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満島ひかり、名演技の秘訣は “目の使い方”にアリ 気鋭の演出家が分析

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/02/21 株式会社サイゾー
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 女優・満島ひかりの卓越した演技力に、改めて高い注目が集まっている。現在放送中のドラマ『カルテット』(TBS/毎週火曜よる10時~)では、マイペースでのんびりした性格のチェリスト・世吹すずめ役を好演。ユニークな台詞回しや心の機微を伝える繊細な演技、飾らないラフなヘアスタイルで、視聴者から高い支持を得ている。2月18日より全国公開されている映画『愚行録』では、育児放棄をして逮捕された母・田中光子を演じ、圧巻の“独白”シーンが話題となっている。また、女優としての評価を確立した園子温監督の映画『愛のむきだし』が、ドラマ化してJ:COMで配信開始されたこともあり、過去作にも再び脚光が当たっている。 参考:二階堂ふみのラブシーンはなぜ心を揺さぶるのか  10代で脱いだ大物女優の系譜から考察  いま最も支持されている女優のひとりといえる満島ひかり。その演技は、具体的にどんなところが優れているのか。テレビドラマや舞台を手がける演出家・脚本家の登米裕一氏に聞いた。 「満島さんの演技で最も特徴的なのは、“目の使い方”と“笑顔”です。人間は社会を営むうえで、表情によるコミュニケーション能力を発達させてきました。ほかの動物と比べて白目が露出しているのと、笑顔を浮かべるのは、人間の特質といえます。満島さんは、相手と話したいのか、それともためらっているのかといった心理的な情報を、何を見て何を見ないかなど、瞳の動きで表現するのがとても上手です。目を泳がせたり、目が合ったと思ったら瞬きして逸らしたり、まさに“目は口ほどに物を言う”を体現しています。白目の部分が、その人の意思の余白にあたるとすると、その余白の使い方がうまいというか。

 また、笑顔の種類がバリエーションに富んでいるのも特徴です。苦笑、冷笑、嘲笑、微笑、鼻で笑ったり、口だけ笑って目が笑っていなかったり。笑っているフリから、泣き笑いまで、笑顔だけでこれほど種類があるのかと驚くほどです。表情筋の使い方が上手で、ただ笑うだけではなく、そこに陰りを入れられる。結果として、目の前の状況をポジティブに捉えようとしながら、それができないという、人物の葛藤を表現することができる。愛したいけれど、愛せないといったドラマチックな状況において、彼女の演技は絶大な説得力を生みます。

 満島さんの演技につい惹きつけられてしまうのは、それが極めて人間的なコミュニケーションに則ったやり方で、まさに“役を生きている”からだといえるのではないでしょうか」

 満島の表情による演技は、相手役とのラリーのようなやり取りにおいて、特に効果的だという。一方で満島は、『愚行録』における長台詞など、独演シーンにおいても見事な芝居を披露している。その秘訣は、役作りのアプローチに依るところが大きいと、登米氏は見ている。 「相手役とテンポよく応酬する短い台詞と、その役者自身が自ら場の空気を作っていく長い台詞では、違う筋肉を使うため、満島さんのように両方が得意な女優は珍しいです。長い台詞で観るものに説得力を与えるには、本当にその状況の中に身を置いていると信じられるだけの、役者自身による高い集中力が必要です。そして、その集中力の拠り所として、演じる役柄の輪郭をきちんと構築していることが大切になります。

 満島さんはおそらく、細部まで徹底的に考え抜いて、その役柄の輪郭を作り上げているのでしょう。彼女自身、役作りに悩むことが多いそうですが、その悩みは考え抜いたからこそ生まれるものです。そして、役の土台がしっかりしていることが深い自信に繋がり、カメラが回っていることを感じさせないほどの集中力を発揮できる。

 よく“感性で演じる”という役者がいます。そのラフなやり方にももちろん長所はあるのですが、彼女のアプローチはその対極にある非常に知的なもので、感性だけでは到達できない領域にあります。とても強度のある芝居です」

 30代を迎え、ますますその演技に磨きがかかっている満島ひかり。今夜放送の『カルテット』でも、抜群の芝居を披露してくれるはずだ。(松田広宣)

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