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池松壮亮×リリー・フランキーの演技合戦に期待! ドラマ『銀と金』は傑作となるか

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/01/06 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 昨年、10本もの映画に出演した池松壮亮。主役から脇役まで、どんな役でも務め上げる演技力と存在感は日本映画界に欠かせないものとなっている。そんな“映画俳優”池松壮亮がテレビドラマ初主演を務めるのが、漫画家・福本伸行原作の『銀と金』だ。  映画化もされた『賭博黙示録カイジ』をはじめ、ギャンブルを題材とした福本作品は、どの作品も人間の生々しい本性を容赦なくさらけ出す。生と死、そして金。人として生きていく上で直面する現実を、極限のシチュエーションとシニカルな視点で厳しくも骨太に描ききる。福本作品で生まれる多くの名言は、『人生を逆転する名言集』として書籍化されるほどだ。ゆえに、映像化の成否は、この“名言”をいかに嘘偽りなく表現できるかにかかっていると言っても過言ではないだろう。つまり、演じる役者がどう言葉を発することができるか、あるいは言葉にせず表現できるか。その点において、本作のキャスティングは見事といえる。  池松扮する森田鉄雄は、定職に就くことができず、何となくギャンブルをして過ごすうだつの上がらない日々を送っている。ある日、競馬場で舞い散った外れ馬券を一万円札に錯覚するほどのドツボにハマった森田に、リリー・フランキー扮する大物フィクサー・平井銀二が声をかけるところから物語は始まる。  ボサボサヘアーに無精髭、薄汚れた革ジャンに履きつぶした靴、片手には競馬新聞。池松が映ったファーストカットを観ただけで、彼が社会的に恵まれた存在ではないことがよく伝わる。池松は『愛の渦』、『ぼくたちの家族』などでも定職に就くことのない“ダメ”な若者を演じていたが、本作の森田役はそのどれにも増して、「こいつはダメだなぁ……」と思ってしまう説得力を、その立ち居振る舞いだけで表現しているのだ。もちろん、ただのダメな奴では物語の主人公に収まることはできない。一見、ダメな奴に見えながらも、うちに秘める底知れなさ、人間としての強さがそこに垣間見えなければならないからだ。そういった意味で、どんな役もこなしてきた池松以上の適役はいないだろう。  一方、本作のもう一人の主役・銀二を演じるのがリリー・フランキーだ。池松同様、唯一無二の個性で2016年は7本の映画に出演、どの役柄も強烈な印象で作品を彩った。『凶悪』や『SCOOP!』での怪演を観て、その笑顔が他のどんな役者よりも恐ろしいと感じてしまったのは筆者だけではないはずだ。ある意味、森田以上に作品の成否を握る銀二役は、原作者・福本伸行が直々にリリー・フランキーを指名したという。悪魔じみた思考で弱者や悪党から金を搾り取り、億単位の金を動かす“巨悪”。『凶悪』のような狂気じみた恐さはないが、その静かな佇まいの中にある恐さが、本作のリリー・フランキーにはあるのだ。  福本漫画の特徴として、「ざわ…ざわ…」といった擬音での表現と、モノローグの多さが挙げられる。しかし、これを実写映像化の場合、そのまま置き換えてしまっては、シリアスな作品が途端にコメディ的なものになってしまう。映画『カイジ 人生逆転ゲーム』では、モノローグも多用され、藤原竜也と香川照之のコメディすれすれともいえる過剰な演技合戦が、独特の緊張感と勢いを生み出していた。が、映画と違い、全12話からなる断続的なドラマの形では、あの過剰さはどうしても余計なものとなってしまうだろう。  実際、第一話ではモノローグはゼロ、擬音のテロップやSEが入る演出もなく、全編がおどろおどろしい緊張感に包まれていた。その緊張感を構築できたのも、池松壮亮とリリー・フランキー、脇を固めるマキタスポーツ、村上淳の確かな演技力ゆえだろう。人物に直接語らせずとも、視線や振る舞いで心情を映す。分かりやすさや、ちょうど良さが求められがちな日本のドラマ表現の中で、本作の純日本映画的な構成がどこまで視聴者を惹きつけてくれるか、そして福本伸行作品の魅力を引き出してくれるか、これからの展開が楽しみでならない。(石井達也)

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