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斉藤由貴の“毒親”ぶりが怖い! 常軌を逸した『お母さん、娘をやめていいですか?』の母親像

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/02/09 株式会社サイゾー
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 『昼顔』、『14才の母』などの脚本家・井上由美子が手がける現在放送中のNHKドラマ『お母さん、娘をやめていいですか?』は、最近話題の“毒親”を描く“モンスターホームドラマ”である。娘への愛が極まって、常軌を逸した行動が次第にエスカレートしていく母親・顕子を演じる斉藤由貴の怪演にホラーを見ているような気分になる一方で、このドラマに登場する母親と娘たちを見ていると、哀しい女たちの物語が浮かび上がってくる。 参考:女優・波瑠は『あさが来た』でブレイクなるか? “没個性という個性”の可能性を読む  顕子(斉藤由貴)と美月(波瑠)の美人親子は、まるで恋人のように仲がよかった。美月は顕子に恋愛も仕事もなんでも相談し、全て母親の言うとおりに行動する。母親の仕草や顔色を窺って、あたかも自分の意志であるかのようにそれを主張し、母親は満足げに同意する。その関係性は、見ていてどことなく気持ちが悪い。べったりと結びついていた親子の蜜月は、美月に松島(柳楽優弥)という恋人ができたことがきっかけで崩壊していく。

 ドラマは4話を終え佳境に差し掛かり、家族が崩壊の一途を辿れば辿るほど、家族の夢の象徴たる建設中のマイホームが幻の巨城のようにそびえたって見える。その家は、顕子にとって、美月と共に一生暮らすことを夢想する、彼女の理想のレイアウトで創りあげられた完璧な城だ。

 顕子を演じる斉藤由貴がとにかくすごい。姉妹のように仲がいい美人親子と言えば、auの斉藤由貴と夏帆のCMが記憶に新しい。斉藤由貴の年齢を感じさせない可愛らしさが話題になったが、今回はその可愛らしさの裏に強烈な毒を含む。  娘のデートを尾行するのは序ノ口。「白雪姫を殺そうとしたお妃さまは実の母親だった」という、麻生祐未が語る挿話そのままに、赤い毒林檎ならぬ赤いパプリカを持って微笑み出したと思ったら、赤いペンキで自分の気に入らない新居の天井を塗り潰したりする。  娘が自分のもとから離れることの辛さから娘の恋の妨害をし、それでも彼氏のもとに走っていく娘が許せず、さらには彼氏を誘惑し始める。しかし、彼女を嫌いになれないのは、斉藤由貴の演技に一人の女性の悲哀を感じるからだ。彼女に依存しつつも否定し続ける母親(大空眞弓)の存在と、好きな人と一緒になれなかった過去、仕事に熱中しほとんど家に帰らなかった夫(寺脇康文)を頼れなかった過去。その全てが集約された、母の葬儀後の激しい慟哭は胸に迫るものがあった。 一方、母の激しすぎる愛と対峙する娘を演じる波瑠は、その透明感と静かで強い眼差しによって火のような斉藤由貴に立ち向かう。最初の波瑠はその透明感もあいまって、まるで人形のようだ。彼女たちの家の中は、母親手作りの人形が無数に配置されている。その人形は美月にみんなよく似ている。母親によって作られた“分身”たちに囲まれた彼女は、顕子に薦められるままあまり好きではないワンピースを着せられ、着せ替え人形のように微笑む。 全て母の望むように生き、そのことに対しなんの疑問も感じていなかった彼女が、柳楽優弥演じる松島に支えられ、自分の意思で動き始める姿は、人形が息を吹き込まれ、強い明確な眼差しを持って動き出したかのようで、凛として美しい。  ドラマは、美月と顕子だけでなく、顕子とその母親、美月の教え子の後藤礼美(石井杏奈)とその母親という3組の親子を描いている。「ねえ、松島さんと私どっちが大事?」と迫る母親・顕子と「あの男(別れた夫)と私どっちが大事なのよ!」と迫る礼美の母親は、「だって裏切りじゃない、あの子を育てたのは私なのに」という言葉のように自立しようとする娘たちを許せない。顕子、美月、礼美という、母親に縛られた子供たちは、その強い束縛から逃れることができるのだろうか。母親の束縛から逃れられないまま、母親に死なれてしまった顕子の絶望をよそに、互いの境遇を理解し、共に戦おうとする美月と礼美は少しずつ変わりつつある。そして、母親たちもまた、前を向くことができる日がくるのだろうか。

 これは女たちの戦いの物語である。(藤原奈緒)

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