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竹中直人が語る、初主演映画『赤い眩暈』の思い出 「ロマンポルノは大きな挑戦でした」

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/05/06 株式会社サイゾー
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 俳優、映画監督、声優、コメディアン……幅広いジャンルで活躍し続ける竹中直人。「笑いながら怒る人」などのネタで、コメディアンとして注目を浴びた竹中が、初めて主演を務めたのが石井隆監督作品『天使のはらわた 赤い眩暈』だ。本作で村木哲郎を演じた竹中は、それまでのイメージを一変し、役者・竹中直人としてステップアップを遂げていった。その後も石井隆監督とはタッグを組み続け、最新作『GONIN サーガ』にも出演を果たしている。リアルサウンド映画部では、7月に発売される本作のコメンタリー収録後の竹中にインタビューを行った。当時の心境から、演じることへの思いまで熱く語ってもらった。 ■“役”なんて作れる訳がない ―もともと竹中さんは劇画漫画家としての石井さんのファンだったと聞いています。 竹中:石井さんの絵はエッチでしたから(笑)。初めて見たときはこんな絵を描く人がいるんだと衝撃的でした。未だにあの絵がずっと脳裏に焼き付いてます。 ―そんな憧れでもあった石井隆さんの初監督作『天使のはらわた 赤い眩暈』に、竹中さんは主演として出演を果たします。当時の心境は? 竹中:所属していた劇団青年座の事務所のゴミ箱に『ヌードの夜』と題された台本が捨ててありました。拾い上げてめくってみたら「脚本・監督:石井隆」と書かれている。「誰に来た仕事なの?」と聞いたら、「竹中だけど、ロマンポルノはやらないでしょ?」って言われて、慌てて「やるよ!やりたいよ!」と伝えました。僕もお笑いでデビューして4年、役者は憧れの世界ではあったけれど、シリアスなものを演じることに恥ずかしさがありました。ふざけている俳優になりたいというか、シリアスな演技をして褒められることに照れがあったというか。この先、役者としてどうなっていくかという漠然とした不安がある中での出演だったので、僕にとっても大きな挑戦でした。 ——そういった気持ちで望まれた現場で、村木を演じてみていかがでしたか。 竹中:僕は「役作り」って言葉が嫌いです。役者が「役作り」してどうするんだよっていうのは、僕の中にはあります。自分で自分の事も分からず生きていて、他人の事だって分からないのに、“役”なんて作れる訳がない。役は監督・スタッフの眼差し、共演者との関係性の中で、自然と生まれてくるものだと思います。だから、『赤い眩暈』で演じた村木は、石井さんが僕を信じてくれている、その思いに応えたいという中で自然と生まれたものだった。この気持ちは今も変わらないですね。 ——コメンタリーでは、撮影現場に相米慎二監督、鈴木則文監督が来ていたと語っていましたね。 竹中:相米さんは遠くから撮影を見学されていたのですが、その視線がとても強くてね。だから石井監督からの「カットOK」を聞く前に相米さんの視線を意識しちゃうこともありましてね。『トラック野郎』シリーズの鈴木則文監督も現場に突然現れた事もありました。「そんな濡れ場じゃダメだよ〜」なんて石井監督を差し置いて叫んだり(笑)。お二方以外にも錚々たる映画人が見学にいらっしゃっていて、非常に刺激的な現場でした。 ―撮影の佐々木原保志さん、照明の金沢正夫さんなど、日本映画界に名を残すスタッフが『赤い眩暈』には集結しています。 竹中:ひとつの映画を作ることに出演者・スタッフ、みんなが本当にエネルギーを発揮していました。それが画の力として確かに刻まれている。僕はこの作品に出会えて本当によかったです。当たり前のことですが、映画はひとりの力では撮ることはできない、それをしみじみと感じた現場でした。それが30年近く経ったいま、Blu-rayとして蘇ることに喜びを感じます。フィルムの雰囲気もすごく醸し出されているし、初めて観る方も、観返していただける方もきっと満足していただけるものになっているんじゃないかな。 ■“メジャー”になることへの抵抗 ―竹中さんのキャリアを振り返ったとき、『赤い眩暈』への出演は大きなターニングポイントだったと。 竹中:石井隆さんと出会えたことがとても大きな出来事です。まだ誰の目にも留まってないものを探すのが好きですね。世間ですでに評価されているものには何の興味もない。自分がお笑いをやっていた時も、いろんな矛盾を感じていました。とにかくくだらない事をやろうって作っていたものが、予想に反してお客さんにも受け入れられた。そしてどんどん話題になっていった。それがうれしい反面、どこか照れがあったんです。自分が映画を観るときもそうですね。公開当時『ブレードランナー』を観た時、全然お客さんが入っていなかった。その時は「俺だけの映画になった!」っていう興奮がありました。その後、口コミでどんどん人気が拡がっていき、なんだかさみしい気持ちになってしまった(笑)。でもね、自分が出演した映画や舞台にお客さんが入らないと、とてもショックだし、入れば当然うれしい。でも、どこか“メジャー”になることへの抵抗がありました。知る人ぞ知るってのが好きです。矛盾していますね(笑)。 ——その後、大河ドラマ『秀吉』で主演を務め、日本全国に名を知られることになったわけですが、そのときは? 竹中:プロデューサーでさえ、「今回の大河は相当マニアックな大河になる」って言っていたのに、視聴率をとってしまった。同時に映画『Shall we ダンス?』も大ヒットして。かなり、焦りました。周りの人が突然みんな優しくなって、怖かったです。こんなの絶対長続きはしないと思っていましたからね。今はその流れがもっと早い。去年ヒットしたものでさえ、もう遠い過去になってしまう。役者でいること、この世界にい続けることの難しさを改めて感じます。だからこそ、こういった形で30年前の作品がBlu-rayとして再び世に出ることを本当にうれしく思います。昨年からロマンポルノもリブート企画として蘇っているようなので、また石井さんと新たなロマンポルノを撮れたらいいですね。「まだ勃つ!」とか言いながらって……そんなの誰が観るんだよって話ですね(笑)。 (取材・文=石井達也)

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