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東芝が決算「見通し」を発表 なぜ「短信」じゃないの?

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2017/05/16
東芝が決算「見通し」を発表 なぜ「短信」じゃないの?: 決算「見通し」発表に至った経緯を説明する綱川智社長 © ITmedia NEWS 提供 決算「見通し」発表に至った経緯を説明する綱川智社長

 既報の通り、東芝は5月15日に2016年度の通期決算の見通しを発表した。

 東芝は東京証券取引所(東証)の第1部に株式を上場している。通常、上場企業は決算速報を「決算短信」として開示するが、同社はそれを見送ったことになる。なぜなのだろうか。

●そもそも「決算短信」とは?

 上場企業は四半期ごとに「四半期報告書」、年度ごとに「有価証券報告書」を財務局に提出する義務を課されている。提出期限は前者が四半期終了日から45日以内、後者が年度終了日から3カ月以内となる。

 これらの報告書には決算に関する情報も当然に含まれているが、特に有価証券報告書で通期決算を知るには最長で3カ月待たなければならない。投資家が「投資」「引き上げ(減資)」の判断をする場合、このタイムラグは極力短い方が良い。言い換えれば、決算をなるべく早く発表してくれた方がありがたい。

 そこで登場するのが決算速報である「決算短信」だ。もともと、決算短信は「上場企業の決算速報の様式を標準化(統一)する」という観点で登場したもので、上場企業は証券取引所が定めた様式に沿って作成し、開示することを求められる。

 東証では、通期の決算短信の開示時期を「年度末から45日以内、できれば30日以内」としており、年度末から50日を超過して通期決算を公表する場合は遅延理由と次年度以降の開示計画について明らかにすることを求めている。

●なぜ東芝は決算短信を「開示」しなかったのか?

 四半期報告書や有価証券報告書は、上場企業にとって法的に作成を義務づけられた書類となる。提出期限は先述の通りだが、財務局から承認を得られれば提出期限を延長することはできる。しかし、その承認を必ず得られるとは限らない。延期の承認を得られなかった場合は、証券取引所に報告書を提出できずに一発で「上場廃止」になるリスクもある。

 東芝が2016年度第3四半期の四半期報告書(≒決算)提出において、3度目の延期を申請せず、独立監査人の結論を待たずに発表したのは、上場廃止のリスクを少しでも減らすことを重視した結果であると思われる。

 一方、同社が今回の通期決算で決算短信を開示せず、代わりに決算の「見通し」のみを発表した大きな理由として、独立監査人であるPwCあらた監査法人(PwCあらた)による監査作業が完了していないことが挙げられる。

 決算短信は、決算を迅速に開示するという目的から独立監査人(監査法人)からのレビュー・監査対象ではない。そのため、独立監査人によるレビュー・監査作業が完了していない状態でも開示はできる。

 ただ、一般的には独立監査人によるレビュー・監査作業が完了した状態で決算短信を出す企業は多い。また、完了前に出す場合は、企業と独立監査人との間に大きな意見相違がないことが前提となる。

 もしも、同社が監査作業完了を待たずに通期決算短信を開示すれば、PwCあらたとの対立が深まり、法定期限である6月30日までに2016年度の有価証券報告書を提出できない可能性が高まる。一方で、決算短信を出さないことは、投資家からすると投資判断の遅れによる不利益につながりうる。

 PwCあらたとの関係悪化を避けつつ、投資家にも情報提供できる「落としどころ」として東芝が取った手段が、今回の決算「見通し」発表といえる。

●「決算」をめぐる山場はむしろこれから

 「見通し」ながら決算を公表した東芝。次の見どころは、2016年度の「有価証券報告書」だ。

 有価証券報告書には独立監査人の監査報告書を添付する必要がある。この報告書でPwCあらたが「否定的結論」あるいは「結論の不表明」を表明した場合、東証は基準に基づき同社の株式の上場廃止を検討する可能性が高い。

 「無限定の結論(適正意見)」「限定付結論」のいずれかを得られるように、同社はPwCあらたと協力して決算作業を進める必要がある。

 また、報告書を法定期限の6月30日までに財務局に提出できるかどうかも焦点だ。東証のルールでは、財務局に提出した日から1カ月以内に東証にも有価証券報告書を提出しなければならない。先述の通り、財務局の承認を得られれば提出を延期できるが、その場合は、延長期限から8日以内に提出しなければならない。

 提出期限延期の有無を問わず、期日までに有価証券報告書を提出できなかった場合、東証は東芝の株式の上場廃止を決定する。

 もう1つ、見どころがある。それは「債務超過」だ。

 債務超過は株主資本(純資産)額よりも債務額の方が多い状態。今回東芝が発表した通期決算見通しでは、債務超過額が5400億円となっている。2017年度決算でこれを解消できない場合、東証は東芝の株式の上場廃止を決定する。

 東芝は、4月に分社した東芝メモリの売却益を原資として債務超過を解消する方針だ。しかし、東芝メモリ売却をめぐって、NANDメモリ事業で協業している米Western Digitalが5月14日(現地時間)付で国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てたため、売却手続きが予定通りに進まない可能性が生じた。

 2018年3月31日までに東芝メモリの売却手続きを完了できなければ、東芝が上場廃止となる可能性はより高まる。

 東芝をめぐる経営環境は、より厳しさを増している。今後、同社の経営陣がどのような判断をしていくのか、注目したい。

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