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年末企画:小田慶子の「2016年 年間ベストドラマTOP5」

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/12/22 株式会社サイゾー
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 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2016年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマの三つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は地上波および配信で発表された作品から5タイトルを選出。第八回の選者は、雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当するライター/編集者の小田慶子。 1.『逃げるは恥だが役に立つ』

2.『ちかえもん』

3.『真田丸』

4.『夏目漱石の妻』

5.『毒島ゆり子のせきらら日記』

 ベスト5のうち3作がNHKのドラマ。ただし、朝ドラは評判の良かった『あさが来た』(2015年下期から)を含めて入れていない。ここ数年、朝ドラは似たようなヒロイン像と定型パターンの中に収まってしまって意外性がなく、ドラマ好きの心を震わせることがないのが残念だ。  『逃げるは恥だが役に立つ』は、昭和の頃なら見合い相手として出会うような関係性(妻から見て夫は父の部下)の男女が雇用契約を結び、主婦の家事労働はアンペイドワーク(無償奉仕)という問題を可視化させることで、夫婦のシステムを再構築してみせた。まず、このアイデアを生み出した海野つなみの原作コミックが優れているが、その原作を最大限リスペクトしつつドラマ化した脚本の野木亜希子とスタッフも素晴らしい。コミカルなセリフのやり取りやテレビ番組のパロディをふんだんに盛り込んで楽しませ、その上で難しいテーマを多くの視聴者に分かりやすく伝えた。  と、まずは真面目に評価するが、世間の荒波をくぐった40代既婚女性としては、いくらでも下世話な感想も出てくる。いやー、みくりはうまくやったよ。平匡って結婚相手としては理想的なのに、“独身のプロ”を自称するような男で、いわゆる婚活市場には出回らない“幻の魚”。そんな彼に同居を承諾させ、「大丈夫だよー。ハグしていいいんだよー。それ以上もOKだよ」と少しずつ高齢童貞の警戒心を解いていき、ついにはプロポーズさせる。さらに最終回では、家事を分担する男にまで成長させていた。幻の魚を1本釣りで見事に仕留める過程をじっくり楽しませてもらった。いやはや、あっぱれ。  『ちかえもん』は、時代劇だけれどポップ。大河ドラマ『平清盛』の藤本有紀による緻密な台本、浄瑠璃作者・近松門左衛門を劇作家の松尾スズキが演じるという絶妙なキャスティング、「嘘とほんまの間が一番おもろい」という虚実皮膜を映像で見せる試み。さらに衣装・美術を含め、全ての志が高く、伝統文化の香りが満載なのに、作風としてはふざけている。それがたまらなく粋だった。『真田丸』で大坂城の出城が完成したとき、ネット上では「俺達の受信料が活かされた!」と喜んでいる人が多かったが、NHKでしか実現しない企画という意味で、本作のほうが、受信料を払っていてよかったと心から思えた。  『真田丸』は、とにかく楽しかった。放送前に劇場公開された三谷幸喜監督の『ギャラクシー街道』があんまりな出来だったので、スタート時は半信半疑。しかし、草刈正雄演じる真田昌幸のくせ者感と大泉洋演じる報われない信幸のおかしみで、一気に引き込まれた。信繁(堺雅人)と“きり”(長澤まさみ)の男女間の友情という三谷作品としては新しい要素も面白く、演者のアイデアによって2人は最後にキスをすることになったが、しないほうがその関係性が際立ったのではないかと思う。大名にはなれない昌幸の限界、秀吉のダークサイド、ラストシーンで最も優れた武将であることを示した本多正信など、人物造形はみごとだったが、全体としては、よくできた二次創作といった趣き。最終回に「ダメ田十勇士」の面々がなんの伏線もなく出てきたことからも、そう感じられた。  『夏目漱石の妻』も、役者の芝居を楽しむ作品。主演映画『シン・ゴジラ』のヒットもあったが、今、最もクレイジーな演技を見せてくれる長谷川博己と、それをはね返せる強さを持つ尾野真千子が漱石夫妻役にハマっていた。第3話で、漱石(長谷川)の養父(竹中直人)が金を無心に来て、漱石が心労で倒れ、漱石の妻(尾野)が養父をなじる一連の場面は、今年のドラマで最もエモーショナルな圧巻の演技。NHKには、そんなふうに演者のポテンシャルを最大限まで引き出せるディレクター陣と、制作に充分な時間をかけられる余裕があり、年々、制作スケジュールがタイトになってきている民放は、残念ながらその差を埋められそうにない。  そんな中、深夜ドラマ『毒島ゆり子のせきらら日記』は、『逃げ恥』の次に、女性を自由にしてくれるドラマだったと思う。恋愛中毒のヒロイン、ゆり子(前田敦子)が、仕事では頭脳明晰な記者なのに、嘘つきの既婚男性(新井浩文)にコロっとだまされる。愚かな女と言えばそれまでだが、「不倫だけど純愛」という幻想の中にいるときのセックスは最高なのだ、というところまで描いていた。ここまで暴露されると拍手するしかない。若手の橋本梓プロデューサーと脚本の矢島弘一という、ドラマ界にとって新しい才能を歓迎したい。  ベスト10としてあと5作挙げるならば、脚本家重視で、中園ミホが敬愛する黒柳徹子を描くことで本領発揮した『トットてれび』、野木亜希子のもうひとつの傑作『重版出来!』、大石静の新境地となった『家売るオンナ』。さらに、バカリズムが女性への幻想ゼロでシニカルに描いた『黒い十人の女』、福田雄一の構成力が光ったコント劇『ニーチェ先生』を入れたい。  深夜ドラマでは、ユースケ・サンタマリアがダークサイドを見せた『火の粉』、高畑裕太の逮捕というハプニングがありながら放送継続した『侠飯~おとこめし~』も印象に残った。  オンデマンドサービスのオリジナル作品と地上波の連携を見ると、やはり11年にサービス開始したHuluが最も先んじているという印象。まず、『THE LAST COP/ラストコップ』が地上波ゴールデンタイムに進出したが、低予算ということを逆手に取って成立していたし、『ニーチェ先生』も地上波深夜で追うには辛い編成だったものの、Huluで見ている人が多く、面白いという声を聞いた。2017年はNetflix、Amazonプライムビデオの作品が、一般視聴者の間でも話題になることを期待したい。(小田慶子)

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