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焦点:ほころび始めた中朝関係、「唇亡歯寒」の終焉か

Reuters のロゴ Reuters 2017/09/11
焦点:ほころび始めた中朝関係、「唇亡歯寒」の終焉か © REUTERS 焦点:ほころび始めた中朝関係、「唇亡歯寒」の終焉か

[北京 8日 ロイター] - 北朝鮮の金正恩氏が2011年12月に同国の指導者となったとき、当時の胡錦濤・中国国家主席は、若くして指導者となった未知数の正恩氏に対する支持を対外的に表明し、両国間における「従来の友好的な協力関係」が強化されると予測していた。

それから2年後、正恩氏は叔父の張成沢氏の処刑を命じた。中国との主な交渉窓口であった張氏は、閉鎖的な北朝鮮で比較的改革志向の人物と見られていた。

以来、中国は米国のように北朝鮮の怒りの矛先にされるのではないかと、一部の外交官や専門家が危惧するほどに、中朝関係は急速に悪化していった。

米国とその同盟諸国、そして中国内でも多くの人が、北朝鮮を抑え込むのに中国政府はもっと努力すべきだと考えている。その一方で、北朝鮮の核・ミサイル能力の加速は、ハイレベルな中朝間外交のほぼ全面的な崩壊と同時に起きている。

北朝鮮との交渉窓口を長年務めてきた武大偉・朝鮮半島問題特別代表は、今夏に引退するまで1年余り訪朝していなかった。外交筋によると、後任の孔鉉佑氏もまだ訪朝していない。

大国である中国が貧困にあえぐ北朝鮮に対して、外交的支配力を行使しているという考えは間違っていると、中国人民大学の国際関係学教授、金燦栄氏は指摘する。

「両国間において主従関係は一度も存在したことはない。一度もだ。とりわけ冷戦後、北朝鮮は困難な状況に陥った時に、中国から十分な支援を受けられなかった。そこで、北朝鮮は自ら切り抜ける決心をした」

20万人から300万人が犠牲となったとされる1990年代半ばの飢きんが、集産主義の北朝鮮経済にとって転換点となり、個人による取引を余儀なくされた。それにより、北朝鮮はある程度、外部支援からの自立が可能となり、自主性を唱える主体(チュチェ)思想に信ぴょう性を与えた。

<混乱回避>

中国は1950─53年の朝鮮戦争で北朝鮮と共に戦い、当時の毛沢東国家主席は長男を亡くしている。以来、中国は北朝鮮にとって、主要な同盟国であり、貿易相手国となっている。

中朝関係が常に疑念と不信感で曇りがちな一方、中国は北朝鮮による挑発行動をまだましなものとして渋々大目に見てきた。中国にとって最悪なのは、北朝鮮が崩壊して国境から中国に難民がなだれ込み、朝鮮半島が米国の支援する韓国政府の支配下に置かれることだ。

それこそ、今回米国が提案したエネルギー禁輸といった極端な措置は北朝鮮の崩壊を招きかねないと中国が懸念し、相当な経済的影響力を行使するのに消極的な理由でもある。

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代わりに、中国は冷静かつ抑制された、交渉による解決を繰り返し呼びかけている。

北朝鮮政府は、電子メールやファクス、電話でコメントを求める外国メディアが接触できる窓口を平壌に設けていない。北京にある北朝鮮大使館からも、コメントを直ちに得られなかった。

中国外務省も、ファクスによるコメント要請に対し回答しなかった。同省は「中国責任論」に対し繰り返し反発しており、緊張を解決するには当事国(北朝鮮、韓国、米国)が鍵を握っていると主張している。

<封建時代>

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2011年に死去するまで、北朝鮮の金正日総書記は、後継者として自身が選んだ息子を確実に支援するよう、中国に何度も懇願していた。

当時の中国の胡主席がそれに報いようとするなか、20代後半だった正恩氏は、最も強力な同盟国と距離を置き始める。

「この若き指導者は知名度も低く、まだその真価も証明されてはいない。北朝鮮内には数多くの政治問題があり、彼は特に、中国の息のかかっていないことを証明しなければならなかった」

こう語るのは、韓国ソウルにある延世大学校のジョン・デラリー氏だ。「正恩氏は、胡錦濤氏、そして(現中国国家主席の)習近平氏を全く寄せ付けないようにしようと最初に決めたのだと思う」

政権の座に就いてから数カ月のうちに、正恩氏は、核保有国であることを宣言するため、憲法を修正することによって北朝鮮の意思を知らしめた。2013年に叔父を処刑したことで、この若き指導者に対する中国の不信感は決定的となった。

「中国が快く思わないのは当たり前だ」と、北京に駐在し北朝鮮を担当する外国の外交官は言う。「叔父を処刑するなんて、まるで封建時代だ」

関係改善のため、習主席は、2015年10月の朝鮮労働党創建70年の記念日に行われた軍事パレードに、共産党幹部の劉雲山・政治局常務委員を派遣した。

劉氏は、正恩氏のリーダーシップを称賛する習主席からの書簡を手渡した。書簡には、中国共産党からだけでなく、習氏個人からの「心のこもった言葉」が含まれており、敬意が強くにじみ出ていた。

習氏の歩み寄りに対し、北朝鮮の行動は厚かましさを増す一方だ。北朝鮮が中国に最大の恥をかかせるタイミングをはかっていると、多くの専門家はみている。例えば、3日の核実験は中国がBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国)首脳会議を主催するタイミングであり、5月の長距離ミサイル発射実験は、習氏の外交政策の目玉であるシルクロード経済圏構想「一帯一路」の国際首脳会議の直前であった。

<唇亡歯寒>

中国と北朝鮮との関係について、毛沢東が「唇亡歯寒(唇ほろびて歯寒し)」と表現したことは、「口と歯ほどの緊密さ」を意味していると、よく誤解されている。

だが、この言葉は「唇がほろびてしまっては歯は寒い」と訳されるべきであり、地政学的な安全保障上の緩衝地帯として、北朝鮮の戦略的重要性について言及している。

北朝鮮による行動のせいで受ける圧力を腹立たしく思っているにもかかわらず、中国は極端な強硬策に出ることは控えている。

正恩氏の異母兄、金正男氏がマレーシアの空港で2月に殺害されたときにも、中国はほとんど何も語らなかった。正男氏は後継者争いで正恩氏のライバルと目され、北京とマカオで長い間生活していた。

中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は、北朝鮮による6回目の核実験を受けて同国への石油供給停止や中朝国境の封鎖を行っても、さらなる実験を阻止できるかどうかは分からず、中朝の対立につながり中国の国益を損ねることになると警告した。

中国がこれまでの国連制裁決議を支持してきたことを、北朝鮮はとても不愉快に思っていると、北京にあるカーネギー清華グローバル政策センターの北朝鮮専門家、Zhao Tong氏は指摘。「もし中国が北朝鮮の体制を直接不安定化させるような強硬な経済制裁を支持すれば、北朝鮮が、米国と同じくらい中国に対しても敵対的になる可能性がある」

(Philip Wen記者、Christian Shepherd記者 翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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