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松嶋菜々子、『家政婦のミタ』越える怪演へ? 『砂の塔』弓子役の凄みと色香

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/11/25 株式会社サイゾー
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 松嶋菜々子演じる弓子は一体何者なのか。彼女は何をしようとしているのか。ドラマも佳境を迎え、謎めいたその正体がようやく明らかになろうとしている。  『砂の塔~知りすぎた隣人~』(TBS系)は、家族で憧れのタワーマンションに引っ越してきた平凡な主婦・高野亜紀(菅野美穂)が、1つ上の階に住んでいる謎の住民・弓子(松嶋菜々子)に家族共々翻弄されていく物語である。ドラマ『夜行観覧車』、『Nのために』を手がけた塚原あゆ子が演出、ドラマ『アリスの棘』の脚本を手がけた池田奈津子が脚本を担当しているため、上質なサスペンスに仕上がっている。

 亜紀を翻弄するのは、弓子だけではない。タワーマンションのセレブなママ友たちや、崩壊しはじめる家族、そして幼なじみ・生方航平(岩田剛典)が寄せる淡い恋心もまた、彼女を翻弄する。その全てを監視し、時に操り、とどめを刺すのが弓子であって、絵に描いたような幸せな家族だったはずの高野家は、背伸びして手に入れたタワーマンションに引っ越してくるのをきっかけとして、歯車を狂わせ始めるのである。

 弓子を演じる松嶋は、回を重ねるにつれてさまざまな表情を見せている。最初は、困っている亜紀や子供たちに救いの手を差し伸べる、なんでもできる優しいフラワーアレンジメントの先生としての日頃の表情と、家で母親たちを監視するときの冷静な表情の2つだけだった。優しい表情のまま亜紀を陥れていく彼女は、理由がわからないだけにただ不可解で不気味な存在でしかない。しかし、その存在のよくわからなさは、エスカレートしていくママ友間の激しいいじめと追いつめられる亜紀の姿に気が滅入る一方の視聴者を繋ぎとめる役割を担っていたのではないだろうか。ギラギラしたママ友たちしか住んでいないのではないかと思われるタワーマンションに一人佇んでいる彼女は明らかに浮いていて、冒頭の血塗れの浴槽を洗う衝撃的な場面からして静かに犯罪を匂わせているのである。

 この物語のサスペンスをより引き立てているのが、「常に誰かに見られている」という演出だ。それは、いたるところに仕掛けられた、弓子のフラワーアレンジメントの中に隠された監視カメラだったり、セキュリティー万全のタワーマンションが防犯対策に設置している防犯カメラだったり、ママ友たちが互いを見張る目だったりする。亜紀が冒頭のナレーションで「見守られているということは見られているということ」と言うように、彼女たちは、見られることで見栄をはり、嘘をつき、本当の自分を見失うのである。

 前半の弓子はある意味、監視カメラのような役割を担っていた。亜紀を見守り、窮地を救うかに見せかけて、監視することで追いつめ、断罪する。

 そして、亜紀や航平や刑事が弓子に疑いの眼を向け始めた時、弓子は監視する側から自ら動き始める側に変わる。そこで松嶋はさらに、女の顔という、もう一つの表情を見せるのである。実は銀座の高級クラブのママとして働いていた弓子は、亜紀の夫・健一(田中直樹)に接近する。弓子と健一にはどうも過去に深い因縁があるらしい。冷静沈着な彼女が、ようやく激しい感情を表に出し始めた。松嶋の氷のような美しさと3つの顔を演じ分ける演技が光る。いろんな表情を見せてくる弓子の意外性と次が予想できない展開が、最近の高視聴率の理由だろう。  弓子の過去になにがあったのか。なぜ母親を、ことさら亜紀を標的にするのか。それに立ち向かう亜紀はどうなるのか。  弓子のしていることは、ママ友いじめを増長させ、子供たちを取り込み、夫を誘惑し、亜紀をこれでもかと追い詰めた後に正論で責めるという、ただそれだけである。しかし、その正論で、亜紀が母親として成長しているとも言える。  その静かで不気味な雰囲気は、以前松嶋が演じた、崩壊しかけの家族を追いつめるようにみせて型破りな方法で再生させた『家政婦のミタ』の三田と重ねてしまう。とはいえ弓子の場合、三田とは違い悪意のかたまりではあるが。彼女の存在は、結果的に家族を強くすることに繋がるのか。それとも、家族を破壊しつくしてしまうのか。  『営業部長吉良奈津子』での快活さを封印し、『家政婦のミタ』での静かで不気味な雰囲気に加え、凄みと色香を漂わせる松嶋菜々子の魅力は必見である。(藤原奈緒)

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