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広瀬すずの“負けん気”はスポ根もので輝く! 『チア☆ダン』が大人世代にも“効く”理由

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/03/14 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 広瀬すず主演の『チア☆ダン 〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』を観る前は、あまり期待していなかった。キャスト・スタッフの座組は悪くはないけれど、福井県の高校生たちが全米チアダンス選手権で優勝したという実話は既に知っていたから展開は読めてしまうし、そもそもタイトルでざっくりネタバレしているではないか。筆者は40代で、青春はとうに過ぎてしまったし、その若かりし日ですら体育会系気質ではなかった。あまり共感できないだろうな、退屈かもしれないな、まぁ、お仕事ですから、と斜めに構えて座った試写室の席で2時間後、エンドクレジットが流れる頃には泣いてしまっていた。やばい。「制服が似合う芸能人」ナンバーワンの広瀬すずは、青春を忘れたアラフォーにも効く。 参考:中条あやみが大化けする日は近い? 『チア☆ダン』部長役で見せた新境地  この映画で、広瀬すずが演じるのは、天真爛漫な笑顔をもつ主人公、ひかり。県立高校に入って、好きな男の子を応援するためにチアダンスを始めるが、顧問である鬼教師(天海祐希)のスパルタ指導を受け、やがてチアダンスで強くなること自体が目標になっていく。ひかりは部長の彩乃(中条あゆみ)を始めとするチームメイトと友情を築き、廃部になりそうだったチアダンス部は軌道に乗るが、チームのレベルが全国優勝を狙えるところまで上がる中、ただの仲良しクラブではいられなくなり、ひかりにも大きな試練が訪れる。  そんなスポ根の王道を行く展開の中、広瀬は最初から最後までテンションを落とさず、リアリティのある演技を見せている。筆者の印象に残ったのは、ひかりが出られなくなった試合でチームメイトをステージに送り出す場面。チームの中心メンバーなのに出場できないという悔しさを見せないように、緊張する仲間たちを明るく力づけ、笑顔で送り出した瞬間、糸が切れて思わず涙ぐむ。その一連の表情の変化が真に迫っていて見事だった。また、競技シーンでは露出度の高い衣装を着て、はつらつとしたダンスを見せる。「『海街dairy』で中学生を演じたすずちゃんが、すっかりきれいなお姉さんになっちゃって」と驚く観客も多いだろう。  もちろん『チア☆ダン』は、『シン・ゴジラ』や『君の名は。』のようにエポック・メイキングな作品ではない。あくまで予定調和的な青春映画であり、王道のアイドル映画なのだが、完成度としてそこまで行きつけない作品が多い中、エンターテインメントとしてきちんと成立したのは、やはり驚きの実話がベースにあるからだろう。これがもしフィクションなら、日本の高校生が世界一になったなんて漫画の『キャプテン翼』じゃあるまいし、と嘘っぽく感じてしまうが、なにしろ実話なので文句のつけようがない。そして、広瀬すずたちメインキャストが実際の部員と同じように一からチアダンスを始め、猛特訓の末に、スタントなしでコンテストシーンを演じきった。つまり、撮影現場にも汗と涙と友情と奇跡があったのだ。そのドキュメンタリー的な効果によって、観客に白けさせる暇を与えず、一気に感動のクライマックスまで連れていく。『俺物語』の河合勇人監督による演出も的確だが、ひとつ疑問が沸いたのは、キャスティングについて。ヒット作『ちはやふる』で共演した(さらに続編で共演する)広瀬と真剣佑がここでも共演。どうしてみんなアメリカ育ちの彼に福井弁をしゃべらせたがるのだ。  先日、授賞式が行われた日本アカデミー賞において、最優秀こそ逃したが主演女優賞と助演女優賞をダブル受賞し、いまや誰もが認める映画界のスター。そんな広瀬すずは、負けん気の塊である。自分でもブログなどで再三「負けず嫌い」だと明かしているが、そんじょそこらの負けず嫌いではない。インタビューするときも、彼女の発言には全て「負けん気」というバイアスをかけないと、その真意は理解できなかったりする。しかし、その闘争心こそが、華のある容姿や鮮烈な演技よりも、彼女のもつ第一の才能だろう。だが、それはあくまでアスリート的なもので、ネットの一部で根拠なくディスられ、自分でも自嘲的に書いているような「性格の悪さ」ではないと擁護したい。中学生までバスケットをやっていた彼女にとっては、オーディションなどでライバルたちと競うのも、試合の延長のようなものかもしれない。だからこそ、『チア☆ダン』のようなスポ根ものに入ったとき、彼女は誰よりも光を放つ。  日本アカデミー賞の授賞式やブログで語ったように、最近の広瀬にとって大きな転機となったのは、『怒り』で沖縄の少女・泉を演じたことだったようだ。李相日監督から何度もダメ出しされた広瀬は「自分とは勝負しないんだ」と言われたという。この言葉はかなりこたえたらしい。「図星だったんだよな」、「この作品で本物の悔しいと出逢った」と語るブログの言葉には、若手のトップに立ってなお闘争心の衰えない、戦い続けられる強さを感じる。撮影が終わった作品で理想の演技ができなかった悔しさは、次の作品にぶつける。悔しさを忘れないことで、広瀬すずは自分をアップデートしているらしい。(参考:広瀬すずオフィシャルブログ「すずの音」Powered by Ameba)  実は、同じような質問を別の若手女優にしたことがある。「このシーンは激しい感情を表現しなくてはならなくて、なかなか監督のOKが出なかったそうだけど、難しかったですか?」と。するとその女優は、「どうだったかな? 私、けっこう忘れちゃうんです。引きずらないので」と明るい表情で答えた。広瀬と同年代の彼女は若く美しく聡明で、話題作が続くという売れっ子のポジションも同じ。でも、執念とも呼べるレベルの負けん気だけは、彼女にはないのだった。しかし、そんな彼女も、日本アカデミー賞の授賞式で、主演女優賞候補として壇上に立つ広瀬を複雑な表情で見つめていた。これから彼女の負けん気に火が点くのかもしれない。  一方、助演女優賞部門では、広瀬ではなく、1歳上の杉咲花が最優秀賞を獲得した。まだまだ広瀬にとっても目指すところはありそうだ。ことさらに競争を煽るつもりはないが、『チア☆ダン』の劇中のように、若くパワーにあふれた女性たちがライバルを意識し自分自身と戦いながら見せる演技は、面白いに決まっている。これからも、戦うことを忘れがちな大人である自分に喝を入れるためにも、広瀬すずの映画をウォッチし続けたい。 ■小田慶子

ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

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