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桑田佳祐とBLACKPINKが並ぶ最新チャートから読む、J-POPの現在

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/09/09 株式会社ブループリント
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参考:2017年8月28日~2017年9月3日週間CDアルバムランキング(2017年9月11日付)(ORICON NEWS) 先週初登場1位、初週で16万8千枚以上を売り上げた桑田佳祐の『がらくた』が、今週は2位にダウン。それでも3万8千枚という怒涛のセールス力で、『がらくた』は発売からほんの二週間で20万枚を突破しました。(関連:BLACKPINKはポップミュージックの王道を行く デビュー作からグループの特異性を考察) さすがは国民的ポップスター! というのは常套句ですが、これ、ソロ活動歴30年、すでに還暦を迎えた男の作品なのですよ? 凄いことだと思います。いまだ第一線で作品を作り続ける体力・気力を考えただけでも頭が下がるし、すでに多くの方が指摘しているとおり、ちゃんとビビッドに、彼独特のユーモアをもって、海外のトレンドを意識しているのは驚くべきセンス。常に刺激や好奇心を忘れないこと。あくまで自分らしい音であること。結果がっちり売れる作品であること。それらを成立させてこそ真のスターなのですね。 なお、ジャズにブルース、レゲエやロックなどを網羅する『がらくた』は、最終的には日本の歌謡曲に向かっていきます。象徴的なのはNHK連続テレビ小説『ひよっこ』の主題歌「若い広場」ですが、やたらレトロなMVも含め、古き良き昭和のイメージを桑田自身が積極的に肯定しているのでしょう。サザンオールスターズの『葡萄』も然りですが、近年の彼からは、いい意味で洋楽とは距離を置こうとする意識を感じます。ただ洋楽っぽいJ-POPを作りたいわけじゃない。豊かな洋楽に影響を受けてきた自分が、今どんなジャパニーズ・ポップスを残していけるのか。こういうスタンスは近年の星野源にも通じるもので、「Family Song」のMVにも、やはり、古き良き昭和のイメージがユーモアたっぷりに描かれていたなと気づかされるわけです。 となると、BLACKPINKの1位はどう受け止めるべきなのか。桑田佳祐を僅差で押さえ今週1位となったのは、韓国のガールズグループ、BLACKPINKの日本デビュー作でした。海外アーティストのデビュー作が初登場1位というのはt.A.T.u.(タトゥー)、2NE1(トゥエニィワン)に次ぐ快挙だそう。そしてガールズグループといっても、このBLACKPINKはかわいい曲をかわいく歌うアイドルではないし、ボディラインを強調した服でセクシーに踊るダンスユニットでもない。それこそ「ガールズグループ」という言葉の価値観をひっくり返しそうなインパクトを備えたサウンドなのです。 t.A.T.uと共に名前を出した前述の2NE1は彼女たちの先輩格にあたり、男に一切媚びない歌詞、激しくもキレのあるパフォーマンスは国内外で一気に同性の支持を集めました。その存在感はさながらアジアのビヨンセ。〈ガールズ・パワー〉ならぬ〈ガールクラッシュ〉という流行語も韓国では生まれたそうです。そんな2NE1が昨年惜しまれつつ解散し、所属事務所のYGが「次世代ガールクラッシュグループ」として大々的に売り出しているのがBLACKPINKです。 低音ビートの効いたスタイリッシュなR&B、驚くほどクールな巻き舌ラップ、そしてUSのトレンドを意識したダンスの完成度。そのスタイルは完全に世界のマーケットに向かっています。もちろんK-POPにおいてそれは珍しいことでもないのですが、このBLACKPINKにはYG事務所にとって初の外国人、タイ出身のメンバーも在籍しています。欧米や中南米の人々から見れば「アジア女性全体の新しいエネルギー」のようにも見えることでしょう。もちろん日本人から見ても全方位で格好いい。BLACKPINKの日本デビュー盤に飛びついたのは、一昔前に「韓流って懐かしい感じがするわぁ」と頬を緩ませていたおばさんたちでは絶対ないわけです。ただ新しくてクールなビートと視覚的な刺激を求める音楽ファンが、BLACKPINKを1位にしたのだと思います。 還暦過ぎのベテランと、まだ20代の新人グループを比較してもあまり意味はありません。ですが、ブリブリの勢いで世界に向かうK-POPを見ていると、J-POPってやはり特殊な世界だなと思ってしまいます。もちろん私も、桑田佳祐が切々と歌う「若い広場」などのような昭和歌謡の魅力にはまったく抗えない一人ではありますが。(石井恵梨子)

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