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村尾泰郎が選ぶ2016年のUSインディシーン注目作 個性が光った新人からベテラン勢まで

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/12/30 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

1.ANOHNI『Hopelessness』

2.Cass McCombs『Mangy Love』

3.The Lemon Twigs『Do Hollywood』

4.Andy Shauf『The Party』

5.Whitney『Light Upon the Lake』

6.Bon Iver『22, A Million』

7.Lambchop『FLOTUS』

8.Deradoorian『The Expanding Flower Planet』

9.Frankie Cosmos『Next Thing + Fit Me In』

10.V.A.『Burger Records Nuggets』

 デヴィッド・ボウイやプリンスなどビッグ・スターが相次いでこの世を去り、ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞するなどニュースには事欠かなかった2016年の海外のロック・シーン。そんななかで、ここではアメリカンのインディー・シーンに注目して10枚選んでみた。 (参考:ラムチョップが4年ぶり新作で切り開いた新境地 USインディー・シーン注目の5枚)  気持ちとしては順不同だが、とりわけ強いインパクトがあったのが、Antony and the Johnsonsとして活動していたアントニー・ヘガティの新ユニット、ANOHNIのファースト・アルバム『Hopelessness』だ。Antony and the Johnsonsのオーケストラルなバンド・サウンドから一転。ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、ハドソン・モホークという鬼才達とコラボレートした本作は、壮麗さと混沌を併せ持つエレクトロニックなサウンドを展開。そこに性別を越えたアントニーの歌声が厳かに降臨する。社会問題を歌詞に織り込むなど、閉塞した現代社会に戦いを挑むアルバムだった。  そして、そんな『Hopelessness』と近い質感を感じさせたのが、Bon Iver『22, A Million』だ。オーガニックでふくよかな歌に、エレクトロニックなサウンドが亀裂を入れ、緊張感に貫かれたスケールの大きな音作りが印象的だ。どちらのアルバムも、ミュージシャンが自分を取り巻く世界と真っ正面から向き合ったアルバムで、それぞれに新境地を切り開いていた。  また、アルバムを出す毎に評価を高めてきたキャス・マコームスはノワールな官能性で。Wilcoのジェフ・トゥイーディが絶賛したアンディ・シャウフは繊細な歌声と緻密に作り込まれたサウンドで、内省的な歌に磨きをかけていて、どちらもこれからの活動がますます楽しみなシンガー・ソングライター達だ。  新人では多彩な才能が次々と登場。なかでも異彩を放っていたのが兄弟ユニット、The Lemon Twigsだ。70年代ロックを思わせるメロディと凝った曲の展開は、10代とは思えないマニアックさ。それでいて、無邪気なポップさも兼ね備えていて、アリエル・ピンクの甥っ子みたいなユニークな個性が光っている。  アルバムをプロデュースしたのはFoxygenのジョナサン・ラドーだが、Whitneyのアルバムも彼のプロデュースによるもの。Whitneyは、元Smith Westernsのマックス・カカセクと元Unknown Mortal Orchestraのジュリアン・アーリックによるバンドで、ストリングスやホーンを盛り込むなど、南部サウンドへの愛情とモダンなポップ・センスがまろやかに融け合っていた。  そのほか、ほとんどの楽器を自分でこなしてエキゾチックなサウンドを生み出す元Dirty Projectorsのデラドゥーリアンや、宅録で親密な歌を聴かせるフランキー・コスモスなど、独自の世界観を持った女性の新人達も活躍。そして、次々とカセットをリリースして話題を呼んだ<Burger Records>の日本独自のコンピは、21世紀版『ナゲッツ』として楽しめるガレージ風味満載の楽しいアルバムだった。  この10枚のなかで、もっともベテランなのが、バンド結成30年目を迎えたカート・ワグナー率いるLambchopだろう。これまでは芳醇なアメリカーナ・サウンドを聴かせてくれたが、今回はエレクトロニックなビートを取り入れ、ボーカルにエフェクトをかけるなど、ヒップホップやR&Bの要素を独自に昇華。それでいて、持ちまえのメロウネスもしっかり感じさせて深夜の愛聴盤になった。こういうバンドが息が長い活動を続けているのも、USインディー・シーンの醍醐味のひとつ。末永く愛したい。 (村尾泰郎)

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