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東芝四半期決算の「結論の不表明」 一体何がマズいの?

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2017/04/12 18:30
東芝四半期決算の「結論の不表明」 一体何がマズいの?: 「結論不表明」でも決算を行った理由を説明する東芝の綱川智社長 © ITmedia NEWS 提供 「結論不表明」でも決算を行った理由を説明する東芝の綱川智社長

 既報の通り、東芝は4月11日、2回の延期を経て2016年度4〜12月期(第3四半期までの累計)決算を発表した。

 この決算について、同社は独立監査人であるPwCあらた有限責任監査法人(以下「PwCあらた」)から「結論の不表明」を記した四半期レビュー報告書を受領した。これは、東証1部に上場している企業としては極めて異例の事態だ。

 監査法人が決算に対して“結論を表明しない”ことは非常に重大な意味を持つが、いまいちピンと来ない人もいるはずだ。そこで、この記事では「結論の不表明」の持つ意味と、それが東芝にもたらしうる影響を解説する。

●四半期決算に対するレビュー意見は大きく「4種類」

 東芝のような上場企業は、本店の所在地(会社の登記上住所)を所轄する財務局に会計年度の第1〜第3四半期決算については「四半期報告書」、通期決算については「有価証券報告書」を提出する義務がある。

 これらの報告書には、必ず独立監査人(監査法人)による確認書を添付する必要がある。そのため、四半期報告書には「四半期レビュー報告書」、有価証券報告書には「監査報告書」が必ず添付される。

 四半期レビュー報告書は企業が作成した決算(財務諸表)について、不適正な表示を疑わせる点がないかどうかを報告するもので、大きく以下の4つの結論が用意されている。

・無限定の結論……適正である(不適正表示の疑いはない)

・限定付結論……一部に不適正表示の疑いがあるが、決算全体に否定的な影響はない

・否定的結論……一部に不適正表示の疑いがあり、決算全体に否定的な影響を与える可能性がある

・結論の不表明……判断材料の不足などにより、不適正表示の有無について判断できない

 独立監査人が「無限定の結論」以外の結論を出す場合、報告書内にその根拠を記すことも義務づけられている。

●「結論の不表明」は上場廃止基準に含まれる

 四半期レビュー報告書のうち、「無限定の結論」と「限定付結論」については株式上場を維持する上で直接の影響は及ぼさない。

 しかし、「否定的結論」と「結論の不表明」については、そのことが株式市場の秩序を乱すと各証券取引所が判断すれば、上場廃止とする可能性がある。つまり、証券取引所で株式を売買できなくなってしまうかもしれないのだ。

●なぜ「意見表明」を待てなかったのか?

 2016年4〜12月決算についてPwCあらたが結論を示さないまま決算発表をしたことで、東芝は上場廃止基準を1つ満たした。これが、「結論の不表明」のマズい点である。

 であれば「決算を再々延期して、PwCあらたが結論を出してから決算発表をすれば良いのでは?」と思うだろう。実際に、決算会見の質疑応答でも同様の質問が記者からも寄せられた。しかし、東芝は決算発表を「強行」した。それはなぜだろうか。

 まず、東芝は今回の決算発表を2度延期していることに注目したい。本来は2月14日に発表される予定だったが、3月14日にいったん延期し、さらに4月11日までに再延期したのだ。

 上場企業は、四半期報告書または有価証券報告書を証券取引所が定めた期限内に提出できなければ上場廃止となる。レビュー結果による上場廃止が「可能性」の基準であるのに対し、報告書の不提出による上場廃止は「確実」な基準となっている。

 決算の再々延期が財務局から承認されず、結果として証券取引所にも提出できず上場廃止になるくらいなら「結論の不表明」状態でも提出することで、そのリスクを少しでも遠ざけたい――東芝はそう考えたものと思われる。

 また、決算発表を延期する原因となった米Westinghouse(WEC)の一部経営陣による「不適切なプレッシャー」に関する内部通報について、東芝の監査委員会は調査の上で以下のような見解を示したこともポイントだ。

・2016年9〜12月期以外に損失を認識(計上)すべき会計期間は存在しない

・一部の経営陣による「不適切なプレッシャー」は存在していた

・調査結果に基づいて、WECが内部統制上の対策を行ったことを確認した

 これらを踏まえて、東芝は決算発表上の懸念事項は解決したと認識。これ以上発表を延期する意味はなく、何より株主や利害関係者に示しが付かない――そういう判断もあり、東芝は「強行発表」に踏み切ったともいえそうだ。

●他にもある上場廃止リスク

 このように、東芝が決算発表(提出)を「強行」した一因として、「株式の上場廃止リスク」への考慮は確実にありそうだ。しかし、東芝の上場廃止リスクはこれでゼロになった訳ではない。

 2015年9月15日から、東京証券取引所と名古屋証券取引所は、東芝の内部統制に問題があるとして同社の株式を「特設注意市場銘柄」に指定している。一定期間内に内部統制が改善されるか、される見込みがないと取引所が判断すると、その時点で上場が廃止されるのだ。

 四半期レビュー報告書での「結論の不表明」と合わせると、2つの「上場廃止リスク」を抱える東芝。普通に考えれば、いつ上場廃止になってもおかしくない状況といえる。

 2016年度通期決算は5月中旬に発表する見通しだが、そこまで上場を維持できるのか、それとも……。東芝にとって、予断を許さない状況はしばらく続きそうだ。

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