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林信行の新型「MacBook Pro」最速レビュー

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2016/10/28
林信行の新型「MacBook Pro」最速レビュー: 画像:ITmedia © ITmedia PC USER 提供 画像:ITmedia

 MacBook Proの新モデルが登場した。製品の基本仕様はもちろん、形状まですべて新しい久々のフルモデルチェンジだ。

 その一番の目玉となっているのが「Touch Bar」と呼ばれる新しい操作方法。11月から出荷されるTouch Bar搭載モデルを発表会場で十数分ほど触り、Touch Bar非搭載の13インチモデルも貸し出しを受けて数時間使ってみたので、そのインプレッションを以下にまとめる。

●8年ぶりのフルモデルチェンジ

 これまでAppleは、MacBook Proシリーズのデザインについて、一度、最良の形を突き詰めたからにはそれをコロコロ変えるべきではないと、ストイックに何年も同じ形状を踏襲し続けてきた。

 しかし、その間に世の中の技術は大きく変わった。今回のMacBook Proは、そうした状況を受け、約7年ぶりのフルモデルチェンジとなっている(Retinaディスプレイモデルから数えると4年ぶり)。

 ちなみに、7年前のデザイン変更のきっかけを作ったのが、同じ2008年に登場した初代MacBook Airの開発だ。Appleはこの製品で「ユニボディー」という、アルミ板を削ってその中に基板を埋めた薄くて頑丈なノートPCを生み出す技術を開発。これをプロ用のMacBook Proにも応用した。

 今回登場した新しいMacBook Proも、このユニボディーの製造技術を採用するが、それに加えて2015年に登場したMacBookの超薄型キーボードや、USB Type-C端子への統一などがさらに大胆な薄型化、小容量化に貢献している。

 実際、本製品とMacBookは、エッジ部分の傾斜や鏡面仕上げの背面ロゴ、そしてバタフライ構造で薄型化したキーボードなど、似通った部分が多い。これまでのMacBookファミリーは、MacBook AirもMacBookも、MacBook Proも、それぞれ別の路線でデザインされており、材質以外の統一感はなかったが、今回、改めて製品ファミリー全体の統一感が築かれた印象がある。

●Touch Bar:ハードとソフトの融合が生み出す新しい操作方法

 まずはじめに、最大の目玉であるTouch Barを見ていこう。Touch Barは、これまでキーボードの最上段にあったファンクションキー(と呼ばれるあまり使われないキー)の部分に、長いタッチパネル式の有機ELディスプレイを内蔵し、そこからアプリケーションに応じたさまざまな機能を利用可能にするというものだ。

 例えば、Safariの利用中は、現在開いているタブの縮小画像がこのTouch Barに表示され、タッチすることでタブを切り替えられる。Touch Barの詳細な表示解像度は明かされていないが、Appleはこれがかなり高精細なRetina解像度であるとうたっており、解像度は60×2170ピクセルだと言われている。そのため小さなBarの上の表示でも、どれがどのWebページの縮小画像かしっかり見分けられる。

 同様にプレビューなどで複数の写真を開いているときも、Touch Barを使って簡単に目的の写真に切り替えられる。動画の再生中はTouch Barを左右に指でなぞって早送りや巻き戻しが可能だ。

 また、英語の入力中は、次に打つであろう単語の候補など予測変換の候補選びに使えるし、絵文字の選択などにも使える。文章を一通りタイプし終わると、文字の右寄せ、左寄せ、太字、傾斜文字などの文字装飾のためのボタンがここに現れる。Touch Barは、ハードとソフトを見事に融合させたAppleらしい操作体系で、これからの新しい作業スタイルを予見させる。

 かつてiPhoneを発表したとき、スティーブ・ジョブズは、物理キーボードを搭載していた他社のスマートフォンを見せて、物理キーでは操作の幅が制約されてしまう、と語っていた。そして、これまでのノートPCの操作手段であるトラックパッドとキーボードは、ある意味、汎用な操作方法でしかなく、これを無理やり使いこなしていたのが実情だ。

 グラフィック制作、音楽制作、ビデオ編集などにおいても、クリエイティブプロフェッショナルの仕事は、試行錯誤による同じ操作の繰り返しや微調整が多く、いちいちメニューバーから呼び出していてはあまりに効率が悪いために、キーボードショートカットと呼ばれるキーコンビネーションを利用した操作が多用されるようになり、一部のプロは特定の業務専用のキーパッド(個々のキーに特定の操作を割り当てられる)を入手して作業の効率化を測っていた。Touch Barは、そうした外部機器を使わずとも、必要な操作をすぐに呼び出せるようにする標準の手段として期待できる。

 実際、この技術は、プロ用アプリケーションを高度に使いこなすクリエイティブプロフェッショナルにも、そうした人たちにアプリを提供する開発者にも、多くの新しいインスピレーションをもたらしてくれるだろう。

 発表会では、新型MacBook Proを受け取って1週間しか経たないAdobeや、DJソフト「DJay」を提供するAlgoriddimの代表が、片手をTouch Bar、片手をトラックパッドに置いたスタイルで、ユニークな使いこなしテクニックを披露していた。

 このTouch Barで、気になっている点が二つある。

 一つは、日本語入力の部分。ファンクションキー部分を置き換えるTouch Barだが、日本では文字入力時にファンクションキー部分を使って、ひらがなやカタカナなど文字の種類を切り替えている人も多いという。発表会場にあったMacBook Proで日本語キーボードを加えて試してみたところ(日本語フォントがインストールされていなかったようで少し文字表示がおかしかったが)、Touch Bar部分にひらがな、カタカナ、ローマ字に変換した文字列が現れた。つまり、ファンクションキーと同等の機能をきちんとTouch Barで提供できているようだ。もちろん、従来通りの定位置に表示されるファンクションキーで操作をしたい、という人はfnキーを押せばTouch Barをファンクションキーをして使うこともできる。

 日本語文字入力におけるTouch Barの活用については、もっと他の方法もありそうだが、そちらについてはサードパーティに期待したい。

 気になっている点の二つ目は、Touch Barのカスタマイズ性が高い分、かえってボタンの表示位置が定まっておらず、ユーザーが想定したボタンの位置とズレる可能性があることだ。実際に数日間使ってみないと、どの程度ミスタイプを誘発するか判断できないものの、プロ用アプリでディスプレイから目をそらさずにキーボードショートカット操作を利用していた人にとっては気になるところだろう。これについては改めて実機を借り次第確認したいと思う。

●Touch ID、巨大トラックパッドそしてキーボード

 ちなみに、キーボードの上いっぱいに広がる長いTouch Barの右端にサファイアガラスでコーティングされたエリアがある。実はこの部分がTouch IDの指紋認証で指を置く場所になっており、電源ボタンを兼ねている。Touch IDが使われるのは今のところ、PCへのログインときとApple Payを使ったショッピングのときだ。

 1台のMacBook Proを複数のユーザーで共有している場合は、指紋認証一発で、その人の作業環境を呼び出すことができる。もっとも、こうした使い方はノート型Macよりもデスクトップ型Macに求められるものかもしれない。

 新しいMacBook Proでは、トラックパッドが巨大化しているのも大きな特徴の一つだ。13インチモデルのトラックパッドはiPhone 7の画面より一回り大きいサイズ、15インチモデルにいたってはiPhone 7 Plusよりも一回り大きいサイズである。その分、大胆な操作だけでなく、きめ細やかな微調整もしやすくなっている。Macのトラックパッド操作の多くは、指を動かす速さに応じてカーソル移動のスピードが加減速するため、慣れてくると細かい調整がしやすいが、その際はトラックパッド上での距離(広さ)を取りたくなるのだ。

 キーボードの打ちやすさについてはどうか。MacBookの超薄型キーボードについては、前回のレビューで「これは本当にストロークが浅く、素早く文字を打つにはそれなりの慣れが必要だ。」と書いた。実際、筆者は旧MacBook ProとMacBookの両方を使っているが、いまだにMacBookの浅すぎるストロークのキーボードには違和感を覚える。新型MacBook Proで一番不安だったのは、MacBookと同じ“あのままのキーボード”なのか? ということだ。

 しかし、結果は二重の意味で予想外だった。文字入力をしてみたところ、なんと、これまでのMacBook Proと同じようなしっかりとしたストロークのある押し心地で違和感なく快適に文字入力ができた。それでは、どの部分が二重に予想外だったかというと、実はこのキーボード、やはり薄さやストロークの浅さなどは、MacBookのキーボードと変わらないのだそうだ。

 一瞬、自分の触感は節穴なのか? と疑ったが、詳しく聞いてみたところ、スプリングの強さや指にかかってくるフィードバックなどの微調整を何度も繰り返すことにより、MacBookと同じ構造のキーボードで、これまでのMacBook Proとあまり変わらないキーの触感を生み出したのだという。人工的に「押した感触」を生み出している感圧トラックパッド以来の衝撃だ。このキーボードは、ぜひとも次のMacBookでも搭載するべきだろう。文字入力の快適さが大きく変わるはずだ。

●Thunderbolt 3への大胆な移行

 打ちやすくなったキーボードの安心感、Touch Barの新しい操作によるワクワク感で期待が高まる中、少し「勇み足」か? と思えてくるのが、すべての周辺機器接続ポートをThunderbolt 3に変更したことだ。

 かろうじてヘッドフォンジャックだけは残っているが、旧MacBook Proに搭載されていたSDメモリーカードスロットもなくなっていれば、HDMI出力も、いわゆるパソコン側のUSB端子(Type-A端子)もなくなった。これにより、電源ケーブルも、プロジェクターや外部ディスプレイも、外付けストレージも、すべてUSB Type-Cと同形状のThunderbolt 3端子に接続することになる(Touch Bar搭載モデルなら4ポート、非搭載モデルは2ポート)。

 USB Type A端子は、挿すときにコネクタの上下を間違えて、その度にイライラする端子の一つで、早くなくなるべきだと思っている筆者ではあるが、それでも、まだまだこの端子への接続を前提にした機器は多い。実際、ちょっとしたファイルの受け渡しもこの端子に挿して使うUSBフラッシュメモリーで行われることが多く、しばらくは同端子がなくなったことで、不自由を感じる(あるいは、周囲の人に面倒がられる)場面があるかもしれない。

 しかし、テクノロジーは常に前進を続けており、何年かに一度は時代遅れになったテクノロジーをバッサリと切り捨てる新陳代謝を行なっていかないと、やがて古い技術の足かせになってしまう。そして残念ながら、この古い技術をバッサリ切り捨てる勇気を持った会社は、Apple以外にいないのだ。

 真っ先に3.5インチフロッピーを採用したのもAppleなら、1998年のiMacでそれを真っ先に切り捨てたのもAppleだった。シリアルポートやSCSIなどのポートもこのときに切り捨てた。CD-ROMドライブを真っ先に採用し、そして真っ先に切り捨てていった。

 Apple以外のPCメーカーは、同じOSのPCをいかに安い値段で、いかに多くの機能を詰め込んで「お得感」をアピールし、そして買ってもらうかを勝負どころにしてしまっている。一方、MacはOSが異なるおかげで、独自の世界を築いており、競合他社がいない分、Appleが独断で大胆に仕様を変更できる。

 だから、業界の流れも、まずはAppleが新スタンダードを作り(あるいは一番手ではないにしても、それを数百万台以上の単位で普及させ)、新技術の生態系ができあがってから他社もそこに追従してくる、ということが繰り返されてきた。

 今だったら、もしかしたらMicrosoftも、こうした技術の新陳代謝を行い、新しいスタンダードを作る側の企業になれるのではないかと思う、しかし、とりあえずUSB Type-A/BとSDメモリーカードというレガシー技術の切り捨てに関しては、再びAppleが先導する形になった(個人的にはデジタルカメラからの画像転送用技術として、AppleにはTransferJetを採用してほしい。非常に相性がいいと思う)。

 今回、Appleがいつも以上に大胆だと思ったのが、この仕様変更をiMacのようなコンシューマー機ではなく、日常業務を止めることができないプロ用のMacで行なったことだ(もっとも、MacBookという前奏曲はあったが)。

 おそらく「こんなMacでは仕事ができない」と怒るプロもいるだろう。しかし、そうした人のために、Appleは従来のUSBポートやSDメモリーカードスロット、HDMI出力を備えた、MacBook Proの旧モデルの販売も続けている。

 AppleがThunderbolt 3を選んだのは、これが本来の意味でのUSB、つまりUniversal=普遍的なSerial Busだからだろう。

 それでもまだ現在は、アナログRGBやHDMIで接続するディスプレイやプロジェクターをはじめ、テレビ、外付けストレージ、そのほかの周辺機器ごとに、それぞれ異なる端子が使われている。だからしばらくは、MacBook Proでこれらの機器を使用する際、ドングルと呼ばれる専用のアダプターを併用する必要がある。しかし、将来の理想は、プロジェクターともテレビとも、HDDとも、電源とも、アダプターを挟まずに、全部同じケーブルで接続できるようになることだ。

 MacBookでの採用を皮切りに、USB Type-C搭載PCが少しずつ増えてきたことを受け、最近では徐々にではあるがUSB Type-Cに直接接続できる周辺機器も増え始めている。

 また、Apple純正のアダプターやケーブルも充実してきた。今回、MacBook Proと一緒に、USB Type-C→Lightningケーブルの貸し出しも受けたが、これを使ってiPhone 7を充電してみたところ、通常よりも早く充電できる印象を受けた(ただ、レビュー時間が短いため、正確な計測は行えていない)。

 新しい規格だけに、Thunderbolt 3には転送速度の向上だけではなく、さまざまなメリットがある。ただ、そうした恩恵を本当に感じられるのは、おそらく来年も後半以降になってからとなってしまうかもしれない。しかし、とりあえずそんな未来を信じて先行投資ができる人たちにとっては、この新型MacBook Proはワクワク感と夢を与えてくれるマシンに仕上がっている。

 MacBook Proは、超ハイパフォーマンス製品のブランドだ。しばしば、パソコン雑誌で“最も高速なノートPC”として取り上げられてきたのもMacBook Proシリーズだったし、実際に同じMacBook Proを3〜4年間使い続けるプロユーザーは多い。これは単に高速なCPUやGPUを搭載したモデルがあるからというだけでなく、ハードとソフトの密な連携のすべてをAppleが真剣に手がけてきているからだ。

 そんな、ある意味ではパソコン全体のフラグシップともいえるブランドの製品が、この引き締まったボディーに収まっている、という事実にはただただ驚かされる。シンプルで、薄くて、軽くて、それでいて大胆。過去25年間のApple製ノートPCの多くがそうであったように、新しいMacBook Proも、ノートPCの新しいスタンダードとなり、遠からずすべての周辺機器がThunderbolt 3で提供される未来を期待したい。

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