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焦点:社運かけるユニクロ革命、早期の収益効果が課題に

Reuters のロゴ Reuters 2017/05/30

[東京 30日 ロイター] - アパレルビジネスの抜本的な転換をめざすファーストリテイリング(9983.T)が「UNIQLO CITY TOKYO」(東京・有明)を拠点に大規模な改革を進めている。国内販売が伸び悩むなかで、スペインのインディテックス(ITX.MC)などとの国際競争も激化。「世界一」の座を確保するうえで事業モデルの刷新は緊急課題だ。

「(大胆な改革を)最初にやった企業が世界で勝ち残る」―――そう語る柳井正社長が社運をかける「有明プロジェクト」の成否は、時間との戦いでもある。

<「情報製造小売業」モデルへの転換>

製造小売業(SPA)として、アパレル産業のあり方を大きく変えたユニクロが、次に描くのは「情報製造小売業」の確立だ。作った商品をいかに売るかではなく、消費者ニーズをリアルタイムで把握し、その情報に即応して製造・販売するビジネスモデル。デジタル化やグローバル化の急速な進展を踏まえた改革は、今後のユニクロの成長に必要な利益率向上やEコマース(EC)拡大という狙いもある。

約1000人が勤務する有明オフィスには、ワンフロア(1万6500平方メートル)にマーチャンダイジング(MD)、R&D、マーケティングなどの機能を集結させた。情報をダイレクトに、横断的に共有することにより、意思決定のスピードを上げ、消費者ニーズに素早く対応するモデルへの転換を図ろうとしている。 <収益への寄与拡大には時間>

焦点:社運かけるユニクロ革命、早期の収益効果が課題に © REUTERS 焦点:社運かけるユニクロ革命、早期の収益効果が課題に

新たなビジネスモデルへの施策もすでに出始めている。翌日配送については本州・四国地域で始まった。商品の受け取りは3大コンビニで可能になった。また、セミオーダーのジャケットやカスタマイズした商品の注文ができるほか、幅広いサイズやオンライン限定商品などの品揃えも豊富になった。いつでも、好きな商品を好きな時に購入できる体制に向けて、徐々に形は整いつつある。

だが、今年3月に「手のひらに世界最大のユニクロオープン」としてリニューアルしたオンライン販売には、まだ目に見える効果は出ていない。今月発表された4月国内ユニクロの既存店売上高+ダイレクト販売は6.2%増。アナリストは、ネット販売を含むダイレクト販売の増収寄与は1.1%程度にとどまっていると試算する。

「有明プロジェクトによるサプライチェーン改革が収益貢献するには時間が掛かる」(みずほ証券アナリストの高橋俊雄氏)との見方は多い。

トムソン・ロイターのスターマイン調査がまとめたアナリスト17人の18年8月期の営業利益予測の平均値は1998億円で、17年8月期の会社計画1750億円に比べて14%増益。17年8月期の会社計画の営業増益率計画は37.5%で、現時点では、増益率が縮小することになっており、今回の改革を織り込み切れてはいない。

柳井正社長は「3年後にはあらゆる産業が新しい局面を迎える」と話しており、有明プロジェクトが成果を生むまで3年程度が勝負とみているようだ。その行方について、ドイツ証券アナリストの風早隆弘氏は「(柳井氏が)目指す姿をプロのピアニストだとすれば、現在のユニクロは初級者が弾く黄色いバイエルの段階。目指す方向性は正しく、理想に向かって、3歩進んで2歩下がることを繰り返していくのだろう」と予想する。

<広がる「ZARA」との格差>

ファーストリテは16年8月期、売上高でギャップ(GPS.N)を抜き、アパレル業界で世界第3位となった。しかし、手放しで喜ぶことはできない。13年8月期には11.7%あった売上高営業利益率が10%を割り込み、16年8月期には7.1%にまで低下している。一方、アパレル業界首位でZARAを展開するインディテックスの17年1月期の売上高営業利益率は17.2%と、高水準を維持しており、その差は広がっている。

ユニクロとZARAを比較した著書もあるディマンドワークスの斉藤孝浩代表は「ファッションビジネスで利益を得るには、いかに値下げを少なくするか、シーズン最後の在庫をいかに圧縮できるか、このふたつで決まる」と指摘する。

斉藤氏によると、ユニクロは、アジアなどでローコストに作り込んだ商品を「売り切る」ビジネスモデルであるのに対し、インディテックスは、小ロット・短サイクルで「作り足す」ビジネスモデル。「売り切り」のモデルは、天候や売れ筋の読み違いで機会損失が発生したり、値下げ販売が増えることにつながりやすい。「ユニクロのベーシックなモノ作りは世界最強。しかし、それだけでは限界がある。インディテックスのモデルは、厳しいアパレル業界の中で勝ち残っているビジネスモデル」(斉藤氏)と分析する。

<物流改革でEC拡大>

2016年9月—17年2月期(中間期)の国内ユニクロのEC比率は6.2%。経済産業省が発表した2016年の衣類・服装雑貨のEC比率は11%で、ユニクロは出遅れていると言える。同社では、早期に30%まで引き上げたいとしているが、そのカギを握るのも「有明センター」だ。

小島ファッションマーケティングの小島健輔代表は、これまでユニクロのECが伸び悩んでいた背景には、物流の問題があったと指摘する。ユニクロは、生産地で検品から仕分けまでを行う方法を取っていた。しかし、あらかじめ仕分けされていることで、ECを含む販売変動に対応することが難しいほか、店舗で過不足が生じたり、作業負担も大きかったという。消費地に「有明センター」のようなピッキングの拠点を持つことで、販売動向に臨機応変に対応することができるようになる、と小島氏はみる。

<成否握る「柳井社長」>

全社的な大改革が成功するか否かのカギを握るのは「柳井社長の存在」との声が複数から出ている。 風早氏は「儲かっていて、マネージメントの意識が高く、テクノロジーの要求度が高い会社でなければできない改革。付いて行くことのできるアパレルは少ない」と、柳井社長だからこそできると評価する。 一方、小島氏はこうした改革を成功させるには、現場に権限と責任を持たせ、現場と経営陣の「すりあわせ」によって進むことが必要だと指摘。「柳井社長のアジア中央集権的ガバナンスが変わらないと動かない。そこが変わらなければ、成功する可能性はない」と厳しい見方をしている。

(清水律子 編集:北松克朗)

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