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生田斗真はなぜ“普通の女性”になりきれた? 『彼らが本気で編むときは、』で見せた新境地

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/03/04 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 荻上直子監督(『かもめ食堂』『めがね』)の5年ぶりとなる新作『彼らが本気で編むときは、』が上映中だ。世界三大映画祭のひとつに数えられるベルリン国際映画祭にて、LGBT(セクシュアル・マイノリティの人たち)をテーマにした上映作全37作品から、日本映画初となるテディ審査員特別賞と、観客賞をW受賞。生田斗真がトランスジェンダーの女性を演じているのも大きな話題となっている。  荻上監督が、とある新聞記事をヒントに生み出したオリジナル作品であり、母に置き去りにされた愛を知らない少女トモと、優しさに満ちたトランスジェンダーの女性リンコ、リンコのすべてを受け入れる恋人マキオの60日にわたる日々が綴られていく。  芸歴20年を超えた生田が、「こんなに難しい役と出会ったことはありません」と語ったリンコは、戸籍変更はまだだが、性別適合手術は終えている女性。『リリーのすべて』のエディ・レッドメインが演じたリリーをはじめとする、生まれ持った肉体の性別と、ジェンダー・アイデンティティの違いに苦悩するキャラクターでもなければ、いわゆる“オネエ”と呼ばれるキャラクターでもない。リンコには、普通の女性であることが求められた。  映画におけるキャリアは、主演を務めた2010年の『人間失格』からと、意外にも遅い生田。だがその分、テレビドラマや舞台で多くの経験を積んできた。そして『僕等がいた』、『脳男』、『土竜の唄』シリーズ、『予告犯』など、果敢にチャレンジングな役どころを演じている。しかし、こと、トランスジェンダーの女性という役柄に関しては、キャスティングを聞いて首を傾げた人もいるだろう。彼ではあまりに男性性が強いのでは? と。  劇中のリンコは大きな手だと言われる。本来ならば、早くからホルモン療法を受けていれば、肉体的にも女性らしい人が多いだろう。しかし本作では初めてリンコに出会ったトモが、どこかに覚えた違和感にたじろぎ、徐々に(観客と一緒に)リンコを女性として、母のような存在として受け入れていく必要があった。  自宅でもスカートを穿き、ネイルをしたままだったという生田は、その大きな手のままに、しぐさ、セリフの発し方といった外見面での徹底した役作りと、何よりリンコの心に深く寄り添うことで、壁を乗り越えた。彼女の手の大きさは、むしろ慈悲深い優しさの表れとなった。  聖母の役割を担い、時に美しく描かれすぎているようにも映るリンコ像ではあるが、彼女が抱えてきた様々な思いは、編みチンというポップなアイテムとして、きっちりと存在感を示し、生田も端々の表情でリンコの歩んできた道程をにじませる。物語の終わり、ベランダの手すりに肘をかけ、物憂げに空を見つめるリンコの姿が映し出される。そこにいるのは、まぎれもなく美しいひとりの女性だ。生田斗真は、『彼らが本気で編むときは、』で手の大きな聖母となった。(望月ふみ)

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