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新プランで約300億円を還元 6つの領域に注力するドコモの勝算は?

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/04/29 06:00
新プランで約300億円を還元 6つの領域に注力するドコモの勝算は?: ドコモが2020年に向けた中期計画として打ち出した「beyond宣言」 © ITmedia Mobile 提供 ドコモが2020年に向けた中期計画として打ち出した「beyond宣言」

 5Gを導入する2020年に向け、ドコモが「beyond宣言」と題する新たな中期経営戦略を発表した。これは、2014年10月に発表された中期目標を受け、次の3年間の方針を定めたもの。2014年時点で戦略として掲げられていた「通信事業の競争力強化」と「スマートライフ領域におけるパートナーとの協創」をより具体化し、5Gを軸に、6つの領域に注力していくことを宣言した格好だ。「3年間、6つの宣言を実現するために、ドコモとしてこれで動いていく。ファクトとして、これで進んでいくことを明確化した」(吉澤和弘社長)というのが、beyond宣言の目的だ。

●対ユーザー、対パートナーに向けた3つずつの宣言

 beyond宣言は、ドコモのユーザーとパートナー、それぞれに向けられたものだ。ユーザーに対しては、「マーケットリーダー宣言」「スタイル革新宣言」「安心快適サポート宣言」の3つを、パートナーに対しては「産業創出宣言」「ソリューション協創宣言」「パートナー商流拡大宣言」の3つを掲げている。単に理念をまとめただけでなく、早速、具体策も打ち出された。

 マーケットリーダー宣言の一環として、ドコモは27日、新たにシェアパック用の「シンプルプラン」や、30GBを家族で分け合う「ウルトラシェアパック30」を新設。シェアパックの子回線に対し、利用できるデータ量を設定できる機能も、秋に提供を開始する予定だ。シンプルプランは、基本使用料が月額980円(税別、以下同)の料金プラン。これまで、音声通話対応端末では2700円の「カケホーダイ」か、1700円の「カケホーダイライト」しか選べなかったところに、新たな選択肢を加えた格好だ。

 シンプルプランには音声定額がつかず、通話の際には30秒20円の料金がかかる一方で、家族への通話は無料になる。「(通話の手段として)LINEなどを使い、通話が少ない方に適している」(吉澤氏)プランといえるだろう。シンプルプランを新設した理由は、「カケホーダイ、カケホーダイライトと出してきてはいるが、それでもやはり、通話されないお客さまからは、もう少し何か考えられないかという声が出てきた」(同)ため。ウルトラシェアパック30と合わせて、「300億円規模のお客さま還元」(同)になる見通しだという。

 お得という観点では、5月10日に、ドコモポイントをdポイントに自動的に移行する方針。dポイントを携帯電話利用料の支払いに充当する際の単位も、3000ポイント以上100ポイント単位から、1ポイント以上1ポイント単位に改める。dポイント加盟店は、「2020年度までには、加盟店300社以上、ポイント発行額で日本最大級を目指す」(吉澤氏)構えだ。ユーザーへの還元に関しては、第2弾以降も予告。シンプルプランやシェアパック30は、マーケットリーダー宣言の第一歩となる。

 スタイル革新宣言とは、5Gの通信特性を生かしたサービスや、+dの取り組みを生かしたサービスをユーザーに提供していくこと。AR、VR、スポーツ、自動車、シェアリングサービス、AI、FinTchなど、合計で9つの分野が挙げられていた。安心快適サポート宣言は、ユーザーのサポートを充実させていく取り組みで、「ドコモショップだけでなく、セルフ端末、キヨスク端末、あるいはAIを使ったコールセンターと、あらゆるお客さま接点が連携し、1人1人を理解することで最適なご提案をする」(吉澤氏)という。具体的なサービス内容はまだ発表されていないが、2020年に向け、さまざまな取り組みを実現していくことになるという。

 ユーザーだけでなく、+dとしての取り組みも拡大。5Gの高速、大容量、低遅延、多接続といった特徴を生かし、「将来の新たな産業の創出や、エコシステムの構築に貢献していきたい」(吉澤氏)という。その一環として、5月下旬にフジテレビやALSOK、東武グループなどの複数企業と共同で、5Gのトライアルサイトを開始する。ソリューション協創としては、テレワークやシェアオフィスなどのサービスを、2017年度から順次開始していく方針だ。

●中期目標を1年前倒しで達成し、増収増益を果たす

 ドコモがこのタイミングでbeyond宣言を出した背景には、2017年度の中期経営目標を、前倒しで達成できたことがある。2014年10月の中期目標では、営業利益8200億円以上の目標が掲げられていたが、2016年度の実績では9447億円とそれを大きく上回った。内訳を見ても、1000億円以上を目指していたスマートライフ領域の利益が、2016年度に1119億円に達しており、業績は回復。次の成長に向けたステップを踏み出す時期が来ていたというわけだ。

 2016年度の決算は、前年対比で増収増益。営業収益は4兆5846億円、営業利益は9447億円で、事業分野別に見ても、通信事業とスマートライフ領域の両方が着実に成長していることが分かる。この数値を支えているのが、スマートフォンやタブレットの伸びで、前年同期比で9%増の3586万に達した。総契約者数も7488万まで伸びている。同時に、解約率も低下し、過去最低水準の0.59%となった。収益面ではドコモ光も貢献。契約数は340万と、前年同期比の2.2倍に増え、1ユーザーあたりの売上を示すARPUにも、250円分上乗せされた。

 競争環境が変化したことが、ドコモにとってはプラスに働いているようだ。ドコモは、家族での利用を促進するシェアパックを、2014年に導入。同年、iPhoneもラインアップに加えることで、他社への流出を抑止した。これに加えて、総務省のタスクフォースを経て施行されたガイドラインが、MNP利用を大きく減少させることになる。こうした変化に適応すべく、ドコモは長期利用者優遇を積極的に打ち出してきた。解約率が0.59%にまで下がったのも、そのためだ。新たに導入したシェアパック用のシンプルプランも、狙いはここにあると吉澤氏は語る。

 「ドコモを長くお使いになっている方、ずっとお使いいただいている方で、通話はしないが料金が高くなってしまうというところをフォローし、ドコモにとどまっていただく。そういう事業基盤を確固たるものにすることが、5Gにもつながっていく」

 総務省のガイドラインによって、端末の販売台数が減少することも懸念されていたが、ことドコモに関しては、「ほとんど影響がなかった」(吉澤氏)ことも、追い風になっている。販売台数が微減にとどまったのは、「スマートフォンからスマートフォン、フィーチャーフォンからスマートフォンへの取り換え需要が非常に旺盛だった」(同)ため。解約抑止の戦術が功を奏し、ドコモ内にとどまったユーザーが機種変更し、フィーチャーフォンからの移行も増えてARPUの向上にも貢献する……一連のデータからは、こんな好循環が生まれていることも見て取れる。

 一方で、「MVNOに対しては、競争の一面もあるが、連携、提携していく事業者と思っている」(吉澤氏)といい、契約者獲得の武器になっていることがうかがえる。MVNOの数は、「ドコモに限っていうと、全体の約10%」(同)にまで成長。およそ750万契約ほどのユーザーが、MVNOを介してドコモのネットワークを利用していることになる。MVNOに対しては、「ドコモのサービスを使っていただいたり、MVNO事業者が処理をしやすいよう、顧客システム連携もやらせていただいた」(同)と、協力の姿勢を見せる。

●5G時代を見据えた収益基盤の大転換は実現するか?

 ドコモが目指すのは、「事業構造の革新」(吉澤氏)だ。「通信だけで見るのではなく、ブロードバンドサービスは、付加価値の高いサービスと融合されたものとして見ていく」(同)というのが、目指す姿だ。5Gは高速、大容量、低遅延、多接続など、他の業種で必要とされる要件を満たす規格だが、ドコモのbeyond宣言は、まさにその特徴に沿った戦略といえるだろう。

 ただし、現時点では収益の目標などは明かされていない。「実際にどのくらいの規模になるのかは、まさに今から詰めていかなければならない」(吉澤氏)という状況で、あくまでビジョンが示された段階だ。具体的なサービスを、どのような形で見せていくのかは、今後の課題といえそうだ。

 特に、ARやVR、AI、FinTechなど、スタイル革新宣言の具体例として挙げられた新規領域については、必ずしもドコモがリードしている分野ではなく、GoogleやMicrosoft、Appleなどプラットフォームを持つプレーヤーも含め、上位レイヤーにも競合が多く、厳しい目で見ると、ドコモの青写真通りにことが進むのかは未知数だと感じた。

 足元では、Y!mobileやUQ mobileなどの、サブブランドとMVNOの競争も激化している。こうしたキャリアへの流出対策となる割引や新料金についても、「今期、追加でお客さま還元を計画している」(取締役常務執行役員 佐藤啓孝氏)というものの、まだ全体像は見えていない。第2弾のユーザー還元も、「数百億円規模になる」(同)というだけに、シンプルプランやシェアパック30と同程度のインパクトは期待できそうだが、具体的な内容が分かるのは、もう少し先になる。マーケットリーダー宣言を打ち出しただけに、ユーザーがあっと驚く料金施策を期待したいところだ。

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