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日本企業でも増えている「イマドキ肩書」の威力 「営業第一部部長」「第二課課長」はもう古い?

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/08/13 07:40 小谷 敦子
日本企業でも増えつつある、ユニークな肩書。あなたはいくつ知っていますか?(写真:saki/PIXTA) © 東洋経済オンライン 日本企業でも増えつつある、ユニークな肩書。あなたはいくつ知っていますか?(写真:saki/PIXTA)

 CMOはチーフ・マーケティング・オフィサー、つまり最高マーケティング責任者、CTOはチーフ・テクノロジー・オフィサー、つまり最高技術責任者。こうした役職は、日本でもおなじみになってきました。それでは「CHO/CHRO」はどうでしょうか? 正解は、チーフ・ヒューマンリソース・オフィサー、すなわち、最高人事責任者です。経営戦略と一体となった人事戦略の推進者をこう称する企業が増えてきています。

 人事の仕事とは、「人材を活用して組織を発展させること」で、どんな時代になっても変動因子が最も多い「人」が相手の仕事です。売り上げのような直接的な数値目標はないため、業務への貢献度も測りにくい職務かもしれません。だからこそなのか、最近、人事の仕事を受け持つ役職にユニークで面白い名前が目立つようになってきました。

CHOのもう1つの肩書は?

 前述のCHOには、実はもう1つ肩書があります。チーフ・ハピネス・オフィサー、その名のとおり企業の「幸福」をマネジメントする役員のことです。社員の働きがいを引き出したり、心身の健康を細かく観察したりするためのさまざまな取り組みを行います。グーグルなどシリコンバレーの企業で10年ほど前から、チーフ・ハピネス・オフィサー職を設ける動きが広がってきました。

 幸福とまでいうと大げさな感じもしますが、社員が心身ともに健康で前向きに仕事に取り組み、気持ちよく働いてくれると、生産性向上にもつながり、また離職防止にも効果が期待できることが科学的にも証明されてきており、社員の幸せを引き出すというゴールを役職名としているのです。

 働き方改革の旗振りの中、日本でもチーフ・ハピネス・オフィサーを取り入れたケースもポツポツ出てきました。個人の時間を大切にする傾向のあるフランスでは、すでに150社が取り入れているそうです。社員を幸せにすることが任務の仕事というのはワクワクする気持ちになります。

 一方、筆者が以前働いていたセールスフォース・ドットコムでは、人事部門は「エンプロイー・サクセス(Employee Success)」と呼ばれていました。企業の目的は「カスタマー・サクセス」ですが、それを支えているのは社員であり、その社員の成功を支援するのが人事部門のゴールだという意味でつけられたものでした。

 CHO職に限らず、ユニークな肩書を設けることでイメージアップを図り、人材採用戦略に活用しようという企業も現れています。アメリカの給与コンサルティング企業パール・メイヤーが2018年に実施した調査では、アメリカ企業の40%が採用候補者を惹きつけるために肩書を利用しており、この割合は2009年調査の31%から上昇しています。

 同社の調査部門担当バイスプレジデントであるレベッカ・トーマン氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の取材に、「肩書によって企業は、その社員がいかに影響力がある、または重要な存在であるかをほかの社員に示すことができます。また、今日の革新的な職場環境では、実際の業務内容を表していない、あるいは社員の潜在能力を見いだせないような退屈な肩書に魅力を感じる人はいません」と語っています。

一気に浸透したデータサイエンティスト

 日本の企業でよく見かけるのは、営業第一部部長、第二課課長など、組織の部門を秩序立った名前で呼び、そこの課長という肩書です。これは日本の企業が組織主体で構成されてきたことを物語っているようです。

 社内の組織としてみれば、こうした組織体の名称はわかりやすい部分もあるのですが、外部の人材を惹きつける意味では、業務内容やその職務の目標がわかるほうが、応募する段階からやる気を出してもらえる効果があるかもしれません。

 一方で、新しい職種が生まれていることも、ユニークな肩書が増えている理由の1つです。

 すでにおなじみのデータサイエンティストは、ここ数年で脚光を浴びている新しい職種の代表格です。データを分析して科学的な方法で知見を見いだす仕事ですが、デジタル社会の到来でデータの利用価値は無限と期待されている中、どんな会社でもデータを分析することが重要になってきています。このデータサイエンティストも役職名とミッションが同期している明確な肩書でしょう。

 そのほかにもこんな肩書が出てきています。

 ピープルアナリスト

 いわば人事領域に特化したデータサイエンティストともいえるのが、ピープルアナリストです。データを駆使し最適な人材マネジメント戦略を立案します。実際に職種として設けている企業はまだ多くはありませんが、日本企業の人事にもピープルアナリティクスの手法が浸透しつつあります。

 新卒採用にこの手法を取り入れた日立製作所では、既存社員の適性テストの結果などからハイパフォーマーのパターンを4タイプに分類。それぞれのタイプにあてはまる社員にインタビューを重ね得られた「責任感」「俯瞰性」などの定性情報を掛け合わせ、人材要件と選考基準に客観的な判断軸を確立しました。結果、求める人物像に合致した人材を多く採用することに成功したといいます。

 また、退職者の傾向を分析したデータを使って退職しそうな人物を予測し、個別に離職防止対策を行うといった取り組みをしている企業もあります。

 エバンジェリスト

 IT業界で時々見かける職種に、エバンジェリストという役職があります。エバンジェリストとは、もともとキリスト教の伝道師を指す言葉ですが、IT業界においては、新しいテクノロジーや、そのトレンドをユーザーや市場にわかりやすく説明し啓蒙を図り、その普及に向けて努めることが任務の仕事です。何かのテクノロジー専門の場合には、テクノロジー名+エバンジェリストとして肩書にするケースが多いようです。

ドロップボックスが生み出した新職種

 コミュニティマーケター

 自社の商品やサービスのファン同士が結びつくコミュニティーづくりを仕掛ける、新しいタイプのマーケターです。イベントなどファン同士が語り合える場を設定することで、商品・サービスへの愛着をさらに高めてもらうとともに、SNSなどを通じて周囲に商品・サービスの魅力を広めてもらいます。

 コミュニティーとの対話から得られたファンの意見を、商品改良や販売促進に役立てることもあります。クラウドサービスでトップシェアをひた走るアマゾン・ウェブ・サービスの躍進の裏にも、1万人を超えるユーザーコミュニティーの存在がありました。

 グロース・ハッカー

 グロース・ハッカーとはシリコンバレーで生まれた新しい職種です。2010年にアメリカのドロップボックスのシーン・エリス氏が発案した肩書といわれています。会社の製品やサービスを飛躍的にグロース(成長)させることを使命としていて、新たなアイデアでマーケティング領域を拡大し、事業を加速します。

 ウェブサービスやアプリの業界に多く見られる職種で、マーケターとエンジニア両方のスキルを駆使して実行するケースが増えてきました。SNS連携や友人招待の仕組みを巧みに使い、ユーザー数を短期間で急速に増やしたドロップボックスの手法は、グロース・ハックの代名詞的事例としても有名です。まさしく起業家のようにタフな精神で、新しいイノベーションを推進する任務です。

 さて、このような新興職種やユニークな役職名には、いくつか共通点が見られます。それは、①ビジネスの成長に不可欠であること、②ミッションが明確であること、そしておそらく最も重要な点として、③やり遂げるには高い専門性やプロフェッショナリズムが必要であることです。それを名称で表すことで新しい役職が生まれているのです。

 もし、あなたの会社でユニークな肩書を取り入れたいとなった場合、大切なことは、それぞれの役割の目的と責任を明確にしたうえで肩書を考案することです。格好いい肩書にすることばかりにこだわらず、安易な略称や業界用語の使用を避け、何の仕事をするのか直感的に伝わるシンプルな言葉を使うよう心がけましょう。きっと社員のやる気を引き出せるはずです。

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