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嵐の新作は“ポスト・SMAP”ジャニーズの王道だ! 矢野利裕『Are You Happy?』レビュー

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/10/30 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 現在進行形で、いかようにも可能性のあるグループをつかまえて、その性格や特徴を言いつのるのは、場当たり的になるし、あまり良いこととは思わないのだけど、それにしても、『THE DIGITALIAN』『Japonism』ときて、この『Are You Happy?』か。嵐はすごいな。本作は、トップアイドルゆえの懐の深さを見せた、堂々たる傑作ではないか。 (関連:嵐、『Are You Happy?』で示した各メンバーの個性とは? 飾らないスタイルが“今の嵐”)  近作を少しだけ振り返りたい。『THE DIGITALIAN』は、デジタルプログラミングの技術を駆使したアルバムだった。かなり細かく一音一音を配置して、さらにアイドル音楽の中心的要素であるボーカルまでをも切り刻んで、サウンドの一要素にしてしまうことで、ラディカルなデジタルサウンドの構築を達成した。筆者はこれにいたく感激し、メロディ偏重主義の日本のポップスにラディカルなリズム革命を起こすのだ、と息巻いていた。今後の嵐の進む道はこれに間違いない、と。しかし、続く『Japonism』は、あっさりとデジタル路線を手放して、ジャニーズ特有のジャポニズム精神を露骨にあらわしたアルバムとなっていた。これはこれで興味深いものだったが、音楽的には、ジャニーズにおけるジャポニズム精神が台頭してきた80年代後半のサウンドをパロディ的にシミュレートしている感が強く、個人的には物足りなさを感じたのもたしかだった。そして、『THE DIGITALIAN』のときに息巻いていた自分を恥ずかしく思った。  では、本作は? よし、言おう。これは、これこそは、ポスト・SMAP時代におけるジャニーズの王道だ! こっちだった。嵐が進む道はこっちだったのだ。一連の解散劇のなかで、SMAPについて考えることが多くなっていたから、過剰に「ポスト・SMAP」感を受け取っているのかもしれない。しかし、解散云々以前、嵐は最初からポスト・SMAPのグループとして出てきたはずである。  ポスト・SMAPとはなにか。それは、クラブミュージック以降の歌謡曲だ、ということだ。筆者がしばしば言うのは、SMAPはジャニーズにクラブカルチャーを持ち込んだ存在だ、ということである。1990年代、華やかなディスコ的価値観に満ちていたジャニーズに、クラブ的なクールさを持ち込んだのがSMAPである。だとすれば、嵐がデビューした1999年は、すっかりクラブ的なクールさが馴染んだあとの時代である。実際、SMAPでさえ、ほとんど飛び道具的にしか扱わなかったラップという手法を、嵐はデビュー曲のいちばん最初からこなしている。そして、なにを宣言するかと言えば、「We Are “COOL”」と来たもんだ! クラブミュージック時代のクールさを抱えながら、ジャニーズアイドルとして華やかなポップスとしてあり続けること。これが、嵐の歩んできた道だった。  本作『Are You Happy?』は、そんな嵐のありかたを体現するような傑作だ。個人的には、いちばん好きかもしれない。先行シングルとして、山下達郎を迎えた「復活LOVE」が出た時点で、アルバムにはディスコティックな曲が並ぶのかな、と期待していたが、その期待は外れなかったと言っていいだろう。冒頭3曲「DRIVE」「I seek」「Ups and Downs」は、ホーンやストリングス、カッティングギターが魅力的なディスコティックな曲である。なかでも「Ups and Downs」は、マイナー調のメロディとそこに絡むコーラスがものすごくクールだ。途中で2ビートになる展開も素晴らしい。この曲と、いかにも山下達郎的なカッティングとメロディからなる「復活LOVE」は、本作のハイライトだろう。櫻井翔による「Sunshine」、松本潤による「Baby blue」、「Don’t You Get It」(こちらは、ファンク要素がかなり強いが)など、ジャニーズディスコにますます磨きがかかっている感じがする。  一方、例によって相葉ちゃんは、「Amore」(長友を受けてなのか)で謎の孤軍奮闘をしている。この曲は、昔の歌謡曲のラテン感をパロディ的に打ち出しており、結果的にサザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」の現代版のようになった、面白い曲である(サザンオールスターズというバンド名は、NYサルサバンドのファニア・オールスターズから取られている)。大野智によるバキバキなエレクトロ「Bad boy」も意欲的だが、同じエレクトロで言えば、新機軸はむしろ、二宮和也による「また今日と同じ明日が来る」のほうだろう。この曲は、音響/エレクトロニカ的なサウンドテクスチャーのトラックを見事に歌モノに昇華している。同じように「WONDER-LOVE」も、こちらはR&B由来だろうとは言え、やはりエレクトロニカ的なテクスチャーが持ち込まれている。繊細なトラックに対応する歌唱力もある。このあたりの要素が、ディスコティックなエレクトロハウスと結びつく可能性もあるだろうか。そしたら、いよいよクラブミュージック時代の華やかなポップスではないか。  SMAPの大きな歩みを経て、嵐がジャニーズの新たなる王道を示し始めている。場当たり的か知らんが、いま目のまえにある作品は、そのくらい堂々たる傑作だ。(矢野利裕)

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