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欅坂46のブレイクと“Zeppツアーの壁”ーー2017年のアイドルシーンを占う

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/02/17 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 AKB48のブレイクを引き金として、2010年に巻き起こったアイドル戦国時代。あれから早くも7年が経過し、今年で8年目。アイドルシーンの活況は、ピークポイントは過ぎたと言われつつも、いまだに続いている。 (参考:AKB48グループと乃木坂46・欅坂46、“特性の違い”より明確に 2016年の活動から見えたこと)  では2017年のアイドルシーンはどうなって行くのか。2016年の動きを振り返りつつ、占って行こう。 ■乃木坂46と欅坂46 2016年に躍進したアイドル  2016年に躍進したグループといえば、乃木坂46と欅坂46の“坂道系”と呼ばれるグループが挙げられるだろう。乃木坂46は11月にリリースしたシングル『サヨナラの意味』が自己最高のセールスを記録。初動でミリオンを突破し、同曲で年末の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に2年連続で出場を果たした。欅坂46は『サイレントマジョリティー』が女性アーティストのデビューシングル初週売上として歴代1位を獲得。デビューからわずか8カ月で『NHK紅白歌合戦』に初出場した。また、年末には初単独公演をキャパ約1万人の有明コロシアムで2日間に渡って開催、全3公演を合わせて約2万7000人を動員した。  AKB48は2016年のオリコンシングルセールスランキングの1位から4位を独占。その他の48系グループや、ハロプロ系も人気は高い。そしてももいろクローバーZ、私立恵比寿中学、チームしゃちほこなどのスタダ系や、でんぱ組.inc、BABYMETALといった“ブレイク済み”のグループたちの人気も、いまだ健在だ。  ここで注目したいのは、これらのグループ以降、例えば動員規模で言えばアリーナ及び武道館クラスで単独公演を行い、さらにそれを定期的に行えているような「世間的にもブレイクした」といえるアイドルが登場していないことだ。BABYMETAL、でんぱ組.inc、チームしゃちほこのブレイクを2014年あたりとするなら、2年以上この状況が続いていることになる。世界最大のアイドルの祭典『TOKYO IDOL FESTIVAL』の 2014年の動員数は2日間で4万1282名、1日平均が2万641人。2015年は2日間で5万1481人、1日平均が2万5740人。2016年は3日間で7万5978人、1日平均が2万5326人。1日の平均来場者数の伸びが、2016年になって落ち着いていることが分かる。来場者数=アイドルファンの総数、というわけではないが、出場者のほとんどがブレイク以前のアイドルである『TIF』の1日の平均来場者数の推移は、少なくともそれを推し量る目安にはなるはずだ。つまり、“ブレイク済み”のシーンは活況だが、“ブレイク以前”のシーンは停滞気味。これが2016年のアイドルシーンの状況だった、といえる。 ■ブレイク済みor以前のアイドルの境目は「Zeppツアー」  “ブレイク済み”のアイドルと“ブレイク以前”のアイドルの境目はどこにあるのだろうか。立場により様々な見方ができるが、ここではそれを「Zeppツアーの壁」にあると仮定しよう。  1年に1、2回のメモリアルな単独公演でなら、キャパ2、3000人程度のZepp TokyoやZepp DiverCityを埋めることはできる。が、その規模の会場を使った全国ツアーや高い頻度での公演で成功を収め続けるのは難しい。2017年現在、人気の出始めたライブアイドルが直面するのは、この壁だ。それぞれにとって目指しているものが違うが、外形的な面だけを見れば、BELLRING少女ハート(現・There There Theres)、lyrical school、夢みるアドレセンス、ゆるめるモ!といったグループが、大体このゾーンに位置している。この壁を越えたところでブレイクの可能性が見えて来る、そういう地点だ。  そしてこの約2、3000人が、48系やハロプロ系、スタダ系などの専オタではない「熱心に現場に通うタイプのライブアイドルDD」の総数ではないだろうか。ライブアイドルDDであるなら、毎週末の普段のライブには通わなくとも、「メモリアルな単独公演なら観に行きたい」と考える。ライブアイドルがブレイクするためには、まずはそこを総動員できるほどの人気を得たうえで、さらにその人気をアイドルシーンの外部へと繋げて行く必要がある。 ■パッケージング全体を徹底的に差別化することの重要性  では今後、この「Zeppツアーの壁」を突破するのはどんなアイドルなのか。それはブレイク済みのアイドルと同じく、他とは徹底的に差別化されたコンセプトを持つグループだろう。  例えば直近のブレイクの例で言えば、欅坂46の「サイレントマジョリティー」は「大人たちに支配されるな」という若者たちのレジスタンスを直球で歌い、軍服をモチーフとした衣装を身にまとい、軍隊を思わせる振り付けで一斉を風靡した(軍隊モチーフはAKBが本格的にブレイクするきっかけとなった「RIVER」でも用いられている)。また、こうしたコンテンツの強さだけでなく、全国握手会など、大所帯グループならではの戦術も踏襲した。  とはいえ、坂道系や48系のように大所帯でありつつ、かつ質の高いコンテンツを生み出し続けるには、スタート時から高い資本力が必要となる。また例えそれができたとしても、48系などのグループに市場のシェアは既に大きく占められている。  であるなら、大所帯ならではのシステム(人海戦術的な握手会、総選挙など)を持たない、BABYMETAL、でんぱ組.incのような、少数人数でありながら徹底的に差別化されたコンセプトを基盤に持つグループの方が、“壁”を突破する可能性が高いのではないだろうか。そしてそのコンセプトとは、単に新しい音楽ジャンルをアイドルに組み合わせればいい、というものでは、もはやない。メタル、電波ソング、ロック、HIPHOP……など、戦国時代を迎えて7年が経過し、今やアイドルにどんな音楽ジャンルをただ掛け合わせても、珍しさはなくなってしまった。音楽性のみのワンアイデアだけでは、ブレイクに到達するのは難しい。そもそも、前述のグループが秀でていたのは、音楽性だけではない。写真や衣装などのビジュアル、デザイン面、メディア出演やSNSの活用などのプロモーション、ストーリーメイクなど、ファンの目や耳に触れる全ての露出が、包括してブランディングされていたことが大きい。音楽性が優れていることは当たり前で、ロゴひとつとってもこだわり抜き、出演&活用するメディアやSNSを取捨選択し、情報の露出をコントロールする。“このアイドルでしか味わえない”という強度の高いオリジナルのコンテンツを作り続け、パッケージング全体で他のアイドルと徹底的に差別化したことで独自のファン層を獲得し、成功を収めることができたのだ。 ■オサカナ、TPD、わーすた…...新世代の飛躍に注目  そういった意味で個人的に注目しているのは、ポストロックやエレクトロニカを貴重とした音楽性が特徴のsora tob sakana、結成3年で満を持して今春オリジナル曲を発表するアイドルネッサンス、モデルやラップ活動も好調な吉田凜音、90年代に活躍した初代のDNAを受け継ぐ東京パフォーマンスドール、「The World Standard(世界標準)」がテーマのわーすたの5組。中でもsora tob sakanaは、音楽性以外にも、ジュブナイルを描いた切ない世界観、VJと一体となったステージングなど、全体的なパッケージングがなされていて、独自路線を歩んでいる。4月からはメンバー4人中3人が高校生になり、さらに一般層から受け入れられやすくなっていくだろう。  2017年、停滞気味のシーンに風穴を空けるのは、一体どのアイドルなのか。今年も数多くのアイドルたちの動向を注視していきたいと思う。 (岡島紳士)

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