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欅坂46が初ワンマンで示した「坂を登り続ける」覚悟

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/01/09 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 「私たちは坂を登り続ける」ーー平手友梨奈は有明コロシアムに集まった9000人の前でそう言い放った。結成から1年4カ月、デビューからわずか8カ月余り。欅坂46が12月25日に有明コロシアムにて開催した初のワンマンライブは、メンバーのパフォーマンスに帯びた凄み、これまでデビューから丹念に積み上げてきたグループコンセプトをひしひしと感じさせるとともに、「ここからまたスタートする」という気概に満ち溢れたものであった。  2016年、欅坂46はアイドルシーンを席巻した。デビューシングルの『サイレントマジョリティー』は初週で約26万枚を売り上げ、女性アーティストのデビューシングル初週売上歴代1位を記録。その3カ月後にはメンバーが総出演&初主演を務めるドラマ『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京系)がスタートし、ドラマ主題歌となった2ndシングル『世界には愛しかない』、3rdシングル『二人セゾン』では3作連続の初登場1位を記録。大晦日にはデビューから僅か8カ月で『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)への出演を果たした。  彼女たちが異例の紅白出場を成し遂げられたのは、単純な記録的セールス面だけではない。1stシングル『サイレントマジョリティー』から緻密に練られたコンセプト作りが功を奏したのは明らかだ。グループの支柱とも言えるコンセプトは、ライブ1曲目に披露した「大人は信じてくれない」にも受け継がれている。<いいことなんかない 退屈な毎日さ>と平手が吐き捨てるように歌い始め、ステージの前にはゆらゆらと炎が上がり、一心不乱に頭を激しく上下に振るメンバー。エレキギターが鳴り響くロックサウンド色の強いこの曲で1stワンマンライブの幕を開けるとは、何とも心憎い。  顔に前髪がかかった状態の、アンニュイな表情を覗かせる平手が「有明コロシアム、かかってこい」とドスの利いた声で客席を煽り、そのままダンスチューン「語るなら未来を…」へ。白と黒を基調とした大人びた演出の中、キレのあるダンスを披露していく。「サイレントマジョリティー」で示された、大人や世間からの抑圧に立ち向かうイメージは「大人は信じてくれない」「語るなら未来を…」といった、クールな側面を持つ楽曲に色濃く継承されている。  同じ坂道シリーズである乃木坂46において、生駒里奈がグループ初期のセンターを務めたように、欅坂46では平手が1stから3rdシングルまでのセンターを張っている。都市開発中の渋谷で撮影された「サイレントマジョリティー」のMVは、その都市の風景を真空パックするかの如く映し出しているが、平手の初のソロ曲「渋谷からPARCOが消えた日」も街の時代背景を刻みつけた楽曲である。この曲はタイトルが表すように、現在閉鎖となっている渋谷PARCOを歌ったもの。MVと同じ真っ赤なスーツで客席通路に現れた平手は、スタンドマイクを前に艶っぽく歌唱する。ステージ中央には長方形の巨大スクリーンが設置されていたのだが、画面いっぱいに平手の鋭い眼光が映し出された時にはカメラワークさえもコンセプト演出の中にあるのか、と感服するばかりであった。  欅坂46には、いくつかのユニットが存在する。デビュー前の『お見立て会』時からすでに組まれていた小林由依、今泉佑唯のフォークデュオ“ゆいちゃんず”は、欅坂46におけるグループユニットの先駆け的存在と言える。2人はアカペラによる「渋谷川」で美しいハーモニーを会場に響かせた後、ギター演奏に乗せたパフォーマンスを続けた。1stシングル収録のこの曲はイベント出演時には必ずと言っていいほど披露してきた楽曲だが、その場数の経験値からか、出だしのアカペラも堂々としたものであり、続く「ボブディランは返さない」ではムーディーな雰囲気を醸し出していた。    平手、長濱ねる、ゆいちゃんずの計4人からなるユニット“てちねるゆいちゃんず”の「夕陽1/3」では、スクリーンに校舎が夕陽のオレンジに染まる様子が映し出され、それをバックに無邪気な笑顔で歌い踊る4人がいた。続けて、欅坂46メンバー全員での歌唱曲「制服と太陽」が歌われた。「夕陽1/3」と同じテーマの“スクールライフ”、<Let’s get started>と繰り返される歌詞、そしてラストに集合写真のようにピースサインを浮かべる様子は、イノセントな気持ちを呼び起こさせた。  欅坂46と、その関連グループに当たる「けやき坂46(ひらがなけやき)」の両方を兼任する唯一のメンバー長濱ねる。長濱をセンターに据えた「乗り遅れたバス」は、<ごめん 一人だけ遅れたみたい><夢はどこかで繋がるのだろう>と、ほかのメンバーに比べて遅れてグループに加入した長濱の立ち位置を表した楽曲だ。「乗り遅れたバス」歌唱後、長濱のソロ曲「また会ってください」、長濱を含めた12名のけやき坂46での「ひらがなけやき」の3曲が立て続けに披露された。長濱が1人歌うところに、後ろから残り11名のけやき坂46メンバーがステージに登場する情景は、長濱とけやき坂46のこれまでを物語っているかのようであった。けやき坂46は欅坂46に比べて圧倒的にライブ経験数が少ない。本編終盤では、3rdシングル収録の「誰よりも高く跳べ!」が披露されたが、一人ひとりに設けられたソロダンスや屈託のない笑顔には、これからグループが向かう未来への希望が見えた気がした。  ここまで本編16曲。一切シングル表題曲は披露していない。結果的に本編ラストに「二人セゾン」「世界には愛しかない」「サイレントマジョリティー」の順でパフォーマンスしたわけだが、メンバー一人ひとりが持つ気迫はもちろんのこと、大会場ならではの演出方法にも驚いた。「二人セゾン」では曲の序盤にメンバー全員で形作る大きな2つの輪がステージに映え、大サビのステージ前方へ前進するシーンでは惚れ惚れするほどの美しさを覚えた。全員で同じパフォーマンスを踊るフォーメーションダンスの良さは大きな会場であればあるほど真価を発揮することに気づく。「世界には愛しかない」では、アリーナ全体を囲んだ花道にメンバー全員が散らばり、大きなスペースを使用しパフォーマンスを行うことに成功していた。これは「世界には愛しかない」のMVで北海道の大草原を大胆に使いパフォーマンスをしている映像を彷彿とさせる。 「大人からの抑圧に対抗する自我の芽生え」というテーマが繋ぐデビュー曲「サイレントマジョリティー」では、メンバーが横一列に並び、一人平手が拳を高々と掲げて前へ進む。モーセが海を割り紅海を渡る様に、そして『民衆を導く自由の女神』の絵の様に。誰もが何度も見たであろう情景が、凄みを増してカタルシスとして押し寄せる。何よりも会場に溢れんばかりの熱気がグループのパフォーマンスを讃えていた。それを受けてか、曲の終了後、カメラに抜かれた平手が一瞬安堵したような笑みを浮かべていたのが印象的だった。  アンコールでは、メンバーを代表して菅井友香がここまでに抱いていた不安や、見守ってくれたファン、スタッフ、家族への感謝を告げ涙ぐむ一幕も。菅井の涙がメンバーにも波及する中、ダンスにおいてリーダーシップを執る齋藤冬優花も口を開く。「あまりダンスのことばかり言うのはよくないかなと思ってたけど、メンバーやファンの方に『ありがとう』と言ってもらえて、自分のやってたことは間違いじゃなかったのかなと感じられるようになった」。この言葉を聞きながら、カメラに映るメンバーの一人ひとりが、覚悟に満ちた輝き溢れた表情をしていたのが忘れられない。   そんなメンバーの決意が込められているのがアンコールに披露された新曲「W-KEYAKIZAKAの歌」。ブラスバンドサウンドから成るこの曲は、欅坂46とけやき坂46をあわせたメンバー32名で歌われる初の楽曲だ。当サイトでのインタビュー(http://realsound.jp/2016/12/post-10694_3.html)にて、佐藤詩織が曲振りについて「『サイレントマジョリティー』での何かしら一部をどんどん受け継いで、次の振りに入れてくださっていて」と答えていたが、この曲の最後には「サイレントマジョリティー」の最後の振り付けがそのまま当てられており、歌い続けていくのだという意思を感じさせる。そして、曲中の歌詞ではこう歌われている。<One day ある日 僕のまわりには 同じ目をしたみんながいた 生きることに不器用な仲間 一緒に歩いて行こう>。  欅坂46は、有明コロシアムでの初ワンマンライブという一つの挑戦を成し遂げた。グループの支柱であるコンセプトを華麗に演出しながら、最後に垣間見せたのはライブにかけるメンバーの思い、気迫に満ちた表情だった。紅白への出場も果たし、ある種の頂点の一つを極めたグループから「ここからまたスタートする」という思いを感じたのは、メンバー全員が覚悟を決めた顔つきでステージに立っていたから。そして、「私たちは坂を登り続ける」という言葉を確信に変える、頭抜けたパフォーマンスをまざまざと見せつけられたからだ。(渡辺彰浩)

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