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崩せばよかったのに…樽沢トンネルの謎

毎日新聞 のロゴ 毎日新聞 2014/05/10 毎日新聞
Photo: JR吾妻線の川原湯温泉−岩島間にある樽沢トンネルを駆け抜ける電車=群馬県東吾妻町で 田ノ上達也撮影 © 毎日新聞 JR吾妻線の川原湯温泉−岩島間にある樽沢トンネルを駆け抜ける電車=群馬県東吾妻町で 田ノ上達也撮影

 町境の短いトンネルを抜けると行き過ぎた−−。JR東日本の吾妻線で岩島駅(群馬県東吾妻町岩下)から川原湯温泉駅(長野原町川原湯)方面へ約4キロ。眼下には、新緑がまぶしい国指定名勝の吾妻渓谷が広がる。「日本一短い鉄道トンネル」として知られる樽沢トンネルは、まさに瞬く間に通過してしまう。並行する国道145号(旧道)からでも、うっかりしていると見落としてしまうほど短い。

 トンネルの全長は約7.2メートル。日本一長い青函トンネル(53.85キロ)の約7500分の1しかなく、電車1両すら覆えない。観光で訪れた東京都八王子市の会社員、岩崎啓美さん(25)は「ここまで短いなら岩を崩せばよかったのに。なんで今の形で残っているのだろう」と不思議そうな表情でじっくり観察していた。

 吾妻線の前身である国鉄長野原線は、群馬鉄山から鉄鉱石を運搬するために1945年に渋川−長野原間で開通した。岩壁を取り除かずトンネルにした理由は、太平洋戦争末期の建設当時、工期短縮のために穴を掘った▽岩が硬すぎて崩せなかった▽美しい渓谷の景観に配慮した−−と、諸説ある。JR東日本高崎支社は「なぜトンネルを選んだのか、確たる資料は残っていない」と説明する。真相は不明だ。

 全国の鉄道ファンを一瞬魅了する謎のトンネルだが、さっそうと駆け抜ける電車は今秋にも見られなくなる見通しだ。近くで八ッ場ダムの本体工事が始まり、岩島−長野原草津口間の樽沢トンネルを含む約10.4キロの線路が、離れた場所に付け替えられるためだ。JR東は「トンネルは短く、あっという間に通り過ぎてしまいます。お見逃しなく」とPRに努めている。【田ノ上達也】

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