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水野美紀、病みつきになる狂気の演技! 『奪い愛、冬』は“スゴイ”ドラマだった

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/03/06 株式会社サイゾー
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 3月3日に最終回を迎えたドラマ『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)は、スゴイ作品だった。“スゴイ”なんていう曖昧な表記をしたのは、クセの強い料理店を万人にオススメするのは、ちょっぴり気が引ける感覚に近い。だが、そんな好みの分かれる店でも「スゴイから、1回食べてみて」と紹介したくなるのには、そこでしか味わえないものがあるから。そして、このドラマでの一押しは、水野美紀という女優だった。 参考:松たか子「抱かれたいの…」に大反響 『カルテット』切なすぎる夫婦関係にピリオド  水野が演じたのは、主人公・光(倉科カナ)に、夫・信(大谷亮平)を奪われてしまう妻・蘭の役。とはいえ、先に「脚が不自由になった」という嘘をついて、光から信を引き裂いたのは蘭のほう。信をつなぎとめるためなら、なりふり構わずに行動する蘭。放送されるたびに、その怪演っぷりが話題になっていた。  最終回でも、こちらの期待を裏切らない奇行のオンパレード。脚の嘘が一同の前でバレると、杖を投げつけて全力ダッシュ! 逃亡したのかと思いきや、直ぐ近くの柱の影に隠れて「あなたを愛しているからよぉぉぉぉ」と叫び、柱の影からコチラをチラッ。 「このときね、もう小学生になったころの気持ちです」最終回では、水野と大谷、そして脚本を手掛けた鈴木おさむが映像を見ながら、まさかの副音声で座談会を披露するというサプライズが用意されており、水野が蘭を演じているときの気持ちを赤裸々に語った。その語り口調もサバサバしていて実に痛快。  光と蘭が、どちらの愛が重いのかと口論するシーンは「子どものケンカですよね」とバッサリ。倉科と水野が笑いをこらえながら演じていたとまで、暴露するのだった。脚が動くことを強調するために、足踏みをしてみせたり、「私は謝らない」と腕組みをしながらその場であぐらをかいてしまう所作も、水野が自分で考えて行動していたという。  大谷も「蘭さん、たまにかわいい動きをするんです」と話し、鈴木も「水野さんは舞台を結構やられているから、表現がわかりやすい」と見解を述べると「水野美紀の可愛さが、ちょっと出ちゃってますね」と笑いを誘っていた。  また、蘭のロングヘアについては、水野から「髪を長くしておくと、どっかで切ったりできるかもしれない」と提案があったのだそう。そのアイデアから、信を引き留めるために蘭がハサミで髪を切り刻むシーンにつながった、と鈴木が真面目に制作秘話を明かすも、蘭が自分で切っておいて「あぁぁぁぁぁ、切っちゃったぁぁぁぁ」と大騒ぎする姿を見ると思わず吹き出す始末。自分で、脚本を書いているのに!「台本通りですよ、これ(笑)」と切り返す水野もさすがだ。  その後も、水野の狂気じみた行動が繰り広げられるたびに、3人で大爆笑する素の掛け合いが、微笑ましかった。近年、SNSで実況しながらドラマを楽しむ視聴者が増えているが、作り手がその輪に加わったような雰囲気で新しさを感じた。  もともと清純派として、キャリアをスタートさせた水野。代表作であるドラマ『踊る大捜査線』シリーズでは、清楚な美女を演じ、そのピュアな印象はそのまま彼女のパーソナルイメージとなっていた。だが、彼女の本性は、『私の中のおっさん』というタイトルのエッセイを発行するほどの男前キャラ。演劇ユニット『プロペラ犬』を主宰し、舞台の脚本・演出・出演を手がけ、マルチな才能を発揮している。その視点があるからこそ、ドラマの中で蘭が何を求められるのかを理解し、体当たりで演じられたのだろう。  ドラマには、いろんな形がある。料理で例えるなら、今こそ旬!という鮮度のいいテーマをフレッシュに描く刺し身のようなドラマもあれば、匠の技が光る会席料理のようなドラマもある。一方で、なんとなく流行っている素材で作られたドラマもある。「マズくはないけれど、どうしても食べたいというものではない」そんな飽食の時代を迎えているのかもしれない。  そのなかで「万人受けしなくても、これを美味しいと言ってくれるコアなファンが来てくれたら……」と、作り手が“勝負しているな”と感じる作品こそ目を引いているように思う。そして、水野の生き様も、そしてこのドラマでの役作りも、まさに真剣勝負を感じる。予定調和で終わらない、誰かの人生に突き刺さるようなインパクトを残したい、そんな仕事ぶりなのだ。  “愛を求めるがゆえに壊れていく女”というのは、何年、何十年と演じられてきたキャラクター。もはや素材そのものは鮮度も目新しさもない。そこを水野が振り切って演じることで、ひとつの娯楽作品としてグッと濃厚になった。クセの強さはものすごいが、一度味わったら「お、いいかも。もう1回」「あれ、ちょっと気になる。もう1回」とやみつきになる、そんなドラマにしたのは、水野がいたからこそ。  最後に、もう一度味わいたい人も、まだ未体験な人も、『テレ朝キャッチアップ』で最終話の無料配信(※3月10日まで)で、駆け込み視聴することができる。ああ、あの濃厚な水野美紀が、毎週見られないのかと思うと、すでに恋しい。ガンガンガンッ!と、杖を打ち付けたい気分だ。(佐藤結衣)

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