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第17回東京フィルメックス(2016) 見どころは キム・ギドク監督最新作も

エキサイトイズム のロゴ エキサイトイズム 2016/11/01

 2016年の東京フィルメックスは、数えて17回目。今年は11月19日(土)から11月27日(日)までの9日間、いつもの有楽町朝日ホールと、TOHOシネマズ日劇にて開催される。毎年、小規模ではあるが、上映作品のクオリティの高さで、熱心な映画ファンの注目を集めている映画祭だ。

 ラインナップを眺めていると、いま世界のあちこちが抱えているさまざまな問題に、映画というメディアを通して、誠実に関わろうとする映画作家の思いが伝わってくるようだ。映画は娯楽であってもちっともかまわないが、もっと、多くのことを語り、伝え、訴えるメディアでもある。そのような作品がズラリ。本年は、10本のコンペティション作品、5本の特別招待作品、特別招待作品で、「フィルメックス・クラシック」が5本、特集上映として「イスラエル映画の現在」が2本、合計22作品の上映となる。

 ざっと、内容、見どころを紹介しよう。

 オープニング作品は、特別招待作品の「The NET 網に囚われた男」(韓国・2016年)で、数々の傑作、問題作を撮り続けている韓国のキム・ギドク監督の新作だ。北朝鮮の漁師が、ある事故が原因で国境線を越えてしまう。漁師は韓国の警察に捕まり、拷問を受ける。亡命を強要された漁師は、必死の覚悟で北に戻るが、さらに過酷な運命が待ち受けている。何かと秘密のヴェールに包まれる北朝鮮だが、キム・ギドク監督が、体制に翻弄される漁師をどう描くか、開幕を飾るにふさわしい力作だ。

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(C)2016 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

 クロージング作品は、やはり特別招待作品の「大樹は風を招く」(香港・2016年)。舞台は、中国返還前夜の香港。実在した3人のギャングが、ある噂から運命が一変する。監督は、ジョニー・トーが主宰する映画祭の受賞監督3人が起用され、3つのパートを分担しての演出となる。フランク・ホイ、シェヴォンズ・アウ、ヴィッキー・ウォンの3人。

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(C)2016 Media Asia Film International Limited All Rights Reserved

 コンペティションは10作品。アジアの個性ある新鋭監督の新作がズラリと並ぶ。いずれも2015年、2016年の製作になる。この10作品の中から、最優秀作品賞、審査員特別賞が授与される。

 今年の国際審査委員の委員長は、イギリスの映画評論家で、映画祭プログラマーのトニー・レインズ。ほかに審査員が4名。フィリピンの女優アンジェリ・バヤニ、韓国の映画監督パク・ジョンボム、日本のアジア映画研究者の松岡環、フランスの映画プロデューサーのカトリーヌ・ドゥサール。

 コンペティションの10作品をみてみよう。

●「オリーブの山」(イスラエル、デンマーク・2015年)

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 ヤエレ・カヤム監督のデビュー作。若い主婦ツヴィアの家は、エルサレムのユダヤ人墓地のなかにある。厳格なユダヤ教徒の家庭で、つつましい生活をおくってきたツヴィアは、ある日、これまで想像もしなかったものを目撃する。

●「バーニング・バード」(フランス、スリランカ・2016年)

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 内戦のスリランカが舞台。子どもが8人もいる主婦の夫が、民兵に拉致される。じっさいに、内戦を経験したサンジーワ・プシュパクマーラ監督の、女性蔑視や暴力への怒りがストレートに伝わってくる。

●「普通の家族」(フィリピン・2016年)

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 マニラに住む、まだ未成年のカップルがいる。街なかでスリをはたらき、なんとか生計を立てている。そんなふたりに、子どもが出来るのだが……。マニラのストリート・チルドレンたちの生態を活写した監督は、エドゥアルド・ロイ・Jr。

●「マンダレーへの道」(台湾、ミャンマー、フランス、ドイツ・2016年)

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 リャンチンとグオは、ミャンマーからタイへの不法越境をしたときに知り合う。二人はバンコクで、やっと仕事をみつけるが、ここに警察の捜査の手がのびてくる。監督は、ミャンマーの出身で、台湾で活躍するミディ・ジー。

●「神水の中のナイフ」(中国・2016年)

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 昨年の東京フィルメックスで最優秀作品賞を受けた「タルロ」のプロデューサー、ワン・シュエボーの監督デビュー作。老人と牛との交流など、イスラム教を信仰する回族の日常生活を静謐に描く。

●「よみがえりの樹」(中国・2016年)

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 舞台は中国、山間の村。数年前に亡くなった女性の魂が、息子に憑依する。一種の幽霊話だが、やがて女性の魂は、かつての夫に願いを伝えていく。監督はチャン・ハンイ。ジャ・ジャンクー監督の新人監督をプロデュースする「添翼計画」の1本。

●「恋物語」(韓国・2015年)

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 真っ正面から女性同士の愛を描く。二人の女性の微妙な感情の変化を、鮮やかに捉える。チョンジュ映画祭の韓国映画コンペティションの最優秀賞を受けている。監督は、イ・ヒョンジュ。

●「私たち」(韓国・2015年)

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 10歳の少女スンは、学校で仲間はずれ。スンは、夏休みに引っ越してきたばかりの同じ学年の少女ジアと出会い、仲良しになる。やがて、スンとジアの家庭環境の格差が、ふたりの友情に影響を及ぼすようになる。ユン・ガウン監督のデビュー作。

●「ぼくらの亡命」(日本・2016年)

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 昇は東京近郊の森のなかで暮らしている。ある日、昇は、美人局をやらされている女性と出会い、女性をいまの境遇から救おうとする。2010年の東京フィルメックスで、最優秀作品賞を受けた内田伸輝監督の最新作だ。

●「仁光の受難」(日本・2016年)

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 修業僧の仁光は、異常なまでに女性に好かれる。自分を見つめ直そうと、仁光は旅に出て、寂れた村にたどり着く。仁光は、村長から、男の精気を吸い取るという「山女」の討伐を依頼される。多くのジャンルの作品を発表している庭月野議啓が、4年をかけて撮った長編デビュー作。

 オープニングとクロージング作品のほかに、特別招待作品の新作は3本。

●「山<モンテ>」(イタリア、フランス、アメリカ・2016年)

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 アミール・ナデリ監督の新作である。イタリアの高く聳える山。山が太陽を遮り、作物の育たない村がある。現状を打開するために、立ち上がった男が、憑かれたように、ある行動を開始する。「CUT」もそうだが、アミール・ナデリ監督の美学が炸裂する。

●「エグジール」(フランス、カンボジア・2016年)

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 「消えた画」で、クメール・ルージュ時代のカンボジアを描いたリティ・パン監督の新作は、またもクメール・ルージュ。革命に、いつもつきまとう理想と現実のギャップを提示し、詩的なイメージで綴った傑作だ。

●「苦い銭」(香港、フランス・2016年)

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 長大なドキュメンタリー映像で、中国のさまざまな姿を描き続けているワン・ビン監督の、香港とフランスの資本を得ての新作。雲南省出身の少女が、多くの女性たちとともに、縫製工場で働くことになる。現代中国の、ある確かな側面が活写される。ヴェネチア国際映画祭のオリゾンティ部門で、脚本賞を受けている。

 カテゴリーは「特別招待作品」だが、「フィルメックス・クラシック」としての上映が5作品。

●「ザーヤンデルードの夜」(イラン・2016年)

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 人類学者の父と娘の運命を、三つの時代にわたって描くことで、1978年のイスラム革命とは何だったのかを問いかけたモフセン・マフマルバフ監督作品。検閲のため、イランはじめ、まったく上映する機会のなかった幻の映画が、ロンドンでの修復を経て、やっと今年のヴェネチア国際映画祭で上映された。モフセン・マフマルバフ監督の重厚な語り口は、見逃せない。

●「タイペイ・ストーリー」(台湾・1985年)

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 経済成長を遂げる台北を舞台に、過去にとらわれる男と、過去からのがれようとする女の関係が浮かび上がる。監督は、台湾ニューシネマを牽引するエドワード・ヤン。製作、脚本、主演はホウ・シャオシェン。ボローニャ市立シネマテークによるデジタル復元版での上映になる。

●「残酷ドラゴン 血斗竜門の宿」(台湾・1967年)

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 タイトルはいささかおおげさだが、カンフー映画大ブームの原点ともいえる武侠映画で、監督はキン・フー。時代は明朝。一軒の宿を舞台に、権力者の悪政に立ち向かう剣士たちの活躍を描く。デジタル修復版での上映。

●「俠女」(台湾・1971年)

 キン・フー作品のスターたちがズラリ出演したスケールの大きな武侠映画。竹林で決闘するアクション・シーンは、とにかく美しい。カンヌ国際映画祭の高等技術委員会グランプリを受けている。デジタル修復版での上映。

●「ざ・鬼太鼓座」(日本・1981年)

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 迫力満点の和太鼓グループ「鬼太鼓座」の活動に肉薄したドキュメンタリー。今年、生誕100年になる加藤泰監督の遺作でもある。一般公開は叶わなかったが、デジタルリマスターでの上映が実現する。

 特集上映は「イスラエル映画の現在」。

●「山のかなたに」(イスラエル、ベルギー、ドイツ・2016年)

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(C)2016 July August Productions

 アラブ人への偏見を持たない娘なのに、あるアラブ人青年の誘いを断る。翌日、その青年の遺体が発見される。日常生活のなかに、イスラエル社会の抱える矛盾が浮かび上がる。傑作「迷子の警察音楽隊」を撮ったエラン・コリリン監督作品。

●「ティクン~世界の修復」(イスラエル・2015年)

 ユダヤ教の神学校生が昏睡状態になる。奇跡的に意識を取り戻すが、すでに神学への興味がなくなり、テルアビブの街をさまよい始める。世界は、果たして修復できるのだろうかとの問いを投げかけるのはアヴィシャイ・シヴァン監督。

 以上22作品。すべて、見たいなあと思う作品ばかり。アジアの今、世界の今を、誠実な作家の眼を通して窺い知ることのできる、意義ある時間になると思う。(文・二井康雄)

■リンク

東京フィルメックス

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