。これはわれわれの特許技術ですが、TCPのスタック自体をアプリが持っていて、Android OS側から見ると単なるアプリですが、インターネット側から見るとIPv6のアドレスを持っている形になります。完全に(通常の通信とは)別の系統になっていて、そこだけ、別の帯域を通しています。IP電話の難しいところはリーチャビリティ(到達性)ですが、いろいろな環境で着信させるのが難しい。そういうところを、この技術で解決しています。

 他にも、メモリの都合でアプリが殺されてしまうことがあります。Androidは7.1だとデータセーバーが付き、バッググラウンドでの動作を禁止できますが、TONEのアプリはそこからも外してあります。こういったところで動作に影響が出るので、OSレベルで手を入れているのです。

●速度制限を外しても問題なしと判断

―― TONE m17の発売と同時に通信速度に対する制限を外しました。これはなぜでしょうか。

石田氏 AIチームがトラフィックを分析していて、17次元ぐらいの情報で予測をしています。退会される方のトラフィックの使い方や、コールセンターに電話する人が最終的にどういったアクションをするのかなど、そういうところを経験則からAIでの予測に切り替えました。そのAIでの分析結果によると、(速度制限を)外しても継続できるということが見えてきたので、このような形にしました。

 (他社では)カウントフリーなどのサービスもありますが、TONEは動画とアプリのダウンロード以外は、完全にフリー(定額)です。その2つだけはチケットを買っていただく形ですが、これは料金の対称性を守らなければならないからです。MVNEをやっていたときや固定をやっていたときもそうですが、ひどいときは1%の人が全体の42%のトラフィックを占有してしまっていたことがあります。ただ、われわれは同じ100円なら100円のサービスをしなければいけない。現在だと動画をいっぱい見たり、アプリをダウンロードしたりするぐらいでしか差が出ないので、そこだけを切り出してチケット制にしました。

―― 速度制限を外したことで、今まで以上に使い過ぎる人が出てくるということはないのでしょうか。

石田氏 TONEの端末でやっているので、そこはコントローラブルです。確かにいろいろなものがつながってくると結構危ないところではありますが、全部コントロールできているのが強みですね。たとえテザリングされても、トラフィックは見分けやすいので、そこは大丈夫です。

―― ただ、テザリングでオンラインストレージからファイルを大量にダウンロードするということもできそうです。今後、テザリングがチケット対象になることもあるのでしょうか。

石田氏 今のところはありません。たとえテザリングで動画を見たとしても、チケットがないとアクセスできないので、(テザリングそのものは)あまり影響がないですね。

―― 使い放題で1000円というのは、MVNOの中でもかなりの安さです。これで、本当にもうかるのでしょうか。ボロもうけという意味ではなく、持続的な事業展開が可能なのかという点ではいかがですか。

石田氏 いろいろなテクノロジーを使っているのが大きいのですが、(49%の株を持つ主要株主の)フリービット自体もMVNEをやっています。これは肉屋さんが焼き肉屋をやっているようなものですね(笑)。卸の部分がそうなっているのと、速度切り替えのシステムも洗練させていて、TONEはアプリごとに自動で速度を切り替えるという繊細な動作を、1日に20回も30回もやっています。これは、(帯域の)細かなコントロールができているということです。

 また、IP電話もSIPのシステムが、NTTと直接接続しており、総務省から直に電話番号をもらっているので、料金があまりかかりません。そういう意味でいうと、フリービットがあるからこそのコスト構造と言えます。

―― とはいえ、1GBのチケットも300円で、割安に感じます。

石田氏 他社の場合は帯となる基本料(1000円のこと)がなく、1GBプランは1GBプランとしてお金を取る形ですが、われわれは1000円をいただいています。それがこういう料金でできる理由です。

●freebit mobile時代とは契約数の伸びは全然違う

―― 今後の展開として、iPhoneを狙うというお話がありましたが、そのときもこの料金を継続するのでしょうか。

石田氏 オプションのような形は増えるかもしれません。料金を2つ作ってしまうとシンプルさが失われてしまうので。ベースがあり、そこに加えるという感じですね。

―― 現状、契約数などはいかがでしょうか。

石田氏 契約数は公開していません。

―― ざっくりとした手応えはいかがですか。freebit mobile時代と比べて、数も増えていると思います。

石田氏 それは全然違います。今は店舗もありますし、増えているぶん、そこは上がってきます。ただ、店舗はもっと増やさなければいけないと考えています。

―― TSUTAYA以外に広げていく可能性もあるのでしょうか。

石田氏 前から言っていたことですが、まずはTSUTAYをやり、次にTアライアンスの店舗をやっていこうと考えていました。その可能性はあると思います。

●子どもが監視されすぎていると感じないか?

―― 今回、VERYと共同開発をしていかがでしたか。感触を教えてください。

石田氏 一言で言って、勉強になりました。VERYさんがすごかったのは、親と子ども両方の視点を持ってきたことです。親だけでなく、子どもも喜んで使うものでなければいけない。そこは、かなり要求をもらっています。結果として、子どもが喜ぶもの、誇れるものがサービスとして出てきているので、これは長いプロジェクトになりそうです。

―― 具体的なサービスとして出てきたのは、先ほどあった端末以外だと、「親子の約束」などでしょうか。

石田氏 それは、買ってもらうための第一歩ですね。VERYさんの読者には、安易に子どもに買い与えて、時間をつぶさせるような人があまりいません。そういう方に第一歩を踏み出してもらうための取り組みが、親子の約束です。親子でコンセンサスを取るというところに、こういう仕組みがあります。

―― ジオロックもそうでしょうか。

石田氏 はい。VERYさんとのディスカッションでできたものです。僕らが作ると設定が細かすぎるので、プリファレンス(優先)が欲しいと言われました。今だとスマホを持っていくと先生に預けなければいけない学校もありますが、であればロックをかけてしまいましょうという話になりました。

―― 一方で、子どもに監視されすぎている印象を与えることはないのでしょうか。

石田氏 今回は、子どもの端末を触る必要がないというのが大きなポイントです。親が子どものスマホを管理しようとすると、子どもの端末を触ってLINEを見たりしますが、これはあくまで子どものものというベースがあります。親はアプリを使って遠隔で状況を把握できますが、GPSでの監視をする、しないは設定で変更でき、監視されていることは子どもにも分かります。その辺は親との話し合いで決めてほしいというのがコンセプトです。

―― 子ども以外を狙っていく際には、VERYとは別のコラボレーションがあるのでしょうか。

石田氏 コラボは必ず狙っていきたいと思っていて、シニアでは青柳先生との取り組みがあります。スマホはセンサーの集合体でもあるので、それで健康になってもらいたいというのがベースにありました。また、発表会のときにも思いつたように言っていましたが、VERYの親という対象設定もあり、そこはやっていきたいなと思っています。

●取材を終えて:シニア市場をどう攻めていくか

 トーンモバイルがターゲットを絞って端末、サービスを展開している戦略は、MVNOがひしめき合う今の市場を考えると、理にかなっているように感じた。ターゲットを考えると、富士通に端末製造を任せたのも正解だ。さまざまな技術を使いながら、それを感じさせず、幅広いユーザーが使いこなせるようにしたいという思いにも共感できる。

 一方で、少子化の中で子どもだけをターゲットにするのは限界がある。シニアについては、大手キャリアが子ども向け以上に手厚いサービスを展開しているため、プラスαの要素が必要だと感じた。この点については、9月に発表されるという新サービスに期待したい。また、子ども、シニア以外をどのような手で攻めてくるのかも、注目しておきたい。激戦区の市場ゆえに、TONEの腕の見せどころといえるだろう。

ITmedia Mobileの関連記事

image beaconimage beaconimage beacon