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日本の製造業×IoTのリアル、活用が進まない理由と解決策

ザテレビジョン のロゴ ザテレビジョン 2017/09/14
日本の製造業×IoTのリアル、活用が進まない理由と解決策 © KADOKAWA CORPORATION 提供 日本の製造業×IoTのリアル、活用が進まない理由と解決策

 いま、あらゆる業界/市場において「IoT活用」への期待が高まっている。その中でも、有力な活用領域のひとつと目されているのが製造業だ。製造業の現場、つまり工場や生産プラントに設置されるさまざまな機器やセンサーからのデータを収集/分析/可視化し、活用することで、生産業務の改善、人員配置の最適化、機器の予防保守、製品歩留まりの向上など、幅広いメリットがあると言われる。実際に、メディアを通じて、国内外における「スマートファクトリー」「IIoT(Industrial IoT)」の成功事例もよく目にするようになった。  ただ、ひとくちに「製造業」と言っても、実際にはその規模も内実も多様である。また、長い歴史を重ねてきた製造業の現場にまったく新しい仕組みを導入するうえでは困難も予想される。実態はどうなっているのか。  8月28日開催の「IoT&H/W BIZ DAY 4 by ASCII STARTUP」では、「メディアではあまり報じられない製造業IoTのリアル」と題し、コンサルティングやSI、製造業向けメディアの仕事を通じて日本の製造現場の実態をよく知る三氏によるパネルディスカッションが開催された。 日本の製造業は生産現場のIoTデータを「活用」できていない  アペルザで製造業向けメディア「ものづくりニュース」の編集長を務める剱持知久氏は、国内製造業におけるIoTの「実態」として、経済産業省がまとめた国内製造業に対する調査結果(ものづくり白書、2016年)を見せた。それによると、「生産プロセスにおいて何らかのデータ収集を行っている」製造業は、回答した製造業全体の66.6%に上る。 生産プロセスにおいて「何らかのデータ収集を行っている」国内製造業は66.6%(出典:経産省「ものづくり白書」2016年) 生産プロセスにおいて「何らかのデータ収集を行っている」国内製造業は66.6%(出典:経産省「ものづくり白書」2016年)  しかしその一方で、そのデータを可視化し、トレーサビリティ管理や生産プロセスの改善や向上などに「活用している」企業は、全体の15~16%にとどまる。「(今後)実施する計画がある」という回答まで含めても、20%前後という低い割合だ。つまり、IoT活用への関心は決して低くないものの、実態としてその「活用」は進んでいない。 収集したデータを「活用している」企業は15%程度で、「実施計画がある」を含めても20%前後。ただし興味を持つ企業群は2015年比で大幅に増えていることがわかる(出典:経産省「ものづくり白書」2016年) 収集したデータを「活用している」企業は15%程度で、「実施計画がある」を含めても20%前後。ただし興味を持つ企業群は2015年比で大幅に増えていることがわかる(出典:経産省「ものづくり白書」2016年)  IoT活用(データ活用)が進んでいない理由について、製造業へのFAコンサルティングを行い、国内外の工場の実態に精通するFAプロダクツ 代表取締役会長の天野眞也氏は、「予算や人員といったリソースの不足」「工場現場での拒否感」という2つの理由を挙げた。  「実際にIoTが入っているのは大手だけ。中小企業は、IoT導入の機運が高まっても予算が立たない、やる人がいない、だから入りづらいというのが現状」「日本の工場は縦割り組織。IoT導入を主導するのは生産技術部門だが、工場には(製造現場を取り仕切る)製造部門がある。現場の従業員にセンサーを付けて業務を可視化し、業務を効率化していくという話は、経営層にとっては嬉しくても、全部あけすけになってしまう現場部門にとっては嬉しくない部分もある」(天野氏)  また、工場への自動機やロボットの導入を手がけるSIベンダー、オフィス エフエイ・コム 代表取締役社長の飯野英城氏は、66%の製造業が実施しているという「データ収集」の内実そのものに疑問を呈する。明確な目的のないまま、やみくもにデータを収集しているだけではないのか、という指摘だ。  「(経産省調査では)66%がデータを収集していると言うが、活用の進まない根本には『活用できるデータではない』という理由がある。何のためにデータを収集するのか、どう活用するのかを考え、(活用するうえで必要な)きちんとした粒度や精度でデータを取り出すことが重要。それを考えず、経営側や生産技術部門がどんどんデータを取る、製造現場はどんどんデータを取られる、だけでは先に進まない。それが日本の現状なのでは」(飯野氏) 解決のヒント:ビジネスの視点から工場の役割を再考する  生産現場におけるIoT活用について、天野氏はまず、ビジネス、経営の視点が欠かせないことを指摘した。技術ではなくビジネスの視点からIoT活用を考えること、具体的には自社の工場にどのような「強み」を持たせるのか、そのためにはIoTをどう活用すべきなのかを考えることからスタートしなければならない、という意味だ。  「たとえば『IoT活用で生産量が増えた』『商品が速く作れるようになった』と言っても、その商品が市場を取れないのでは意味がない。工場側の視点だけで考えた『いい工場』、投資対効果の見合わない『いい工場』などありえない。IoT活用を通じて、自社の工場をどう改善してどんな強みを持たせるのか、どんな市場を狙ってどんな商品を作るのかといった、ビジネスの視点から一気通貫で考えることが必要だ」(天野氏)  経営から工場まで「ビジネスの思想がしっかりと統一されている」事例として、天野氏はドイツの自動車メーカー、ダイムラーの工場を視察した際のエピソードを紹介した。ダイムラーの高級車部門であるメルセデス・ベンツでは、自動車を構成する部品の内製率が8割を超えるという。日本の自動車メーカーの場合、より多くの部品を下請けメーカーに外注し、それを自社工場で組み立てることでコスト削減を図っているが、メルセデスが狙うビジネスはそれとは異なるからだ。  「メルセデスの場合、小型車でも400万、500万円で販売しなければならない。そのためには、たとえばドアを閉めたときの心地よい質感すら重要だ。ただ、外注で生産した部品を組み立てても、そこまでの(質感を実現する)精度は出せない。そこで自社工場内に大きなトランスファープレスライン(部品プレスライン)を設け、精度の高い部品を生産している。一方で、組み立て工程は工賃の安いアジアの工場に外注しても構わないのだと言っていた。つまり、自社の製品で市場のどのポジションを狙うのかが明確であり、工場においてもメルセデスというブランドのために何をすべきなのがしっかりと理解されている」(天野氏) ダイムラーの事例。自社のビジネスがどうあるべきか、そのために工場はどんな役割を果たすべきかという「思想」が一貫しているという ダイムラーの事例。自社のビジネスがどうあるべきか、そのために工場はどんな役割を果たすべきかという「思想」が一貫しているという  同じように、自社のビジネス、ブランドに対する「思想の統一」は、マスカスタマイゼーション化を推進するドイツBMWの工場でも見られたと、天野氏は具体例を挙げながら説明した。 日本式「カイゼン」が工場改革の足を引っ張る?  ビジネス視点からの全体最適化が必要であるという議論の中で、剱持氏は、それを実践していくうえでは、日本の製造業が多く採用してきた「カイゼン」のコンセプトが障害になりうることを指摘した。  「カイゼン(活動)によりカスタマイズされた結果が、全体の図面やデータに落とし込まれているかというとそんなことはない。カイゼンの結果、現場の状況はその現場の人にしかわからない状態になってしまっている。ビジネス視点から全体最適化を図り、データと同期させていく場面で、工場内にそうした現実があることが障害、難しさにつながるのではないか」(剱持氏)  もちろん、ここで剱持氏はカイゼンを全否定しているわけではない。カイゼン活動によって個別最適化だけが進み、全体最適化を難しくしてしまうことを危惧しているのだ。剱持氏は「ビジネス視点からカイゼンをどう生かしていくのか、しっかりと見ることも必要だ」と語った。  ちなみに天野氏は、日本と欧州、アジア(中国、ASEAN)の工場それぞれの特徴として、日本は「自動化が進んでおり、働く人のレベル(労働意欲など)が圧倒的に高い」、欧州は「工場のルール化、しくみ化をしっかりと行うことで高品質を担保している」、アジアは「労務費が高くないので、自動化推進よりも人海戦術」だと答えた。  日本の工場は、現場の人の力量で補っている(補ってしまえる)部分が大きいからこそ、統一的な「思想」やルール、しくみの導入が後手に回ってしまっているのかもしれない。飯野氏も、工場に導入されている技術は日本も欧州も大差ないが、欧州のほうがよりグローバルなルール統一を意識した技術導入が多いと述べた。 これからすぐに国内製造業がやるべきこととは  こうした議論を受けて、国内製造業はこれからどのようにIoTの取り組みを進めていくべきか。最後に各氏がそのポイントを語った。  天野氏は「『IoTは手段か目的か』という頭でっかちな議論よりも、とにかくやってみることが大切」だと強調した。先に述べたとおり、現状では「実際にIoTが入っているのは大手だけ」だが、「本来ならば、中小企業が率先して導入すべき」だと語る。  「中小製造業がIoTに取り組むのは、生き残りを賭けた最後の砦になると思う。中小が使わない手はない。8、9割成功するとわかっているのにまだ石橋を叩いてやらないという姿勢は改めて、6割方OKならばフルスイングしていく、となってほしい。慎重に目的を見据えて……と考えるよりも、ガンガンやっていけばいい」(天野氏)  飯野氏は「日本の製造業は、工場のIT化が加速した20年前のルールに縛られているのではないか」と課題を指摘した。当時はPCやソフトウェアが次々に導入されていった時代だが「クラウドも、データ活用もなかった」(飯野氏)。そんな時代のルールに縛られ、現在のクラウド活用やデータ活用が「ルールがないからやらない」になってしまっているのではないか、むしろ「ルールがないからこそやってみる」にしなければならないと語った。  「今後は日本こそ、製造業の持つ豊富なノウハウをデータ化し、サービス化していかないといけない時代。このままだと日本は危ないのではないかと思ってしまう。皆さんも一刻も早くデータを収集し、活用することに取り組んでいただきたい」(飯野氏)  剱持氏は、IoT活用においては現場だけでなく、経営者のチャレンジ精神とリーダーシップも欠かせないと語った。経営、ビジネスの視点からIoT活用を考えるうえでは、経営者側の理解も当然不可欠なものになる。  「失敗例を見ていくと、経営者が及び腰だった、あるいは『とりあえずやっといて』と丸投げだったケースが目立つ。現場の推進力も、マネジメントの理解も両方必要だ」(剱持氏)  最後に天野氏が、ソリューション提供側も導入ハードルの低いIoTソリューションを開発し、提案していかなければならない義務があるとまとめ、同セッションは終了となった。 ■関連サイト アペルザ「ものづくりニュース」 FAプロダクツ オフィスエフエイ・コム

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