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林信行が魅力を解説 「iPhone 7」シリーズ(PRODUCT)REDモデル発売直前レビュー

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2017/03/24
林信行が魅力を解説 「iPhone 7」シリーズ(PRODUCT)REDモデル発売直前レビュー: 画像:ITmedia © ITmedia PC USER 提供 画像:ITmedia

 突然発表された新iPadとiPhone 7、および7 Plusの(PRODUCT)REDモデル、そして新しいアプリ「CLIPS」。今回、この新iPhoneをいち早く評価する機会を得たので紹介したい。なお、製品の予約は日付が3月25日に切り替わった直後からだ。

●圧倒的な主張をする鮮烈な「赤」

 新しいiPhoneの特徴は、色が赤いこと。ただそれだけだ。でも、そのことがネットでも驚くほどの反響を呼んでいる。

 日本時間で3月21日の夜、突如、新型iPadと赤いiPhoneが発表された。事前に「何かが出る」という情報をつかんでいた筆者は取り込み中の状態を一度抜け、何が発表されたのかだけを確認して画像とともにツイッターに投稿した。

 製品のCPUや容量などまで調べて投稿する余裕がなかったので投稿したのは外観写真だけ。それでも瞬く間に1000回以上リツイート(再拡散)され「欲しい!」という情熱的な反響コメントが山のように押し寄せた。

 ここまで圧倒的な情熱で迎え入れられたiPhoneは久しぶりかもしれない。CPUも、カメラの性能も関係ない。ただ「きれいな赤色のiPhoneだからこそ欲しい」という人が世の中には大勢いることが分かった。

 これまで電気製品は、スペックと価格を生真面目に分析して購入判断をして来た人には、理解ができない現象だろう。しかし、これがもはや毎日身につけるファッションアイテムとなった製品に対する多くの人の選び方だ。

 それでは早速、新型iPhoneを見てみよう。赤い。とにかく赤い。それもかなり鮮烈な赤色だ。ジェットブラックモデルのような光沢仕上げではなく、ブラックモデルのような梨地仕上げで、青空の下などで使うと青い光を吸収して少し色味が変わる表情豊かな赤でもある。上下にあるアンテナ隠しのラバー部分もブラックやジェットブラックモデルとは違い、多少目立つものの、マットな質感がむしろいい感じのアクセントになり、広い背面を引き締めている。

 中央のロゴマークは鏡面仕上げのシルバー。他のiPhoneでは、本体色に溶け込むように同系色に染められていたが、(PRODUCT)REDでは、むしろコントラストの高い色にして目立たせている。強烈に主張する(PDORUCT)REDモデルだからこそ、ロゴにもエッジを効かせたといったところだろう。

 正面の液晶を囲む部分の色は白で、ここはネットでも黒派と白派で意見が分かれるところだ。実際、筆者もApple Watchは(PRODUCT)REDの赤バンドと黒いアルミケースの本体を合わせたところ、ものすごく男性的にカッコよいのはよく分かる。フェラーリレッドの車体に黒い革のシートのような組み合わせは鮮烈な印象を放ちかっこいい。

 しかし、これは非常にマスキュリン(男性的)な色の組み合わせだ。

 iPhoneユーザーの半数以上が女性である現状では(もちろん、それが似合う女性もいることは理解しているが)必ずしも正解の色の組み合わせではない。TPOを選ぶ組み合わせ、とも言える。そう考えると、あえて赤白でユーザーが常に向き合う正面の部分に白を持って来て柔らかみを出した色の組み合わせはうまいなと思わされてしまう。

 赤と白は非常に難しい組み合わせで、一歩間違えればクリスマス配色のお子様向け配色になってしまうが、むしろ鮮烈な血の色を思わせる(PRODUCT)REDの赤ならば、まずクリスマスを連想する人はいないだろう。

 ちなみにディテールを見ていくとホームボタンを囲むリング部分はシルバー、Lightning端子の内側もシルバーだ(黒モデルでは黒になっているのだが、導電性を保ったまま赤くすることはさすがに難しかったのかもしれない)。

 マナーモードのスイッチも面白い。通常モードで赤色がのぞき、マナーモードにしたときには白色がのぞく。通常、マナーモードスイッチの内側は「オレンジ色」というのが古くからのiPhoneユーザーの頭には染み込んでいるが、ここはあえて別の色を混ぜたくないという判断でこうしたのだろう。

 手に持てばそこから真っ赤なアルミ板が、机においても優しい白い板の横から鮮烈な赤が見える。この圧倒的なインパクトを持つiPhone 7シリーズ(PRODUCT)REDモデルを持てば、パーティー会場でも、会食の席でも目立つことは間違いなしだ。ファッションとは、言葉にしなくても瞬時にあなたの個性やセンス、こだわりを一瞬で周囲の人々に伝えるためのツールだ。

 もっとも、iPhone 7/7 Plusが伝えるメッセージは、必ずしも鮮烈さやこだわりだけではない。

●AIDSを持ったまま生まれてくる子どもがいない世界に

 (PRODUCT)REDの意味を知ると、これがただ見た目のインパクトだけを狙った赤ではないことが伝わってくる。(PRODUCT)REDは、iPhoneが登場する1年前の2006年に、アイルランドの音楽バンド、U2のボーカルで社会活動家のボノが始めた世界からAIDSを撲滅するためのキャンペーンだ。

 ボノ自身が故スティーブ・ジョブズやAppleのチーフ・デザイン・オフィサーのジョナサン・アイブと個人的交流があったこともあり、2006年に出したiPod nanoの(PRODUCT)REDモデルやiTunesギフトカードから始まり、2007年以降のiPod低価格モデル(iPod nanoやiPod shuffle)、iPadやiPhoneのカバー、さらにはApple Watch用のスポーツバンドや子会社のbeats by Dreのヘッドフォンやスピーカーにも展開するといった具合に積極的に関わってきた。

 しかし、Appleの主力製品であるiPhoneに関しては、(PRODUCT)REDのケースはあっても、本体はこれまで出してこなかった。そんな中、iPhone 10周年目の今年、ついに満を持して登場したのが今回のiPhone 7(PRODUCT)REDである。

 製品パッケージを開けると、中には(PRODUCT)REDの活動を紹介する赤いシートが1枚入っていて、これも他のiPhoneと違う部分だ。

 iPhone 7/7 Plusの(PRODUCT)REDモデルを買う人たちの多くは、その理由に「ただ赤が美しいから」と答えるかもしれない。それはそれで健全なことだが、実はその一方で、重要な社会活動にも参加していることになる。必ずしも意識してやった結果ではないかもしれないが、これが特定の誰かの利益になるようなことならともかく、世界からAIDSを撲滅させることに反対の人間はいないだろうし、自分だってかかる可能性がある難病の撲滅に寄与することに、むしろ価値を感じる人のほうが多いはずだ。

 (PRODUCT)REDの裏側にそんな意味もあるんだということを覚えている人は、自分の赤いiPhoneをほめてくれた人に、実はこんな意味もあるんだよ、と伝えれば世の中はきっともっと良くなると思う。あるいは他の(PRODUCT)RED製品を持っている人と、そんな話で盛り上がってみるのもいいかもしれない。

 もちろん、ちょっと小難しくて面倒な話になりそうだったら、その話はやめて「この赤いいでしょう」だけで切り抜けるのも当然、アリだ。Appleは(PRODUCT)RED裏の細かい意味などを忘れ去れてくれるくらい、ただ赤いだけでなく、見た目も上質かつ美しく、それでいて鮮烈に仕上がっている。

●「赤い」からこそ欲しくなる新iPhone 7/7 Plus

 最後に、もう1度、この赤いiPhoneがAppleの戦略上持つ意味についても考察してみたい。

 1998年、初代iMacを発表した直後の故スティーブ・ジョブズはカシオの腕時計「Gショック」を引き合いに出し、昔は質実剛健だったGショックを例に、腕時計もファッション性やデザイン製の向上で7倍売れるようになった。AppleもiMacのファッション性でそれにあやかりたいと語っていた。現在、Appleの経営陣には元バーバリーのCEOや元イヴ・サンローランのCEOなどファッション業界の重役も加わっており、今後もしっかりとした技術に裏打ちされた手堅いアップデートと、ファッション性や手ごろさを売りにした柔らかなアップデートを織り交ぜた方向で進むのではないかと思う。

 そして気がつけば、この3月後半というタイミングはその柔らかなアップデートのタイミングになりつつある。振り返ってみれば2016年もAppleは、今回と同じようにiPhone SEを突然発表し、販売を開始している。

 これまでiPhoneは1年に1度だけ、秋ごろに新製品を発表し、発売するというスタイルをとってきた。これは新学期が9月から始まることの多い欧米には向いているが、4月に備えた新生活キャンペーンなどを展開する日本にとってはそれほどよいタイミングではない。iPhone更新のタイミングを半年に1回にすれば、この問題が解決できる。

 これは他の多くのメーカーがつい最近まで取ってきた“間違った”戦略で、年に2度も技術的なアップデートがあってはユーザーが混乱するばかりか、自分が買った新製品が1年も経たずに旧製品になってしまうことに不満すら感じることになる。

 しかし、機能や性能は変わらず色合いだけ変われば、秋モデルを買った人はいち早く先進技術を試せたことで満足が続けられるし、タイミングを逃して新iPhoneを買いそびれたまま半年が経ってしまい、次のiPhoneを買うべきか悩んでいた人には待たずに買う良い理由になる。もし、本当にこの通りなら、最近、Apple Watchの開発などを通して、ファッション業界の文脈での物の売り方を理解してきたAppleならではの良い戦略に思えてならない。

 しかも、機能、性能を一切変えていないのに、ここまで話題になっていることは極めて痛快だ。

 まだまだ機能の豊富さで勝負をしようとしているメーカーの経営者には、これを機にAppleはテクノロジーだけではなく、見た目や売り方までも含めたトータルなデザインで勝負しているからこそ成功しているのだということを学んでもらいし、スマートフォン市場も飽和しつつある今は、ファッション性が重要であることに気がつくきっかけになってほしいと思う(これまでファッション性の高い電気製品も量販店に置くしかなく、せっかくの見た目を台無しにしてしまうことが多かったが、最近ではおしゃれな製品をストーリーや世界観も一緒に紹介して売ってくれるお店が増え始め、一部の百貨店もそうした製品の取り扱いを始めていることにも気がついてほしい。テクノロジー製品を機能や性能や値段だけで売る時代は終わりつつあるのだ)。

 最後にもう1つ。4月にリリースされるiPhone用のビデオ編集アプリ、CLIPS。これも新風を巻き起こしてくれそうだ。自撮り映像を撮りながら何かを話せば、自動的に音声認識をして字幕を挿入してくれるところから始まり、さまざまなエフェクトをかけたり、スチル写真にも簡単に動きのある装飾をつけることができたりと、2017年後半のソーシャル上のビデオの多くが、このCLIPSで作られることになりそうな気配。インスタグラマーの間でも定番となることだろう。

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