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稲垣吾郎はなぜ“変人”役でも愛される? 『不機嫌な果実SP』こじれた役柄の面白さ

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/01/13 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 昨年末に惜しまれつつ解散したSMAP。メンバーはそれぞれソロ活動となり、新たな道を歩んでいく。そんな中、俳優として先陣を切ったのが稲垣吾郎。解散後初出演となったのは、1月6日に前半が放送された『不機嫌な果実スペシャル~3年目の浮気~』(テレビ朝日)。昨年、ドロドロの不倫劇で話題を呼んだ『不機嫌な果実』のスペシャルドラマだ。  稲垣が演じたのは嫉妬深いマザコン夫・水越航一役。かなりの変人ではあるが、これが彼にしかできないと思わせるほどのハマり役となった。稲垣の怖くも面白い演技が癖になり、放送が終わってからは航一ロスに陥った視聴者も少なくないだろう。そして今回、『不機嫌な果実』がスペシャルドラマとして帰ってきた。“スペシャル”とだけあって航一のキャラもさらに進化しており、再び注目を集めている。  SMAPにおける稲垣吾郎のイメージは、クールでナルシストでミステリアス。髪型をセットするのに時間をかけ、ワインと映画を好む文化系王子だ。そんな彼は年齢を重ねるに連れ、メンバーからはイジリがいのある面白キャラとして愛されるようになった。そしていつしか、SMAPの潤滑油的ポジションを確立した稲垣。結果的に、みんなのゴローちゃんとして多くのファンから親しまれている。  俳優としての稲垣吾郎もまた本人のイメージに近い、クールでミステリアスな役柄が目立った。たとえば、『ソムリエ』(フジテレビ/98年)の天才ソムリエである佐竹城や、『陰陽師』(NHK総合/01年)の安倍晴明、『犬神家の一族』(フジテレビ/04年)の金田一耕助などが挙げられる。ただ、主演俳優としてのインパクトは、ほかのSMAPメンバーに比べるといくらか穏当ではある。稲垣の表の部分を役に反映しているだけでは何か物足りないのだ。彼が持つ本当の面白さは“表の部分”だけでは到底引き出しきれない。もちろんバラエティとの線引きは大事だ。しかし、視聴者は稲垣の独特な面白さや唯一無二のキャラクターを知っている。だからこそ稲垣らしさを求め、ただかっこいいだけの役では満足できないのかもしれない。  2010年代になるとドラマ『流れ星』(フジテレビ)で、妹をとことん苦しめる嫌な兄役に抜擢された稲垣。世間をムカつかせるほどの悪役を演じきり、話題となった。さらに、2013年の『TAKE FIVE~俺たちは愛を盗めるか~』(TBS)では几帳面かつ潔癖性の刑事役を、2014年の『福家警部補の挨拶』(フジテレビ)ではいつも指示を無視されてしまう係長の警部役を演じ、物語に深みを与えた。近年は、稲垣ならではのパブリックイメージをうまく活かしたバイプレイヤーとして、より魅力的な俳優へと進化を続けてきたのだ。  そして昨年放送された『不機嫌な果実』。林真理子の不倫小説を約20年ぶりに連続ドラマ化したこともあり、放送前から話題に。当初は、登場人物がほぼ不倫関係に陥るドロドロな展開で注目を浴びていた。稲垣吾郎の演じる水越航一は、主人公である水越麻也子(栗山千明)の夫で、超潔癖性かつ妻に冷たい。加えて、セックスレスなのに嫉妬深く、極度のマザコンというダメ男っぷり。不倫されても仕方ないと思わせる屈折した役だ。  キャストが発表された時に稲垣は「実は原作と違って、2016年版の航一は最初からかなり変わった旦那として描かれているんです。『たぶん僕が演じるから、そうなったんだろうな。すごく潔癖でマザコン…これが僕のパブリックイメージなんだろうな』と、直感しました(笑)」(引用:SMAP稲垣吾郎、世間のイメージに反論「潔癖でもマザコンでもない」 栗山千明と夫婦役に「うれしい」 - モデルプレス)とコメントしていた。決してポジティブとはいえないパブリックイメージだが、それを笑って受け入れ、なお愛されるのは、彼がまごうことなきスーパースターである証だろう。その癖のある役柄は、稲垣の演技によって不気味なリアリティを獲得し、かつて佐野史郎が演じて社会現象を巻き起こした『ずっとあなたが好きだった』(TBS)の“冬彦さん”を彷彿とさせるほどだった。俳優・稲垣吾郎の特性をもっとも活かしたドラマと言っても過言ではないだろう。  今回、前後篇に分けられた『不機嫌な果実スペシャル~3年目の浮気~』は、連続ドラマから3年後ということで、すでに麻也子と航一は離婚し、麻也子は不倫相手だった通彦(市原 隼人)と結婚3年目になっている。麻也子の親友で航一の不倫相手だった久美(高梨臨)は、航一と結婚間近といった状況だ。今回の航一は、嫉妬という面においては少々落ち着きを見せており、狂気性は薄い。しかし、マザコンキャラの面白さはいや増しており、離婚した麻也子には“嫉妬”ではなく“心配”をするという、これまた“こじらせた愛情”を募らせている。ほかの屈折した登場人物たちの中にいると、一周まわって良心的なキャラクターにさえ感じられるのが、むしろ不気味で面白い。  稲垣は同作のニュースリリースにて、「スペシャルのお話を頂いたときは『来たな!』と(笑)。(中略)とても特殊で刺激の強いキャラクターである航一は、僕にとって“大嫌いだけど、大好きな人”みたいな存在。そういう自分の中の“ある種の違和感”を、今回も思う存分楽しみたいと思います。主人公をハチャメチャにかき回すクセモノを、皆様の期待に応えられるよう演じたいです」とコメントしており、手応えは十分のようだ。実際、前篇を見る限り、以前に増して楽しそうに演じているのが伺える。  稲垣吾郎は歳を重ねるにつれ、クセモノ役者として年々魅力が増している。いや、むしろそのキャラクターに年齢が追いついて来たのかも知れない。どんな役を演じても彼には負のイメージが付かない不思議な魅力があり、脇にまわっても輝きを放っている。稲垣の役者人生はまだまだ続いていくはずだ。今夜放送の後編でも、期待の斜め上をいくキャラクターを披露し、我々を楽しませてくれるに違いない。(文=本 手)

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