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実は“キャリア品質”のWikoスマホ 日本市場での勝算を前田社長に聞く

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/05/15
実は“キャリア品質”のWikoスマホ 日本市場での勝算を前田社長に聞く: 日本で発売されたWikoのスマートフォン「Tommy」 © ITmedia Mobile 提供 日本で発売されたWikoのスマートフォン「Tommy」

 フランス発のスマートフォンメーカーとして急成長を遂げ、欧州やアジアにもその勢いを広げているのが、Wikoだ。同社のお膝元であるフランスでは、並み居るメーカーを抜き、シェアはSamsung Electronicsに迫る2位を獲得。欧州では、その他の国でもシェア上位に顔を出すメーカーとなった。デザインや企画を欧州で行う一方、製造は出資先でもある中国の工場で行い、コストパフォーマンスに優れているのが、人気の秘密だ。

 そのWikoが、2月に日本に上陸した。日本での初号機に選ばれたのが、エントリーモデルの「Tommy」。カラフルなボディーとグラフィックが売りで、Wikoはこれを“エンタメガジェット”と位置付けている。1万円台前半のエントリーモデルながら、au VoLTEにも対応する。Tommyは欧州でキャリアモデルとして販売されており、ここで培った技術力が生かされた格好だ。Wikoは第2弾、第3弾の日本投入も検討しており、徐々にシェアを固めていく方針を掲げる。

 とはいえ、SIMロックフリースマートフォン市場は、今や群雄割拠と呼べる状況だ。Huawei、ASUS、FREETELなどに加え、有名どころだけでも、Motorola、ZTE、富士通、シャープなど、幅広いメーカーがひしめき合っている。Wikoの勝算はどこにあるのか。同社の日本法人であるWiko Japanで社長を務める、前田浩史氏にお話を聞いた。

●販促効果でTommyの販売台数は増えている

―― Tommyの発売から、2カ月ほどたちました。出足の感触はいかがですか。

前田氏 出たときはいろいろ初めてだったので、どうしていいか、試行錯誤しながら動いていましたが、ありがたいことに、販促をし、露出度が高まるのに伴い、販売台数が増えてきているというのが現状です。今やっているキャンペーンでお話しておきたいのが、(Tommy用ケースの)Folio WiCUBEプレゼントキャンペーンです。この手応えがよかった。

 WikoのTwitterアカウントをフォローし、リツイートした方にFolio WiCUBEをプレゼントするというものでしたが、「当たった」という反応がけっこう来ています。Tommyをまだ持たれていないのに、リツイートしてくださる方もいて、「他のカラーが出たらすぐに買う」と言っていただけています。そういった形で、徐々にではありますが、数字が伸びてきています。また、キャンペーンということでは、量販店さんでも展開を始めていて、オリジナルのトートバックを差し上げています。

―― アクセサリーまでそろうのは、やはりWikoの強みですからね。

前田氏 それがわれわれの売りです。欧州ではBluetoothイヤフォンなど、カジュアルな形でのアクセサリーをそろえています。これは日本でも用意する予定ですが、Bluetoothということで技適を取る必要もあり、今、その段取りを始めているところです。Bluetoothイヤフォンも欧州では非常にいいフィードバックを得ていて、Tommyのような廉価な端末を買われて、アクセサリーと組み合わせて“エンタメ端末”として楽しんでいる方がいる。外でも内でも楽しめるという使い方です。

―― Bluetooth製品以外はいかがですか。例えば、アクティビティートラッカーなどは……。

前田氏 逆に、どうですか?

―― 身に着けるものだけに、好みが大きく分かれそうな気もします。

前田氏 そうですよね。われわれとしては、まずスピーカーやイヤフォンなどを充実させていきたいと考えています。

●Tommyの品質は海外キャリアのお墨付き

―― 日本版のTommyはメモリ(RAM)、ストレージ(ROM)がそれぞれ強化されていましたが、これにはどのような理由があるのでしょうか。(メモリは1GB→2GB、ストレージは8GB→16GBに強化)

前田氏 日本はやはり(コンピュータ)ゲーム発祥の地であり、ヤングジェネレーションでゲームをヘビーに使う方が非常に多い。ストリーミングを見る方や、Instagramのユーザーも多いですからね。

―― つまり、それらがきちんと動くようにしたということですね。

前田氏 手前みそですが、このお値段でこれだけそろえているのはなかなかありません。発表会のときには言えませんでしたが、auさんのVoLTEにも対応しています。

―― IOT(相互接続性試験)を通して日本の周波数にも対応し、このお値段というのはかなり日本法人が頑張ったところではないでしょうか。

前田氏 これはだいぶ本社を説得しました(笑)。ただ、ありがたいことに、基本的な部品は欧州版と変えていません。VoLTE対応と周波数をどう合わせるかですが、そのほとんどがソフトウェアの処理で片付いたのがよかったですね。RF(アンテナ周り)に関していえば、ほとんどスルーで持ってくることができました。

―― Tommyは欧州キャリアに向けに開発されたモデルと伺いましたが、具体的にはどこが他のモデルと違うのでしょうか。

前田氏 事前にWikoの本社で欧州の主な事業者に、「こういう端末を出します」という企画を出しています。彼らも、「自分たちのポートフォリオに、こういった形で組み込みたい」と指示をしてきます。キャリア独自アプリも入れていて、ギチギチのSIMフリーではなく、オペレーターコンプライアント(準拠)で先行してお話をしています。

 採用が決まったところから具体名を出している状況で、Tommyに関して言えば、イタリアのTIM、フランスのORANGE、France Telecomの3つが公開されています。日本のイメージで言えば、ドコモショップやauショップに行かれると端末が並んでいると思いますが、あれらと同じような扱いですね。日本に持ってくる機種は、Tommyを含め、次の機種もオペレーターのお墨付きをもらっているものになります。

―― それは、品質的な理由からでしょうか。

前田氏 品質の問題が1つと、欧州事業者のIOT(相互接続性試験)を通っていることが大きな要因です。その辺は、やはり欧州の事業者も厳しいですからね。

 技術的な話になりますが、日本はFDDだけでなく、TDDのLTEもやっていますが、欧州はTDDが欠けています。あちらの事業者が日本のネットワークをチェックしにくる機会も当然あり、ネットワークに関して一番進んでいるという認識も持っています。常々お話したように、日本に進出した理由の1つは、MVNOやSIMフリーのオポチュニティがあることですが、5Gでもっとも進んでいるところからフィードバックを得たい。ラーニングバリュー(学習価値)があるということです。

●「ブリーン」が一番人気だけど欧州の売れ筋とは違う

―― Tommyについてですが、6色のうち、サン・イエローやホットピンク、グレイが発売されていません。こちらはいかがでしょう。

前田氏 今、話し合っている最中です。黄色はけっこう人気があるので、これは早急にという形で(議論を)進めています。話がまとまるかどうかは分かりませんが、MVNOの中に興味を示してくれているところもあります。オリジナルのロゴを入れた形でやってみたいというお話も、ちらほら出ています。そういった需要があれば、やってみたいですね。

―― 人気色はありますか。

前田氏 一番は、やはりブリーンです。これは欧州での売れ筋とは違っていて、あちらではトゥルー・ブラック、ブリーン、ホットピンク、サン・イエロー、フラッシー・レッドの順になっています。

―― 地味なブラックが一番人気なんですね。欧州は、もっとカジュアルな色が人気なのだと思っていました。

前田氏 欧州の方がもっとカジュアルに複数台持ちして、SIMの入れ替えも盛んですからね。「Fever」というイタリアでばか受けした機種があるのですが、こちらは木目調だったり、オレンジのボディーにグレーのストライプだったりで、カバーだけを変えられる形です。そういう(派手な機種も)売れましたね。

―― 背面のカバーだけ販売するということはあるのでしょうか。

前田氏 今、それは検討中です。ただ、買われた後、あまりカバーは変えないみたいなんです。Folioも2色、3色あって、着せ替えを楽しめますからね。

―― そのケースはキャンペーンだけで、販売の予定はないのでしょうか。

前田氏 どのルートで流すかを検討しています。ECを使うなどしないと、採算が合わなくなり、価格を上げると手に取りにくくなってしまうので。

●まずTommyを日本で発売した理由

―― 若年層がエンタメガジェットとして持つというお話がありましたが、Tommyの傾向はいかがですか。

前田氏 基本的にはわれわれの想定したヤングジェネレーションがメインですが、けっこう上の層まで来ています。サポートにSIMの挿し方の問い合わせがあって、それをうちの技術(の人間)が教えることもありますね。もちろん、メインはヤングジェネレーションですが、それ以外がけっこういるということも分かってきました。

―― MVNOでの取り扱いはいかがですか。

前田氏 今メインでやっていただいているのがNTTコミュニケーションさんで、あとはUQ mobileさんにも推奨端末(正しくは動作確認端末)に入れていただけました。UQ mobileさんは、(冬春モデルから)ちょっと時期が遅れてしまいましたが、いつでもウエルカムと言われています。

―― 今後はもっと増えそうですか。

前田氏 ほとんどのMVNOさんが待っているのが、次の機種だと思います。そうなると、相乗効果で(Tommyも)上がると思っていますし、オンゴーイングでいくつか動いているものもあります。

―― 自社ECサイトがありませんが、ECでの売れ行きはいかがですか。

前田氏 Amazonさんが売れ筋のECサイトになっていて、購買層は若い方から上の方まで網羅しています。先週(インタビューは5月2日)は、売れ筋で15位になっていました。あとはNTTレゾナントさんのショップで、ここではMNPで買われている方もたくさんいます。

―― 最初がTommyだった理由は、どこにあるのでしょうか。

前田氏 まずは買いやすいところから、ですね。ある意味、フィードバックも欲しかった。あまり高いのを出し過ぎて、「こんなもの」と言われるよりは、安いところからです。

―― そういう意味だと、現状は想定通りでしょうか。

前田氏 これから伸ばしていきます。いろいろなところからきているフィードバックとしては、販促を継続的にやってほしいというもので、これは続けていきます。

●デュアルカメラ搭載の「WIM」の日本発売も前向きに検討

―― Mobile World Congressでは、デュアルカメラ搭載の「WIM」を発売されましたが、日本展開の可能性を教えてください。

前田氏 WIMはTommyよりも年齢層の高いユーザーを狙った機種で、ヤングアダルト向けです。日本発売も、検討の余地が非常に大きな端末です。7月ぐらいから欧州で大きなキャンペーンを予定しているので、ぜひ注目していただきたい。これに関しては、欧州版はキャリアアグリゲーションもVoLTEもフルフルでやっています。

―― つまり、WIMもネットワーク的にはキャリアの要望に沿っているということですね。

前田氏 これからネットワークはどんどん複雑になっていくので、カバーしてほしいという要望は当然あります。2機種(WIM、WIM Lite)とも、キャリアチャネルから発売されます。

―― 比較的スペックの高い「Uシリーズ」もありますが、こちらとWIMはどうすみ分けているのでしょうか。

前田氏 WIMはフラグシップでキャリアチャネル、Uレンジの端末はSIMフリーで家電量販店と、完全にすみ分けができています。

―― なるほど。主に販路が分かれているということですね。

前田氏 そうです。

―― 参入されたばかりですが、日本ではキャリアチャネルを狙っていくのでしょうか。

前田氏 日本は要求仕様が高いですからね。もちろん、全キャリアとコネクションはありますし、キャリアチャネルといってもいろいろあるので、お話は進めています。ガチガチのキャリアブランドで出すところもある一方で、Y!mobileのように縛りが緩い(SIMフリー端末も一部販売している)ところもあります。まずは緩いところから、早ければ今年(2017年)中には……ですね。

―― 日本では、年間機種出すというような目標はありますか。

前田氏 年間数機種。希望的には2機種、できれば3機種出したいと思っています。

―― もう5月なので、あと半年ちょっとですね。

前田氏 これから頑張らないといけないのですが、サマー、オータム、あとはウインターに1機種あるといいんですけどね。それプラス、Tommyの後継機も考えなければいけないと思っています。

―― Tommyは2016年のIFAで発表され、2月に日本に導入されましたが、発表から日本発売までのリードタイムは、だいたいこのぐらいを見ておけばいいのでしょうか。

前田氏 日本のマーケットはハイレベルで、事業者の仕様でネットワークも決まってしまいます。今、欧州版を作る際に、日本版の仕様をあらかじめ載せてもらえないかという動きを私の方でしています。それができれば、来年(2018年)のMWCあたりで「日本でも発売する」と発表できるのではないでしょうか。ただし、技適を通さないといけないので、それができたとしても2カ月は遅れてしまいます。

●競合他社との差別化は?

―― 先ほど、日本にはキャリアモデルを持ってきたいというお話がありましたが、その他のラインアップはどのようなものをお持ちなのでしょうか。

前田氏 「Yレンジ」という言い方をしていますが、Tommy以外にも、「Remmy」や「Sunny」など、5文字で最後に「Y」がつくものがあり、ここにはヤングやユーなどの意味を込めています。WIMはハイエンドで、Uはその真ん中です。そこから外れたものとして、廉価版の機種があります。ブリスターケースに入って、50ユーロ、60ユーロで売られているような機種ですね。

 Wikoは欧州以外だと、ナイジェリアやケニアなどのアフリカまでカバーしています。その地域は、固定網を引くとお金がかかるので、基地局を先に立てていてネットワークはあるものの、高い機種が売れない。そういったところで、GSMの携帯電話も販売しています。また、ベトナムのチームには、東南アジアではOppo、Vivoあたりが競合になっているといわれています。

―― アジアにも進出していますが、中国はいかがですか。

前田氏 Wikoは一切中国に手をつけない、製造元のTinnoも機種は基本的に販売しておらず、どちらのブランドの機種もありませんが、SUGARという別ブランドの端末だけを出しています。中国でやり始めると、過当競争でブランドがぐちゃぐちゃになってしまうので、あえてやらないというコンセプトにしています。

―― WIMも発表されましたが、ハイエンドに近くなればなるほど、競合も増えてくると思います。この際には、どういった点が差別化になるとお考えですか。

前田氏 3つあります。1つ目がフレンチDNAということで、フレンチインスピレーションのあるデザインです。次が機能で、VoLTEを入れてもこの(Tommyのような)値段でやっています。最後は価格で、ハイスペックに近いところまで、一番安く持ってきたいというのがわれわれの考え方です。それにプラスして、日本では、キャリアバージョンの端末を持ってくるということを方針にしています。

●取材を終えて:ライバルが多いSIMフリー市場でどう存在感を示すか

 MWCやIFAなど、欧州で開催される展示会に参加すると、Wikoの存在感が年々増していることが分かる。コストパフォーマンスを武器に欧州で成長したWikoは、ちょうど日本のSIMロックフリースマートフォン市場を、数年先取りしているような格好だ。

 一方で、日本では、HuaweiやASUSなど、先行したメーカーが大きなシェアを持つようになった。欧州におけるWikoのようなポジションのメーカーが、少なくないというわけだ。欧州で高いシェアを誇るWikoにとっても、この市場は攻略が難しいかもしれない。もっとも、日本ではSIMロックフリースマートフォン市場自体が、スマートフォン全体で見るとまだまだ小さく、伸びしろはある。Wikoの戦略がどう受け止められるかは、引き続き注目しておきたい。

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