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年間520万人が自転車旅行 なぜドイツ人は自転車にハマるのか?

エキサイト Bit のロゴ エキサイト Bit 2017/09/09 田中史一
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「私の感じでは、アメリカ人もかなり勇敢だが、ガンバリがきくという点で、やはりドイツの青年の足もとに及ばないであろう。」

小田実著『なんでも見てやろう』

夏のドイツは、フル装備の自転車に、大きな荷物を下げて、猛スピードで走り抜ける人々でいっぱいだ。彼らを見かけるたびに、作家・小田実の海外体験記『なんでも見てやろう』の一節を思い出さずにはいられない。

多くの市民の自転車への熱は並々ならぬものがある。気候が良くなると、見るからに重そうな、もとい重厚な愛車を引っ張り出し、自然を目指して自転車にまたがる。列車も自転車を持ち込める仕様になっているため、特に夏期休暇のシーズン中、駅は、競輪選手と見まごうような完璧な格好のアマチュアライダーたちであふれかえっている。

この自転車熱、どうやら私という一外国人が受けた印象だけではなさそうだ。ドイツ自転車組合は、2016年の1年間で520万人のドイツ人が自転車旅行で休暇を過ごしたと報告した。これはおよそ8200万人のドイツ総人口の15%に当たる。しかも520万人という数は、2015年と比べて16%上昇しているのだ。また2017年は、国民の約30%が国内の自転車旅行を予定しているという調査結果もある。自転車の人気、天井知らず! 

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そんなときに、この夏自転車旅に出かけたグループに取材する機会を得た。彼らの体験談にぜひ触れていただこう。

エネルギー爆発! ドイツ人3人組の自転車旅

今回自転車旅を敢行したのは、ドイツ人男性3人組だ。26歳の彼らは、南ドイツのフュッセンから北イタリアのベネチアまで約500キロの道のりを、13日間かけて走破した(休息日や最終目的地での観光日を含めているため、自転車をこいだのは実質11日)。彼らの場合、特に普段から長距離を走るためのトレーニングを積んでいるというわけではない。

約500キロというと、日本だと太平洋側を通った際の東京から京都までの距離に相当する。ただし南ドイツからイタリアに抜けるには、アルプス山脈を越えねばならない。高低差はかなりのものだ。

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これだけ走って、お尻の皮がむけないのだろうか……。なんせ、彼らの自転車のサドルは、日本のママチャリのそれよりもはるかに硬いのだ。でも、彼らはそんなことを気にも留めていない。軽々とアルプス山脈を越え、山国オーストリアを走り抜け、南チロル地方を横目にベローナ、パドバ、ベネチアとどんどんと進んでいく。

アルプス山脈越えでは、高低差1300メートルの登り道を半日で乗り切った。イタリアへ入国後は、夏の強烈な日差しを避けるため、時には100キロを4時間で走破。さらに各々の町を観光しながら進むのだから、その体力と気力には驚くばかりだ。ある日の夕食は、750グラムのスパゲッティ。これを3人で一気に平らげたのだ。参考までに、一般的な料理のレシピは1人当たり80〜100グラムの計算である。どれほどのエネルギーを消費したのか、推して知るべし! 

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自転車がこれほどまでの人気を誇るワケ

好きなことの理由を挙げよと言われても、「だって、好きだから」という以外に言いようがないというのはよくあることだ。先の3人組が自転車旅に出た理由も、「だって、楽しいから。自転車好きだし」というもの。

とは言え、ここ最近の爆発的な人気には他にも何かありそうだ。ドイツ自転車組合の統計では、ドイツ人が自転車好きな理由として「二酸化炭素を排出せずエコ」「持続可能な観光」という2点がその圧倒的な割合を占めている。他の交通手段は用いず全行程を自転車のみで走り抜けるというツワモノも、自転車旅行者の5分の1ほどいるのだから、環境に対する徹底した意識がうかがえる。

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ちなみに、自転車は老若男女問わずに人気を集めている。自転車旅参加者の平均年齢は48歳。女性の割合も年を追うごとに高まっており、昨年は実に全体の42%が女性の自転車旅行者だった。3人組もアルプスの山越えで2人連れの女性に出会っており、抜きつ抜かれつ、道の情報交換をしていた。

独シュピーゲル誌によれば、自転車の原型がドイツで発明されてから今年で200年。自転車は世界でもっともよく使われる移動手段として、人々の生活に浸透している。200年の時を経て、今なお色あせることない人気に、発明者のカール・フライヘア・フォン・ドライスも草葉の陰で喜んでいるだろう。私もこの週末、もう一度サイクリングに出かけようか。

(田中史一)

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