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新指針取り消して 意見交換で被害者ら批判

毎日新聞 のロゴ 毎日新聞 2014/05/01 毎日新聞

 「新指針を取り消してほしい」−−。水俣病の公式確認から58年を迎えた1日、熊本県水俣市であった犠牲者慰霊式。認定基準を巡って混迷が深まる中、慰霊式後に石原伸晃環境相と意見交換した被害者団体からは厳しい批判の声が上がった。環境省が3月、認定基準の運用について新指針を出して以降、被害者団体が石原環境相と直接対面するのは初めて。「水銀摂取の証明資料を求める新指針は新たな患者切り捨てだ」と批判する団体側に対し、国側は「硬直的な運用にならないようにする」とかわそうとするだけで、両者の溝は埋まらないままだった。【松田栄二郎、笠井光俊】

 意見交換には熊本、鹿児島両県の主要10団体が出席。このうち水俣病被害者互助会(水俣市)が新指針の取り消しを求める要望書を提出した他、他の団体からも現行の認定制度や水俣病被害者救済特別措置法に基づく未認定患者救済策などに対する批判が相次いだ。

 認定基準を巡っては、昨年4月の最高裁判決が感覚障害だけでも水俣病と認めたことを受け、環境省が今年3月に感覚障害のみの申請者に対応する新指針を提示。しかし、水銀摂取を証明する客観的資料の提出を求めたため団体側は「事実上不可能なことを求めている」と反発している。

 意見交換会には、県に認定申請を棄却された後、国の公害健康被害補償不服審査会が昨秋に「認定相当」と逆転裁決した下田良雄さん(66)=同市=も出席し、新指針の撤回を強く要求。これに対し、石原環境相とともに出席した北川知克副環境相は「審査の公正さを確保するためにも客観的資料が必要」と説明し、理解を求めた。

 意見交換会終了後、下田さんは「北川副環境相の答えは逃げ口上にしか思えない」と吐き捨てるように語った。また、最大の未認定患者団体「水俣病不知火患者会」の大石利生会長(73)は「被害の全容解明に向けた住民の健康調査も全く進んでおらず、国のやる気が感じられない」と話した。

 一方、水俣病患者らでつくる水俣市立水俣病資料館の「語り部の会」の緒方正実会長らは1日、石原環境相や蒲島郁夫県知事と面会し、水俣病関連の資料を収集して国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産への登録を目指す活動を支援するよう求める要望書を手渡した。石原環境相は「県や市と話し合いたい」と前向きな姿勢を示した。

 収集する資料は▽水俣病関連訴訟の裁判資料▽水俣病発生当時の被害者らが使っていた漁具や生活用具▽個人や団体で所有する写真や映像▽患者らが残したメモ−−など。水俣病公式確認から58年を迎え、散逸が懸念されている。

 緒方会長は石原環境相らに「昨年、世界規模で水銀を規制する水俣条約が採択され、人類が初めて経験した水俣病の教訓を世界の人たちのため、後世のために引き継がなければいけない」と協力を求めた。

 ◇「法律の中での救済終了が全ての終了」

 水俣病の原因企業チッソの森田美智男社長は1日、水俣病被害者救済特別措置法(特措法)の救済対象者が確定すれば、同社による被害者救済も完了するとの考えを示した。熊本県水俣市であった水俣病犠牲者慰霊式に出席後、報道陣の取材に「我々としては法律の中での救済の終了が全ての終了だと思っている」と答えた。

 また、特措法の救済申請締め切り(2012年7月末)から2年近く経つことや、最近の株式市況が回復傾向にあることから「条件が整っている」とし、特措法による救済完了後、液晶などを生産する同社の100%子会社「JNC」の早期上場を目指す考えも示した。【松田栄二郎】

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