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実機レビュー:この発想はなかった PC向けVRをケーブルから解き放つ「VR One」とは?

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2016/11/22
実機レビュー:この発想はなかった PC向けVRをケーブルから解き放つ「VR One」とは?: PC向けVRにもワイヤレス化の波か―― © ITmedia PC USER 提供 PC向けVRにもワイヤレス化の波か――

 日本初の携帯電話は、ショルダーバッグのような肩にかけるものだった。今の私は、携帯電話の歴史をVR対応PCで追体験しているのかもしれない――。

 このPCを見た時、「なぜわざわざPCを背負うのか」と多くの方が感じることだろう。これにはVRデバイスの「ケーブル問題」がある。

●ケーブルの呪縛

 ハイエンドPCを前提としたリッチなVRコンテンツを楽しむには、映像の転送レートなどの関係から現状ではPCとVRデバイスをケーブルでつなぐ必要がある。

 座って周りを見回すだけのVRコンテンツを楽しむ分にはこれでも問題ない。しかし、「HTC Vive」のようなVR空間を歩けるタイプのVRデバイスではケーブルの長さが歩き回れる限界になり、不意にケーブルを踏んでしまってデバイスやPCを破損する恐れもある。

 そういったケーブルの問題に、MSIとHTCが出した1つの答えが「身につけるPC」だった。バッテリー駆動するVR対応PCを身につけてしまえば、PCとVRデバイスを短いケーブルで接続できるからケーブルを踏む恐れもないし、VR空間を広げていく際にもケーブルの長さは気にしなくていいということだ。

 そんな「身につけるPC」を製品化したものがバックパック型PC「VR One」だ。11月25日から発売となるが、一足早く試用する機会を得た。

●「身につけるPC」はVRユーザーをケーブルから解き放ってくれるのか?

 結論から言おう。半分はYes、半分はNoだ。

「解き放たれた」といえる部分

 VR Oneは2つのバッテリーパックを搭載している。このバッテリーはホットスワップに対応している。つまり片方のバッテリーが刺さっていればもう片方を外し、満充電した別のバッテリーパックを刺す、といった運用でVR Oneの電源を落とさずにバッテリーの交換が可能だ。

 この点で、まず電源というケーブルから解き放たれている。

 次にVR OneとHTC Viveの接続だ。VR Oneの上部に固められたポートの並びは、HTC Viveから伸びる電源・HDMI・USBの3つの端子をそのまま接続できるようになっている。

 これによってHTC ViveはVR Oneから電源の供給も受けられるため、ACアダプターをつなぐ必要がない。当然、初めに挙げた「ケーブル問題」は解消される。

まだ「解き放たれていない」部分

 ここまで読むと、「もうVR OneとHTC Viveだけで動くじゃないか」と思われるかもしれない。私もそう思った。だが、いざ触ってみるとこの2つだけで完結しない場合があることがすぐに分かった。――セットアップである。

 VR Oneの起動からログイン、HTC Viveのセットアップにはこれらの他にディスプレイ・キーボード・マウスが必要不可欠となる。

 キーボードとマウスはBluetooth、ディスプレイはワイヤレスディスプレイレシーバーやリモートデスクトップを使用すればこれらのワイヤレス化は不可能ではない。しかしVRを楽しむ上で本来不要なものをインストールすると、何か問題が起きた時に原因の切り分けが面倒になる。やはりこの点は割り切って有線接続した方が無難だろう。

 もう1つ「解き放たれていない」のは、HTC Viveでの活動範囲だ。HTC Viveはユーザーの現実での位置情報をVR空間に反映するのが特長だが、そのためには部屋の隅などに「ベースステーション」という位置トラッキング用のデバイスを2つ設置する必要がある。

 2つのベースステーションの距離は最大で5mとされ、この範囲からヘッドセットが出るとトラッキングできなくなり、Viveのディスプレイには何も映らなくなってしまう。

 HTC Viveのヘッドセットにはカメラが内蔵されており、ヘッドセットを被っていても現実の室内の様子を眼前に映し出して確認することができる。

 「カメラ機能を使えば、この格好で街を歩き回ることができるのでは」というのが先ほどから記事中に現れる、外でVR OneとHTC Viveを使用しているイメージ画像だ。

 実際には、ベースステーションを設置したスタジオから一歩出た瞬間目の前がまっしろになった。ケーブルの呪縛からは解放されても、HTC Viveの仕様の限界が立ちはだかった形だ。

 もっとも、HTC Viveは屋内での使用を前提としているし、ヘッドセットを付けたまま外を歩くのは(仮にカメラが作動したとしても)視界が狭まり危険なのでくれぐれもまねはしないようにしていただきたい。

●リッチコンテンツVRの、ワイヤレス化への第一歩

 先日の「Japan VR Summit 2」のトークセッションではHTC ViveのバイスプレジデントであるJoel Breton氏が、VRのワイヤレス化について「2020年までにPC向けVRのワイヤレス化が進んでいくだろう」と語っていた。

 これからのVRのワイヤレス化が、VR OneのようなVR対応PCの小型化・モバイル化で進んでいくのか、映像の転送技術でPCとVRデバイスが切り離されるのか、あるいはスマートフォンのVR機能が進化していくことでリッチコンテンツもプレイ可能になるのか、未来はまだ誰にも分からない。

 しかしこれからのVRの流れがワイヤレス化だとすれば、VR Oneはその第“一”歩を踏み出したといえる。

 「ショルダーホン」という製品がかつて存在した。固定式の電話機から現在の携帯電話が生まれるまでの歴史の中で、初めての「持ち運べる電話」といえる製品だった。VR OneはリッチコンテンツVRの歴史の中の「ショルダーホン」に当たる製品なのかもしれない。

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