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牧野由依は“歌えて、弾けて、踊れるエンターテイナー”へ 『Reset&Happiness』ライブの充実

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/08/15 株式会社ブループリント
© Real Sound 提供

「新しい試みをちょっとずつ取り入れながら、私自身も進化していけたらいいなと思って、この公演をスタッフさんと作ってきました。『Reset』から、『Happiness』へ――。みんなが幸せになって帰ってもらえたら嬉しいです」 今年1月の公演では「Concert」ではなく「Live」と銘打ち、途中ダンサーを従えた振り付きのパートを盛り込むなど新たな挑戦をした牧野由依。自身も声優として出演するTVアニメ『サクラダリセット』の第1クールOP曲「Reset」と第2クールED曲「Colors of Happiness」の発売を記念し、AiiA 2.5 Theater Tokyoで行なわれた『Yui Makino Live「Reset&Happiness」』は、そうした近年の変化をさらに推し進めた素晴らしい一夜だった。牧野由依が語る、声優アーティストとしての変化と葛藤「断食状態を経験したからこそハングリー精神が芽生えた」 もともと彼女のライブは、音大卒の経歴を持つピアノ演奏や独特のシルキーボイスを活かすため、長らく「コンサート」形式が取られていた。とはいえこの日は冒頭から四つ打ちのEDMに乗ってダンサー2人と踊るアグレッシブな展開。そのまま『サクラダリセット』の12話までのOP曲「Reset」に繋げると、「座ってる場合じゃない!」と観客を煽り、大歓声の中「夏休みの宿題」に突入する。ここでシアター式の会場は早くもスタンディングのライブハウスのようになり、その後もライブアレンジされた「ふわふわ♪」や「88秒フライト」をダンサーと踊りながら披露。「ライブ」モードを強調して興奮度を一気に上げていく。 とはいえ、ピアノを生かしたしっとりとした楽曲も彼女の魅力。「たったひとつ」からは一転「コンサート」モードに切り替えて、そのままクラシックコーナーに突入し、まずは岩井俊二監督作『LOVE LETTER』で自身が演奏を担当した「A Winter Story」をピアノで独奏。その後バイオリンの丸山美里とチェロ担当で音大時代の同級生・渡邉雅弦を迎えて、パッヘルベルの「カノン」を披露する。歌い踊る「ライブ」で盛り上げ、聴かせる「コンサート」で起伏を作る。アカデミックな音楽とポップスとを自在に行き来する雰囲気は彼女ならではだ。 そうして改めて感じられたのは、ソロ曲がもともと持っていた音楽性の多彩さだ。2015年の10周年記念アルバム『タビノオト』でも元Cymbalsの矢野博康やキリンジの堀込高樹&コトリンゴ、Sugar’s CampaignのAvec Avecなどを迎えたり、最新シングル『Reset』では音大時代の友人・滝澤俊輔の提供曲を採用したりするなど、これまでも作品ごとに新たな要素を加えてきた彼女だが、今回はそこにライブならではのアレンジを多数ほどこし、ダンサーと踊る楽曲を大幅に増やすことで、それぞれの楽曲のライブでの魅力を最大限に引き出していく。こうした現在のライブ形式は、「以前からのファンにも、『アイドルマスターシンデレラガールズ』や『プリパラ』経由で彼女を知った新たなファンにも楽しめるものにしたい」という思いではじまったもの。けれどそれが実現できたのは、もともと彼女のソロ曲が持つ多彩さゆえだろう。 中でもハイライトは、後半インタールード的に設けられたダンスパートを経てのエレクトロニックなビートを取り入れた楽曲群。「secret melody」や「Synchronicity」ではダンサーとともにステージを広く使い、「Zipper」では「いくよー!」と観客も一緒になって振りを踊る。ホーンやストリングスが印象的な「ワールドツアー」ではミラーボールも加えながら、観客の手拍子とともに華やかな雰囲気を増した。それを支えているのは、ファンとの距離の近さを感じさせるMCにも顕著な「楽しさを共有したい」という強い信念だ。 実際、この日のパフォーマンスは「より観客と一緒になってライブを作っていきたい」という彼女の気持ちがひしひしと伝わってくるような雰囲気だった。バックダンサーとダンスを踊る楽曲での会場一体となった盛り上がりはもちろんのこと、他にも「今日も一日大好きでした。」では観客も協力してサビを歌い、本編最後の「Cluster」を経て、アンコールではアコースティック・バージョンの「Reset」を披露。ここではチェロとの2人編成で楽曲の歌心を丁寧にすくい上げ、デビュー以降ミュージシャンとして様々な扉を開いてきた今ならではの多彩な顔を、観客との親密なムードの中で見せていく。その気持ちは、直後に披露されたMCにも如実に表われていた。「みなさんに声を届けたくて、どうしても届けたくて(中略)。みなさんが一緒に楽しそうな顔をしてくれたり、ハンドクラップをしてくれたり、パワーをたくさんくれました。本当に今日は、ありがとうございました!」。そしてはじまったラスト曲「Colors of Happiness」の最後の一音が鳴りやんだ瞬間に起こった会場一体のスタンディング・オベーションは、間違いなくこの日のクライマックスだった。 「歌えて弾ける声優シンガー」から「歌えて、弾けて、しかも踊れるエンターテイナー」へ。現在の牧野由依のステージは、観客がさらに参加して楽しめるような雰囲気を持った一大エンターテインメントになっている。ファンのサポートを受けながら全15曲を歌い切ったこの日のライブからは、そうした今ならではの充実した雰囲気が伝わってくるようだった。(杉山仁)

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