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焦点:北朝鮮製の衣料品が支える「メイド・イン・チャイナ」

Reuters のロゴ Reuters 2017/08/19

[丹東(中国) 13日 ロイター] - 中国の衣料品メーカーは、より安い労働力が享受できる北朝鮮での製造を増やしており、「メイド・イン・チャイナ」のタグが付けられた北朝鮮製商品が、世界中に輸出されている。

世界で販売する安価な衣料品を製造するため、国際的孤立を深める隣国を利用する中国企業の実態が、国境沿いにある中国遼寧省丹東の貿易業者らに対するロイターの取材によって明らかになった。

これは、北朝鮮のミサイル・核プログラムに対する国連制裁強化が同国へのドアを次々と閉ざしている一方で、開かれた扉もあることを示している。国連制裁には、繊維輸出の禁止は含まれていない。

「世界中から注文がきている」。中朝貿易のほとんどの物資が経由する丹東で、韓国系中国人ビジネスマンはそう語った。他の多くの人々と同じく、神経質な話題であることから、匿名を条件に取材に応じた。

丹東には数十の代理業者が存在し、中国の衣料品サプライヤーと米国、欧州、日本、韓国、カナダ、ロシアのバイヤーのあいだを仲介しているという。「中国のサプライヤーに、顧客に正直に話す気があるかを問い合わせている。衣料品を購入した消費者が、北朝鮮で作られたものだと気づかないこともある。とても慎重を要する」

昨年の北朝鮮輸出において、繊維製品は石炭や他の鉱物に次いで2番目に大きく、計7億5200万ドル(約834億円)に上った、と大韓貿易投資振興公社(KOTRA)のデータは示している。輸出全体の総額は、前年比4.6%増の28億2000万ドルだった。

今月採択された新たな国連制裁決議では、石炭の輸出を全面的に禁止している。

北朝鮮の盛んな繊維産業は、困窮する同国が2006年に初めて核実験を実施して以来、国連から科されてきた一連の制裁措置に対し、市場改革の進展も限られるなか、いかに適応してきたかを物語っている。

同時に、トランプ米大統領が中国に対し、北朝鮮の兵器プログラム抑制に向けた努力を要請しているにもかかわらず、いまだ北朝鮮が経済的ライフラインとして中国に依存している実態も示している。

中国の対朝輸出は、国連の禁輸リストに含まれていない織物材料や他の労働集約財などがけん引し、今年上半期でほぼ3割膨らみ16億7000万ドルに達した、と中国関税当局の報道官が語った。

中国のサプライヤーは、衣料品が集められ輸出される丹東を経由して、北朝鮮の製造工場に布地や他の原材料を送っている。

<活況を呈する工場>

豪スポーツブランド、リップカールは昨年、「メイド・イン・チャイナ」とタグ付けされた同社のスキー用品の一部が、実際には北朝鮮の工場で製造されていたとして謝罪。「未認可の下請け」に外部委託した不正な卸売業者を非難した。

だが丹東の取引業者や代理業者は、それは広く行われている慣行だと口をそろえる。

北朝鮮で衣料品を製造することにより最大75%節約できる、と首都平壌に住む中国人取引業者は主張する。

一部の北朝鮮の工場は、丹東から国境を渡ってすぐの新義州市にある。平壌郊外にも工場がある。完成品は北朝鮮から中国の港へ直接輸送され、そこから世界各地に輸出されることが多いと中国人の取引業者らは話す。

北朝鮮には約15の衣類を手掛ける大手輸出企業が存在し、それぞれが国内数カ所に工場を稼働しているほか、中規模企業も数十社ある、と外国企業の北朝鮮ビジネスを手助けするオランダのコンサルタント会社GPIは説明する。

北朝鮮にある工場は全て国有で、なかでも繊維工場は活況のようだ。

「われわれの衣料も北朝鮮で製造しようと試みているが、現在、工場に全く空きがない」と、丹東から列車で2時間の場所にある港湾都市大連の工場で、韓国系中国人の女性は話す。

「北朝鮮の工員たちは中国人と比べ、1日当たり3割多く製造できる」と説明。「北朝鮮では、工員は行きたいときにトイレに行くこともできない。製造ライン全体が遅れてしまうと考えるから」

「彼らは、ただカネのために働く中国の工員とは違う。北朝鮮人は異なる姿勢だ。国のため、指導者のために働いていると信じている」

また、彼ら北朝鮮工員の賃金は、他のアジア諸国のそれをはるかに下回っている。

韓国との国境付近にあり、現在は閉鎖されている開城(ケソン)工業団地で働く北朝鮮人の賃金は、月に最低約75ドル、平均で約160ドルだった。一方、中国の平均的な工員の賃金は同450─750ドル。ケソンは韓国との協力事業であり、北朝鮮での一般的な水準よりかなり高い給与体系となっているが、これは韓国との取り決めによるものだ。

<中国で働く北朝鮮人>

中国の衣料メーカーは、バングラデシュやベトナム、カンボジアに自社工場を移転させる一方で、北朝鮮工場の利用を加速させている。

「中国の賃金はもう高過ぎる。非常に多くの発注が北朝鮮に向かうのも無理からぬことだ」と、丹東の繊維産業で働く韓国系中国人女性は言う。

中国の繊維企業はまた、国内で労働単価の安い北朝鮮人を数多く雇っている。

北朝鮮は、とりわけ国連制裁によって輸出収入源の一部が断たれて以来、外貨獲得の手段として海外で働く北朝鮮人に頼っている。彼らの賃金の大半は政府に送金され、同国の野心的なミサイル・核プログラムの資金として使われると、国連は指摘している。

北朝鮮に対して今月科された新たな国連制裁は、国外で働く北朝鮮人の数を増やすことを各国に禁止している。

中国は国内工場や飲食店で働く北朝鮮人の数を公表していないものの、2─3年前のピークからは減少している、と北京にある中国人民大学の北朝鮮専門家、成曉河氏は指摘する。

「北朝鮮人を雇うのは面倒なこと」と語るのは、前出の大連でビジネスを行う韓国系中国人女性だ。「正しい段取りが必要だ。居住スペースは完全に隔離されなくてはならず、毎日授業が受けられる教室も提供しなければならない。彼らは医師や看護師や料理人、そして毎日北朝鮮のイデオロギーを教える教師を連れてくる」

ロイターが訪れた丹東のある衣料品工場では、北朝鮮人40人を雇っていた。彼らは、サプライチェーンに厳しく、北朝鮮国内での製造をはっきりと拒否する顧客向けの、比較的小さな注文に対応している。

中国工場で働く北朝鮮人の賃金は、中国人の平均額の半分程度となる約2000元(約3万3000円)だと、工場主は語った。

北朝鮮人の工員は、賃金の約3分の1を手元に置くことを許されるが、残りは北朝鮮の政府関係者に渡されるという。工場の一般的な勤務時間は、午前7時半から午後10時ごろまでだ。

工員は全員が女性で、ピンクと黒の制服を着て、4列あるミシンの前に座り、委託された冬用のジャケットを作っている。頭上には、青い太字で「清潔」「整頓」と中国語で書かれている。工場のメインフロアは、ミシンが動くけたたましい音以外、静まり返っていた。

(Sue-Lin Wong記者、Philip Wen記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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