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焦点:米国の太陽光ブーム、「トランプ関税」で終焉迎えるか

Reuters のロゴ Reuters 2017/07/28

Nichola Groom

[ロサンゼルス 25日 ロイター] - 米国の太陽光発電事業者は、トランプ政権が貿易救済措置を取ることを恐れて、低価格の輸入ソーラーパネルを買い漁っている。政策次第ではコストが跳ね上がり、米国経済で最も有望な分野の1つである太陽光発電部門の前途に暗雲が立ちこめることになりかねないからだ。

米国の消費者や企業のあいだでは、太陽光エネルギーに対する支持は急速に高まっている。中国を筆頭とするアジア諸国で製造されている安価な太陽電池や太陽光パネルの恩恵もあって、2010年以降、発電コストは7割前後も低下し、より多くの国民や企業が太陽光発電を導入できるようになったのだ。

昨年、米国での導入件数は過去最高を記録。関連雇用も急速に拡大している。非営利団体のソーラー財団によれば、太陽光発電産業による米国内の雇用は26万人以上に達している。その大半は、屋根へのパネル設置や、強烈な陽光にさらされる米砂漠地帯での電力事業者向け太陽光プラントの建設労働者だ。

だが、こうした状況に冷水を浴びせる兆候がすでに現れている。太陽光発電業界は、ジョージア州のサニバという太陽光発電パネルメーカーが最近行った提訴に対して、トランプ大統領がどう対応するかを注視している。

サニバは、米国メーカーの競争力回復に向け、輸入パネル価格を実質2倍に引き上げるよう政府に求めている。昨年米国で販売された太陽電池パネルの約95%は外国産であり、ほとんどは中国、マレーシア、フィリピン製だった、とSPVマーケットリサーチは分析する。

トランプ大統領は、国内企業を保護するための関税賦課について幅広い裁量権を持っている。米国の家庭や企業向け電力供給において、太陽光が化石燃料に対抗できるかどうかは、大統領の行動によって左右される可能性があると言えるだろう。

太陽電池パネルに関する貿易紛争について、ホワイトハウスはコメントを控えている。とはいえ、トランプ政権は「不公正な」輸入品を罰することで鉄鋼などの国内メーカーを保護すると公約で掲げている。

こうして、最悪の事態に向けた準備に追われる太陽光発電産業のパニック的な需要により、ソーラーパネルのスポット価格は、ここ数週間で最大2割も上昇した。新たな関税導入を恐れた設置業者らが、パネルの確保を急いでいるためだ。

慎重な国内エネルギー利用者は、太陽光プロジェクトを一部保留しており、メーカーは他の市場開拓も視野に置いている。投資家の一部も安全な資金待避先を探している状態だ。

米国における太陽光発電の大規模プロジェクトに対する第2・四半期の投資額は14億ドルを記録。第1・四半期の32億ドル、前年同期の17億ドルから低下しており、これはサニバの提訴を巡る懸念を反映したものだ、とマーコム・キャピタル・グループの調査は示している。

特に影響を受けやすいのは、電力事業者や大企業向けにサービスを提供するソーラーファーム(大規模太陽光発電所)の開発事業者だ。彼らのプロジェクトのコストの半分はソーラーパネル費用が占めている。

パネル価格の急騰は「大規模ソーラー事業者にとって大惨事になりかねない」と太陽光パネル製造大手サンパワー(SPWR.O)のトム・ワーナー最高経営責任者(CEO)は懸念を隠さない。

焦点:米国の太陽光ブーム、「トランプ関税」で終焉迎えるか © REUTERS 焦点:米国の太陽光ブーム、「トランプ関税」で終焉迎えるか

「開発事業者は危機感を抱き、対応策を練っている」と同CEOは語る。カリフォルニア州サンノゼに本拠を置くサンパワーは、仏石油大手のトタル(TOTF.PA)が株式の過半数を保有している。

一般家庭向けにサービスを提供する太陽光発電事業者も、同じく神経を尖らせている。パネル価格が急騰すれば、住宅用パネル設置も、それに伴うすべての雇用も減速しかねないからだ。

トランプ大統領が外国メーカーを罰するために動けば、自身が守ると公約した国内ブルーカラー労働者に打撃を与えかねない、とサンフランシスコに本拠を置くサンラン(RUN.O)のエド・フェンスター会長は指摘する。太陽光発電産業の雇用は、トランプ氏が擁護してきた炭鉱産業の雇用の5倍以上にも達している。

焦点:米国の太陽光ブーム、「トランプ関税」で終焉迎えるか © REUTERS 焦点:米国の太陽光ブーム、「トランプ関税」で終焉迎えるか

「ソーラーパネルに対する課税は、この国が最も必要としている、給与水準の高い雇用を台無しにしてしまう。そうした雇用は輸出することも自動化することもできない」とフェンスター会長は語る。

<救済措置を模索>

ソーラーパネルをめぐる論争は、まさに、グローバル貿易が米製造業に打撃を与える一方で、消費者に膨大なコスト節約をもたらしてきた最も最近の例だ。

太陽電池技術を発明した米国は、ほんの2001年までは、世界全体のソーラーパネル生産量の4分の1以上を占めていた。だが、いまや生産量で世界1位を誇る中国に押され、現在はそのシェアは2%以下にまで低下してしまった。

中国企業が市場シェアを獲得するために自国政府からの補助金を受けて違法なダンピングを行っている、と競合会社は長らく訴えてきた。米国は2012年、中国企業に対して平均約40%の懲罰的関税を、また2014年には台湾系メーカー対象に平均約20%の関税を課している、とGTMリサーチは指摘する。

これらの関税は今でも有効だ。だが、4月に破産申請したサニバはそれ以上の対応を求めている。連邦破産法11条に基づく申請から2週間も経たないうちに、同社は米国際貿易委員会(ITC)に珍しい形式で救済を求める嘆願書を提出した。

そのなかでサニバは、中国・台湾企業が、関税適用を回避するために他の低賃金国に生産を移転したことにより、これまでの関税は機能していないと主張。

政府に対し、懲罰的関税の回避防止のため、米国外のどこで生産されたものであっても、ソーラーパネル価格を出力1ワット当たり最低78セントに定めるよう求めている。これは最近の価格高騰以前の平均水準だった35セントから大きく跳ね上がる。

皮肉なことに、2015年以来、サニバ株式の過半数は中国企業が保有している。5月には、ドイツの太陽光発電設備会社ソーラーワールドAG(SWVKk.DE)の米国事業部であるソーラーワールド・アメリカが、共同請願者としてサニバによる提訴に合流した。

サニバが求めているのは米国の製造企業に「成功の機会」を与えることだ、と同社代理人クリスチャン・ハドソン氏はロイターに述べた。

「米国を拠点とするソーラー製造企業が消滅してしまえば、製造が最終的には世界の1カ所に集中することになり、開発・設置事業者は最終的に大きな不安定性に直面する」と同氏はメールで回答した。

米ITCは、輸入品が国内生産者に損害を与えているかを、9月22日までに判断する。深刻な損害があると認定した場合、11月13日までに米大統領に救済策を勧告する。その勧告を実施するか、別の行動をとるかは、大統領の裁量に委ねられている。

トランプ大統領が何をやるかは誰にも予想できない。大統領はこれまで再生可能エネルギーに対して概ね否定的だったが、最近になって、彼が提案しているメキシコ国境の「壁」上にソーラーパネルを設置することを提案している。

トランプ大統領が何らかの行動を起こした場合、中国が報復措置を講じることはほぼ確実だ。2012年に課された米関税に対しては、太陽電池セルの原材料である米国産ポリシリコンに独自の関税をかけることで対抗した。

<最悪に備え>

ソーラー関連企業はすでに実務面での修正を進めている。

韓国のハンファQセルズ(HQCL.O)は、トランプ大統領が新たな貿易救済策を講じた場合、米国向け出荷を解約又は停止できるとの項目を契約書に加えている。

米国とフィリピンでソーラーパネルを製造しており、米国におけるプロジェクト開発大手でもあるサンパワーは、関税が米国産業の足かせになる場合、「迷わず」海外への事業展開を進めるとワーナーCEOは語った。

サウスカロライナに本拠を置き、電力事業者や一般家庭向けのプロジェクト建設に携わる太陽光発電企業サザンカレントは、今後の利用のためにモジュールを調達し倉庫で保管している。通常であれば、案件の資金調達が完了した後にモジュールを手配する、と同社の開発・戦略担当副社長ブレット・サワーズ氏は説明する。

「入手困難になることが心配なので、今はパネル購入に資金を注ぎ込んでいる」と同氏は語る。

テキサス州の電力事業者オースティン・エナジーは、「もし関税が導入されたら、弊社の太陽光発電プラントのうち1カ所に遅れが生じる可能性がある」とメールによる声明で警告している。

大規模ソーラーファームの建設に携わる、セントルイスに本拠を置くマッカーシー・ビルディング・カンパニーズは、あまりにも不確実性が大きいため、先日プロジェクト1件を棚上げにした、と再生可能エネルギー担当のスコット・カナダ上級副社長は語る。

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今回の提訴で恩恵を受けている企業も、少なくとも1社ある。アリゾナ州テンピに本拠を置く太陽光発電モジュール製造大手ファーストソーラー(FSLR.O)だ。

ファーストソーラーが製造するソーラーパネルの原料は、市場の主流であり今回の貿易紛争の対象となった結晶シリコンではなく、テルル化カドミウムである。サニバが今回の請願を提出して以来、ファーストソーラーの株価は50%以上も上昇した。ファーストソーラーはコメントしなかった。

(翻訳:エァクレーレン)

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