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橋本環奈は女優として真価を発揮できるか? 『銀魂』神楽役への期待

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/03/11 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 “千年に一人の逸材”と騒ぎ立てられるようになってから、3年以上経っているが、ドラマや映画に引っ張りだこというわけではないのが橋本環奈の不思議なところだ。本業は女優ではなくアイドルだということもあるだろうし、小柄で特徴的な声質という点では、演技向きではないのかもしれない。それでも充分すぎるほどに、作品を独り占めできるだけの存在感は持っている女優だと、筆者の目には映る。  それにしても、ブレイク途上で本人役として出演したドラマ『水球ヤンキース』を除けば、演技での出演作はこれまでで5本。しかも、ブレイク前の子役時代に出演した映画『奇跡』や、“自立思考固定砲台”として機械の中に入りっぱなしだった『暗殺教室』2作をも除いてしまえば、昨年の主演作『セーラー服と機関銃-卒業-』と、今回の『ハルチカ』の2本だけになってしまう。  何故こんなにも“千年に一人の逸材”が見過ごされてしまっているのか。もちろんルックスを先行して考えたときに、必要な演技力が足りていないという見方もできるが、場数を踏ませなければ向上するわけもない。所属する事務所が九州ローカルなのも一因かと思うが、これだけ話題になればオファーは絶えないだろう。となると、事務所側が受ける仕事をセーブしているという見方もできるが、それにしても少なすぎる印象だ。  そんな疑問に苛まれながら、彼女の新作主演映画『ハルチカ』(これがスクリーンデビューとなるSexy Zoneの佐藤勝利とW主演だ)を観てみると、いくらかその理由が見えてくる。演技力の部分ではなく、演出的な部分で、橋本環奈が橋本環奈としてしか画面に映っていないのだ。  大方のイメージ通りに、明朗快活なキャラクター造形になった橋本環奈のチカ。前半には佐藤勝利演じるハルタに蹴りを食らわせたり、平岡拓真演じるヤンキーぶったサックス奏者を一撃で仕留めるなど、アニメ版のチカと同じく、過剰な猟奇的側面を持ち合わせることで意外性を演出する。ところがこの感じは気が付いたら消えて、表面的に原作の要素を加えただけのものだったとわかってしまう。  その代わりに、冒頭で息を切らしながらバスに飛び乗る姿を俯瞰気味で撮ることで、小柄な彼女への愛着を高めようとする。さらに、終盤で涙を流しながら走る姿、そのあとに泣き顔を画面いっぱいに映すなど、彼女を映すショットはひたすらフェティッシュな演出に溢れ、さながら橋本環奈のイメージ映像を見ている気分になるのだ。  思い返してみれば、昨年の『セーラー服と機関銃-卒業-』も同じだった。ヒロイン星泉を演じた彼女には、マシンガンを放つという形だけのギャップが与えられた。それ以外の場面では、やはり明るい天真爛漫少女の出で立ちで、ひたすら彼女を可愛く撮ることに映画が向けられていた。案の定、観終わってみれば「橋本環奈が可愛い映画だったね」という点だけが強く残ったのである。  たしかに、アイドル女優を配するならば、“可愛く撮る”ということは大前提である。しかし、「“千年に一人の逸材”=橋本環奈=可愛い」という等号ばかりの肯定的な式に作り手が縛られすぎて、持て囃すだけでは、「“千年に一人の逸材”<橋本環奈」になることはできない。  しかし、7月には福田雄一が手がける実写版『銀魂』での神楽役が控えている。福田監督といえば、これまでの作品で高畑充希や有村架純、吉岡里帆の女優の幅を拡げた実績がある作り手だ。彼なら橋本環奈の可愛さに屈することなく、天真爛漫なイメージを残しつつも、面白い意外性を映画全体を通して見せつづけてくれることに違いない。これは期待が持てそうだ。  今月に所属グループRev. from DVLが解散し、個人としての活動がさらに増えていくだけに、しばらくは女優・橋本環奈としての期待値が上昇する期間に入るだろう。今ならまだ、彼女はどんな女優にも育つことができるはずだ。その魅力を最大限に映し出す作品と、作り手のアイデアに出会えて初めて、“千年に一人の逸材”は真価を発揮するだろう。 ■久保田和馬

映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。

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