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新宿中のカラスを拡声器で呼ぶ!? 歌舞伎町のカオスなパフォーマンスイベントに行ってきた

エキサイト Bit のロゴ エキサイト Bit 2016/10/24 内堀たかふみ

10月15日夜10時すぎ。新宿・歌舞伎町の一角に、時ならぬ行列ができていた。人の波の先にある廃墟のようなビルの壁面には“ビルと運命を共にする全壊する展覧会”なる文字。一体どういうことなのか!? しかもビルの中からはカラスの悲鳴も!?

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チケットを買って恐る恐る会場に潜入。壁には、「作品にはお手を触れないでください」という張り紙。その近くには「嘔吐禁止」のメッセージ。「芸術」と「嘔吐」という相容れない2つの要素がまじりあうビル、ますます危険な匂いがしてきた!

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4階へ…と受付の女性に言われて階段で上がると、フロアの前では、「とん汁」らしき汁物が振る舞われ、その奥のステージでは、砂嵐が流れるテレビ画面の隣で、ターンテーブルを回すナゾのDJたちの姿が。「とん汁とDJ」……。

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混乱した頭を抱えたまま3階へ降りるといきなり飛び込んできたのはさらにショッキングな映像だった!

録音したカラスの鳴き声を拡声器で流す

カラスの“はく製”を頭上高くにあげながら、実際のカラスの鳴き声を録音したものを“拡声器”で流し、国会議事堂前など都内をバイクや車で爆走! 仲間が人間に捕まったと勘違いしたカラスの大群に追いかけられる2人の若者の姿……。

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映像作品だけではい。こんな「オブジェ」も。

永遠に枯渇しない「性欲」を新たなエネルギー資源にしようと、三行広告に書いてある電話番号に男たちがかけてきたときの着信の電波を電気に変えるという(設定の)「性欲電気変換装置エロキテル5号機」。

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3人の現役ホストが1人の女性を「キレイですね」などと接客しつつ、彼女の似顔絵を描いている間のやり取りを録音。それをスピーカーで流し、と同時に、お世辞にも上手いとは言えない似顔絵を展示する「美とは何か」を考えるブース。

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さらに2階に降りると、ロボット掃除機の代名詞「ルンバ」に、床に接地するペイントローラーをつけて回転させ、床にさまざまな円模様を自由に描かせているではないか! 「キレイにする」という宿命から解き放たれ、羽生くんのようにフロアを舞い踊るルンバ……。

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つまりこれらが「作品」というわけか。ようやく事態が飲み込めてきた私のもとに現れたのが、そんな展覧会の仕掛け人、卯城(うしろ)竜太さん(39)。「Chim↑Pom」(チンポム)というアーティスト集団のリーダーだという。

ビルが建設されたのは前回の東京五輪があった1964年

――卯城さん、これはどういうことですか!?

「そもそもこの建物は『歌舞伎町商店街振興組合』のビルなんですが、この11月から取り壊され、建て替えられるということで最後、何かイベントができないかという話になったんです。

それでこのビルの歴史を調べてみると、建てられたのが1964年5月、つまり最初の東京オリンピックが開催される5か月前のことだと分かりました。そして現在、2020年2度目の東京五輪を前にして、東京中で再開発が行われる。そこに何かアイロニカルなものを感じたんです」

それを出発点として、カラスやホスト、性産業、ゴミ清掃……という歌舞伎町を想起させる作品につなげていったのだという。

さらに、4階、3階、2階のフロアのコンクリートを切り出し、そのまま真下の1階に積み重ねた「ビルバーガー」なるオブジェもあった。ビルの中に残っていた備品(ソファ、キャスターつきのイス、歌舞伎町のハザードマップ、傘、書類など)がそれぞれサンドしてあった。

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さてChim↑Pomは活動11年目。これまでの作品として、生身のメンバーが断食ダイエットによって即身仏のような姿になっていくさまをアート作品にしていたり、相手の口座番号を聞き出し、逆にお金を振り込むという「逆・オレオレ詐欺」、降臨させた「こっくりさん」の指示で、メンバーの背中に針でタトゥーを描くなど、さまざまなアート作品を世に送り続けてきた6人組だ。

「華々しく終わるのも新宿らしくていい」

そんなChim↑Pomにイベントを持ちかけたのは、かつては歌舞伎町のカリスマホストとして鳴らし、現在はホストクラブ4軒、ゴールデン街でバーを3軒経営する実業家・手塚マキさん(38)。もともとこのビルの1階にある、24時間生放送配信スタジオ「TOCACOCAN(等価交換)」の運営を取り仕切っていた。

このスタジオは今年9月末までの1年契約で、歌舞伎町の今を切り取り、さまざまなメッセージをライブで発信するというチャレンジングな空間だった。ビルの取り壊しとともに、もちろんスタジオも壊される。手塚さんはその最後を「こうやって華々しく終わるのも新宿らしくていいんじゃないですかね」と笑顔で語った。

そんな“フィナーレ”に華を添えるように、4階、2階、地下1階と各階のライブスペースでは、イベントに趣旨に賛同しほぼノーギャラで出演した気鋭のエンターテイナーがライブパフォーマンス! 

ものまね芸人・ミラクルひかるが「かもめが跳んだ」を歌えば、外のTOCACOCANスタジオ前ではパフォーマンス集団「悪魔のしるし」が尾崎紀世彦の名曲「また逢う日まで」を、反対側にある歌舞伎町交番に向かって3回繰り返し熱唱! 

「VMO」なるパフォーマンスユニットは照明機材のストロボ連射と大量スモークで何も見えない中で観客にダイブし、今最も危険で最も面白いバンドと言われるNATURE DANGER GANG(ネイチャーデンジャーギャング)のライブを観た手塚さんはその面白さに感極まっていた。

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イベントの終了迫る朝6時、Chim↑Pomメンバーがスタジオ前に登場、新宿中のカラスをこの一か所に呼び集めるゲリライベントを、交番のお巡りさんが見守る前で敢行しようとした。

だが、当日は上空を見てもカラスがまったく飛来していないことがわかり、残念ながら中止となってしまった。カラスはやっぱり勝手である。

総じて。新宿は元気だった。その元気の埋蔵量は渋谷や原宿の比ではないと

実感した今回のイベントだった。

展覧会「また明日も観てくれるかな?~So see you again tomorrow, too?~」は歌舞伎町振興組合ビル(東京都新宿区歌舞伎町1-19-3)で31日(月)まで。終了後にはビルとともに破壊され、展示作品もぜんぶ壊される。だから「全壊する展覧会」。28日は今回と同様のライブイベントも開催(出演者ラインナップは要問合せ)。

(内堀たかふみ)

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